第25話 アルカナ魔法学校の先輩!?
ヴァルガスが消え、静寂が訪れた。
レストラン車両には、割れたガラスや焦げたテーブルが散乱し、乗客たちは混乱した様子でざわついている。
「……逃げられたか」
リアムが険しい表情で杖を下ろした。
「うん……でも、またどこかで現れるかも」
僕がそう言ったとき、後ろからふわりと甘い香りが漂ってきた。
「あなたたち、助けてくれてありがとう」
振り向くと、さっきヴァルガスに襲われそうになっていた女性が立っていた。
肩までの黒髪に、落ち着いた雰囲気のある知的な顔立ち。服装はシンプルだけど上品で、どことなく洗練された雰囲気を持っている。
「あの男、私を狙っていたみたいだけど……あなたたちのおかげで助かったわ」
そう言って、女性は微笑んだ。
「ど、どういたしまして……」
僕は慌てて手を振る。
「危ないところだった。あなたに呪いをかけようとしていた可能性が高い」
リアムが冷静に言う。
「ええ、そうかもしれないわね。でも、私は大丈夫みたい」
女性は胸元を軽く押さえながら、何かを確かめるように呟いた。
「良かった……」
僕は心の底からホッとした。
ヴァルガスの呪いが広がっていたら、また厄介なことになっていたに違いない。
「ところで、君は?」
リアムが女性に尋ねる。
「ああ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね」
女性は軽く礼をしながら言った。
「私はセシリア。アルカナ魔法学校の学生よ」
「アルカナ魔法学校の!?」
僕は驚いて声を上げた。
「ええ。あなたたちもかしら?」
「俺たちはアルカナ魔法学校への留学生だ。俺はリアム、そしてこいつはケン」
「ど、どうも……!」
僕は緊張しながら頭を下げた。
まさか、ここでアルカナ魔法学校の学生と会うとは思わなかった。
「リアムとケン……覚えておくわ。学校でまた会うことになるかもしれないわね」
セシリアは優雅に微笑む。
「助けてもらったお礼は、必ずさせてもらうわ」
「え、お礼なんて、そんな……!」
僕が慌てると、セシリアはクスリと笑った。
「いいのよ、これは私の気持ちだから。それじゃあ、またね」
そう言うと、セシリアは優雅に踵を返し、レストラン車両を後にした。
「……なんかすごい人だったな」
僕は呆然と彼女の後ろ姿を見送る。
「セシリア……俺たちが助けなくても、彼女なら自力でなんとかできたのかもしれない」
リアムが呟く。
「そ、そんな人に助けたお礼をするって言われちゃったよ……!」
「ふっ、よかったな。今のうちにコネを作っておけ」
「そ、そういうことじゃないって!」
僕はリアムに抗議しながら、再び列車の窓の外を眺めた。
アルカナ魔法学校――なんだか、ますます緊張してきた。




