第28話 呪いの被害者!?
タイムリミットまで、あと76日――。
気づけば、アルカナ魔法学校に留学してから4ヶ月が経過していた。
魔法の授業は相変わらず鬼畜だけど、新しい友人もできたし、魔法界の超名門校で学べているってだけで、なんだかんだ充実した日々を送れている。
リアムともたまに顔を合わせるが、彼は彼で忙しそうだし、楽しそうでもある。
……でも、僕は最近、少しずつ諦めかけていた。
このまま何も手がかりがなければ、あと76日で僕の命は終わる。
呪いを解く方法なんて、本当にあるんだろうか。
そもそも、わざわざアルカナ魔法学校まで来たのに、僕は何も進展できていない。
「はぁ……」
溜め息をつきながら、今日も魔法薬の授業に向かおうとしていた、その時――
「……あの!」
ふいに、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには可愛らしい女の学生が立っていた。
栗色の髪に大きな瞳。少し緊張しているような表情で、僕を見つめている。
(……まさか、告白とかじゃないよな?)
以前なら、呪いのせいでどこへ行っても女の子に好かれてしまっていたけれど、アルカナ魔法学校に来てからは告白されることはなくなった。
どうやら、魔力の強い人には呪いの効果があまり出ないらしい。
じゃあ、この子は何の用だろう?
「えっと……その……」
彼女は少し迷ったあと、意を決したように言った。
「それ……呪いですよね?」
「えっ?」
僕は思わず目を瞬かせる。
「……はい、そうですけど」
「やっぱり……」
彼女は小さく頷いた後、まっすぐ僕を見て言った。
「実は、私もなんです」
「……へ?」
その言葉が一瞬、理解できなかった。
「私にも、同じ呪いがかけられているんです」
「え、えええええ!? けど――」
「私は、自分の魔力で邪悪なオーラを隠しています」
「……そんなこと、できるんですね」
僕は驚いた。
この子は魔力があるからこそ、自分の呪いを隠せる……?
「呪いをかけられてから、どれくらい経ちました?」
「あと10カ月以内になんとかしないといけなくて……」
「……僕の場合は、あと76日です」
「そんな……!」
彼女の顔が青ざめる。
「もう諦めかけてますけどね」
「ダメですよ! 諦めちゃ!」
強い口調で言われ、僕は驚いた。
「……え?」
「他の犠牲者のためにも、頑張りましょう!」
彼女はまっすぐな目で僕を見る。
その瞬間、ハッとした。
(……そうだ)
僕は自分のことしか考えていなかった。
でも、よく考えれば、僕よりも前に呪いをかけられた人たちがいる。
僕が助からなければ、彼らも同じ運命を辿ることになる。
(なんとかしなきゃ……)
「……ありがとう。なんか、少しやる気が出てきたよ」
僕がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「アルカナ魔法学校の学長なら、何か良いアドバイスをくれるかもしれません」
「学長?」
「はい、普段はお会いできない方なので、難しいかもしれませんが……」
「……僕、探してみます」
「……はい! 頑張りましょう!」
彼女はそう言って、去っていった。
名前も聞けなかったけど―― 彼女のおかげで、もう一度頑張る気になった。
(アルカナ魔法学校の学長……)
僕は拳を握りしめた。
まずは、学長を探すことから始めよう――。




