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闇の魔法使いにかけられたのは恋愛体質の呪いでした  作者: 希羽


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第23話 呪いをばらまく変態、再び!?

 タイムリミットまで、あと167日――。


「ケンくん、リアムくん、頑張ってきてくださいね!」

「お前ら、絶対に無事に帰ってこいよ!」

「また帰ってきたら一緒に勉強しようね!」

「呪いが解けると良いなあ! 頑張れよ!」


 駅のホームには、ジェシカ、ジャック、アレックス、マシューが揃って僕たちを見送ってくれていた。


「ありがとう、みんな!」

「ケンくん、でも、もし向こうで可愛い女の子と仲良くなったら……私、許しませんからね?」


 ジェシカがニコニコしながら、怖いことを言う。


「べ、勉強に集中するから大丈夫だよ」


 ポオォォォォォォォ……!


 遠くから、列車の出発を告げる汽笛が鳴り響いた。


「じゃあ、行くか」


 リアムが静かに言う。


「うん」


 僕はみんなに向かって手を振った。


「じゃあ、またね!」

「待ってますからね!」

「元気でな!」

「生きて帰ってきてね!」

「絶対に負けんな!」


 みんなの声を背に、僕とリアムは列車に乗り込んだ――。


 アルカナ魔法学校までの道のりは長く、この列車は夜行列車として設計されている。


 僕とリアムにはそれぞれ個室の客室が与えられた。


 部屋の中には、小さなベッド、テーブル、椅子があり、最低限の生活ができるようになっている。


 普通のホテルのシングルルームみたいな感じで、思ったより快適だ。


「ふぅ……」


 僕はベッドに腰掛け、やっと一息ついた。


 長い旅になるな……。


 と、その時――


 コンコンッ


 ノックの音がする。


「ケン、入るぞ」

「うん、どうぞ」


 リアムがドアを開け、客室に入ってきた。


「どうだ、少しは落ち着いたか?」

「うん。正直、ちょっと緊張してたけど、この部屋意外と快適だね」

「まあ、長旅だからな。最低限の設備は整っている」


 リアムは椅子に座り、僕は窓の外を眺めた。


「それにしても……」


 僕はカップに注いだ紅茶を飲みながら、ぼんやりと窓の外を眺めた。


「アルカナ魔法学校って、そんなにヤバいところなの?」

「……まぁな」


 リアムは淡々と答える。


「競争が激しくて、脱落者も多い。毎年のように退学者が出るほどだ」

「……やばいじゃん」


 僕は思わず顔を引きつらせる。


「そんなところで僕みたいな魔法ゼロ人間が生き残れるわけないし……」

「フッ……」


 リアムが突然、小さく笑った。


「ん? どうしたの?」

「いや、何でもない」

「絶対なんかあるやつじゃん」


 僕はジトッとした目でリアムを睨む。


「……まぁ、実を言うと」


 リアムはカップを置き、僕の方を見た。


「さっきの話、嘘だ」

「えっ」

「確かにアルカナ魔法学校は魔法界の名門だが、別に競争が異常に厳しいわけじゃない。普通に勉強すれば問題なくやっていけるはずだ」

「えぇぇぇぇぇ!?」

「お前が怠けないように、少し脅しておいただけだ」

「……ひどい」


 僕はリアムの襟元を掴みそうになった。


「なんでそんな嘘ついたの!? 僕、この3ヶ月でどれだけ必死に勉強してきたと思ってるの!? 頭から煙が出るレベルで!」

「だから、その成果が出たんだろう?」


 リアムは冷静に言い放つ。


「ぐぬぬ……」


 確かに、ここ数ヶ月で僕は魔法の理論や魔法具の扱いに関してかなりの知識を身につけた。


 でも、それはリアムの嘘に踊らされた結果……。


「だが、勘違いするな」


 リアムは真剣な目で僕を見据えた。


「アルカナ魔法学校が超名門であることは事実だ。 お前にとっては、間違いなく試練の場になるだろう」

「……はぁ。そういうことね」


 僕は肩を落とした。


「まぁ、頑張るしかないか……」

「そういうことだ」


 リアムが少し満足げに頷いた。


 と、その時――


 ドォォォォン!


 突然、車両が激しく揺れた。


「うわっ!?」

「……っ!? 伏せろ!」


 リアムが咄嗟に僕をベッドに押し倒し、そのままドアへと向かう。


 ガタガタガタ……!!


 列車の揺れはどんどん大きくなり、何かが爆発するような音が響く。


「事故!?」

「違う……襲撃だ!」


 リアムはすぐに杖を構え、警戒を強める。


「……今の音、やばくない?」


 僕はベッドから飛び起き、リアムと顔を見合わせる。


 ドォォォン!


 列車の揺れがさらに激しくなった。


「外で何か起きてる!」


 リアムはすぐにドアを開け、廊下へ飛び出した。僕も慌てて後を追う。


「こっちだ!」


 リアムは迷いなく走り出す。


「どこに向かってるの?」

「レストラン車両だ! さっきの揺れは、あの方向からだった!」


 僕は嫌な予感を抱えたまま、リアムの後を追った。


 ガタンッ!


 ドアを開けた瞬間、目の前に広がったのは――


 割れた窓、焦げたテーブル、そして……怯える人々。


 中央には、黒いローブを纏った男が杖を女性に向けていた。


「フフフ……さて、お嬢さん。君にぴったりの呪いをかけてあげよう」

「ひっ……!」


 女性は恐怖で震えている。


 その瞬間――僕の背筋が凍りついた。


 この声……このローブ……まさか……!?


「……お、お前……!」


 僕は思わず叫んだ。


 こいつは……僕に呪いをかけた変態じゃないか!?


「フフッ……やっと気づいたか、坊や」

「ま、またお前かああああああ!」


 僕の叫び声がレストラン車両に響き渡る。


「はぁ……偶然出くわすとは思ってなかったが、これはこれで面白い」


 男はニヤリと笑いながら、杖を構え直した。


「お前が邪魔をするなら、先に片付けるとしようか」

「させるか!」


 リアムが一瞬で間合いを詰める。


 バシュッ!


 リアムの杖から放たれた魔法が、男の杖を叩き落とした――かに見えたが!!


「フフッ、遅いねぇ」


 スッ……!


 男は瞬間移動のような動きで後ろに跳び、リアムの攻撃を回避する。


「ちっ……!」


 リアムが舌打ちする。


「フフフ……さすがだね、速いな」

「貴様は何者だ?」


 リアムは冷静に問いかける。


「俺か? まぁ、名乗るほどのものじゃないが……そうだな」


 男はニヤリと笑う。


「貴様らが俺を呼ぶなら――闇の魔法使いヴァルガスとでも言っておこうか」

「ヴァルガス……!」


 リアムの表情が険しくなる。


「フフフッ……さて、おしゃべりはここまでだ」


 バチバチバチッ!


 ヴァルガスの杖に紫電が走る。


「呪いをかける前に、ちょっと遊ぼうじゃないか」

「やばい……!」


 僕の悲鳴と共に、戦いが始まる――!

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