第20話 本気の殺し合い?
「……え? 何て言った?」
僕は耳を疑った。
「だからぁ~、勝負に勝ったら、アタシの留学枠をケンちゃんに譲ってあげるって言ってるのよ♪」
エルマーが優雅に笑いながら、ローブの裾をひらりと翻す。
「……えっ、そんなのアリなの?」
「アリよ♪ だって留学枠はあくまで合格者の権利であって、義務じゃないもの。アタシが行かないって決めたら、枠が一つ空くわけよ」
「そ、そういうものなの?」
「ええ。正式な譲渡申請をすれば問題なし♪」
「えっ……いやいやいや! そもそも、どうしてそんなことするの?」
僕が思わず叫ぶと、エルマーは妖艶に微笑んだ。
「だってぇ~、ケンちゃんのこと、気に入っちゃったんだもの♪」
「えっ」
「決めたわ! アタシの留学枠をかけて、ケンちゃんと勝負するの♪」
(どうしてこうなった!?)
「……まぁ、受けてみればいいんじゃないか?」
リアムが冷静に口を挟む。
「試験には落ちたが、これはお前にとって最後のチャンスかもしれない」
「たしかに……」
アレックスが頷く。
「ケンくんが勝てば、留学枠が手に入るってことですよね? これはやるしかないじゃないですか!」
「ええええええ!?」
「さぁ、話は決まりね♪」
エルマーがパチンと指を鳴らす。
「じゃあ、学内競技場で待ってるわ♪」
そう言い残し、彼……いや、彼女? いや、エルマーはくるりと踵を返し、優雅に去っていった。
(おいおい、ちょっと待て!)
「……ってことで、行くぞ、ケン」
リアムに腕を引かれ、僕はそのまま競技場へ連行された。
学内競技場――
競技場の中に入ると、すでにエルマーが待っていた。
「さぁ、準備はいいかしら?」
エルマーは優雅に微笑みながら、杖をクルクルと回す。
「いや、良くない……」
「おーっほっほっほ! ケンちゃん、負けるつもりで来たの?」
「いや、そもそも……僕が勝てる要素がない」
「いいえ、あるわ♪」
「どこに?」
「アタシがそう思えば、そうなるのよ♪」
「その理論、意味不明……」
「さぁ、始めましょう♪」
エルマーが片手を上げると、競技場に魔法陣が浮かび上がった。
ゴゴゴゴ……!
競技場の床が青白く光り、魔力が満ちていく。
エルマーはついに杖を振った。
「フレア・ボルテックス!」
ゴオオオオオオッ!
僕の目の前で巨大な炎の渦が巻き起こる。
「うわああああ!?」
ドゴォォォォン!
爆風が巻き起こり、僕は慌てて魔法具を構えた。
「くっ……ガイア・シールド!」
ゴゴゴッ!
茶色い魔法陣が展開され、分厚い岩の壁が僕の周囲を覆う。
ドオォォン!
エルマーの炎が岩壁を直撃し、衝撃が全身を揺さぶる。
「うわああああ!?」
(防いだ!? いや、ギリギリ耐えた!?)
「まぁまぁ♪ ちゃんと耐えたじゃない♪」
エルマーが満足そうに笑う。
「じゃあ、次は……これよ♪」
エルマーが杖を振ると、雷の槍が天井に現れた。
「うそだろ……」
「サンダー・ジャベリン!」
バチバチバチッ!
雷の槍が真っ直ぐに僕へ向かって落ちてくる!
「くそっ!」
僕は咄嗟に、新しい魔法具「ルーナ・ミラー」を取り出した。
「これでどうだ……!」
キィィィィン!
ゴォォォォッ!
鏡のような魔法障壁が現れ、エルマーの雷撃を反射する。
「おーっほっほっほ! いいじゃないケンちゃん!」
エルマーは跳ね返された雷を避けながら、楽しそうに笑っている。
(楽しんでる場合じゃない!)
「どうしてこんな戦いを……!?」
僕が息を切らしながら呟くと、エルマーはクスリと笑った。
「決まってるじゃない♪」
「本気で殺し合ってこそ、愛が芽生えるのよ♪」
「意味が分からない!」
リアム、アレックス、ジェシカが揃って頭を抱えた。




