第32話 ぶん殴ってやる!
「……っ!」
目を開けると、そこはまったく違う場所 だった。
「ここは……?」
周囲を見渡すと、暗闇の中に赤黒い魔法陣が浮かび上がっている。
そして――
目の前には、黒いローブを纏ったあの男が立っていた。
「お、お前……!?」
黒いローブの男――ヴァルガスが驚愕の表情を浮かべた。
「なんでここに……!?」
「さあね。でも……」
ヴァルガスの顔が、次第に青ざめていくのが分かる。
彼の視線は僕の体の周りに漂う圧倒的な魔力の気配に釘付けだった。
「お前、そんな魔力……どこで……?」
「……生まれつきだよ」
僕が一歩踏み出すと、ヴァルガスはサッと後ずさった。
次の瞬間、彼は背後に向かって全速力で逃げ出した!
「お、お前とは戦わん! また別の機会に――」
「逃がすか!」
僕はすぐに科学の武器を取り出した。
ベルトに仕込んでいた超音波兵器を起動!
キィィィィィィン!
「音……!?」
ヴァルガスは耳を塞ぎながら膝をつく。
「効いてる!」
その隙にスタンガンを手に取り、ヴァルガスの足元へと投げつける。
バチバチバチッ!
「ぎゃああああ!?」
ヴァルガスの体が電撃に包まれ、 硬直した。
だが、それでも僕の魔法じゃ逃げられるかもしれない。
(ダメだ……ここで確実に倒さないと……)
「……違う」
僕は息を整え、魔法を使うべきだと決断する。
そして――
「――ウィンデ・スルペルス!」
魔法の言葉を紡ぐと、僕の体が一瞬にして軽くなった。
それどころか、音よりも速い速度で動けるようになったのが分かる。
「な、なに!?」
ヴァルガスの目が恐怖に染まる。
次の瞬間――
シュン!
僕の姿が、ヴァルガスの視界から完全に消えた。
「……どこだ!? どこに――」
「ここだよ」
ヴァルガスが声の方向を向いた瞬間――
ドゴォッ!
「がっ……!?」
僕の渾身の右ストレートが、ヴァルガスの顔面に直撃した。
彼の体が宙を舞い、 ドサッ! と地面に叩きつけられる。




