第3話 僕は実家に帰りたい!
そもそもどうして叔父さんはあんな魔法具を持っていたのだろうか?
叔父さんはこの世界に来たことがあるのだろう?
もしかして、叔父さんは魔法使いなのだろうか?
すなわち、僕も……?
……いや、考えても無駄だ。
よしっ
とりあえず、次叔父さんに会ったとき、思いっきり顔面をぶん殴らせてもらおう。グーパンで。
うん。だって、準備ゼロで急に一人で知らない街に放り出されて、魔法の修行なんか始める前に、僕、野垂れ死にしちゃうよ。
でも、ついさっき話しかけてくれたお姉さんのおかげで、しばらくは生きていけそうだ。
頑張ってお喋りしたおかげで、お姉さんはこの世界に馴染むための服や、小道具、そして少しだがお金もくれた。
この世界での身分証や、お金のやり取りの役割も果たす天然石のネックレス『ソルヴィール』もゲットすることができた。
ようは、このネックレスがマイナンバーとか電子マネーとかの役割を果たしてくれるらしい。
しかも、魔力を持たない人間も、このネックレスを身につければ、魔法が使えるようになるらしい。非常に便利だ。
そして、お姉さんに魔法の修行がしたいことを伝えたら、この街から少し離れたところにある魔法学校についても教えてくれた。
ちょうど来週、その魔法学校への編入試験があるらしい。飛び込み参加での受験もありなんだとか。
よくわからないけど、魔法学校に入学すれば、宿にも困らないし、叔父さんに言われた通り魔法の修行もできる。そして何より、この世界について学ぶことができる。
この街には国立図書館もあるらしいから、編入試験までは宿に泊まって日中は図書館でとにかく勉強だ。
翌日――。
タイムリミットまで後363日。とりあえず国立図書館にやってきた。ヨーロッパにありそうな立派なゴシップ建築の建物だ。
中に入ると、それはもう大量の本が置かれていた。というか、本が浮いている……。
「拝啓、アイザック・ニュートンさん、リンゴが木から落ちずに宙に浮く世界もあるみたいです」
とりあえず、どれか一冊本を手に取ってみよう。
手に取った本は、どうやら火の魔法についてだ。ラッキーなことに入門書のようだ。どれどれ。
火の魔法の基本法則について……火の魔法は、次の三つの要素を満たすことで発動する。一つ目は燃料。魔法力や周囲の物資が燃料となる……
待て待て待て。魔法力って、何ですか?
燃焼は、燃料中の炭素(C)や水素(H)が酸素(O₂)と反応して、二酸化炭素(CO₂)や水(H₂O)を生成する酸化反応のことだ。
火が発生する条件、すなわち燃焼の三要素は、燃料と酸素と熱。燃料は木材とかガスとかだろう。それが魔法力って何だ!?
「……そろそろ実家に帰りたい」