表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/30

アイドル アイドル コメンテーター

 ADさんの指が一本ずつ曲げられグーになった瞬間、大音量のSE=サウンドエフェクトがスタジオ全体に鳴り響き、自分の意思とは無関係にビクッと両肩が持ち上がった。

 くるとわかっているのだから、耐えられそうではあるのだが、もう半分クセみたいなもので。

 それをわかっているのか、この局のディレクターさんは、始まりをMC=マスター オブ セレモニーズのアップにし、肩がストン! と、元の位置に戻ったあたりでぐるりとゲストをなめるようにカメラを回してくれる。


 ありがたい。


 若い、けれども ───本当は養成所時代が長く、それなりの歳の─── 男としては───、「キャー、かわいい!」と黄色い歓声よりか、カッコいいイメージが欲しい。

 いや、もらえるものは全部欲しいが。

 長かった。前社長が死んだタイミングでの、ゴタゴタは、事務所の地位を───文字通り───地、どころかマイナスまで落とし、それはもう元の位置には決して戻らないだろう。それどころか男性アイドル全体の立ち位置すら再定義されてしまった。

 この先二度と、は言い過ぎかもしれないが、“国民的” と評される個人、グループはしばらく現れはしないだろう。


「はい、CM入りました」

 そんなことを考えているうちに、オープニングは終わったようだ。

 いつ映されてもいいように、考え事をしながらも、追いかけていたカメラの赤いランプから目を離す。眼精疲労をほぐすべく、鼻の付け根を揉みたいところだがメイクが落ちるので、それは出来ない。

 ちらっと見たスタジオのデジタル時計は、まだぜんぜん進んでいない。


 振られた時のコメント。

 存在を主張しつつも、決して突出しない賑やかし。

 カメラが自分を捉えている時の表情や、仕草。

 収録なら、編集してもらえるが、生放送はそうはいかない。


「CM開けまーす!」

 またADさんの指が曲げられる。


 ○≡


 アイドルが数で勝負するようになってどのぐらいの時が経ったのだろう?

 昔、一人で歌って踊ってトークしていた偶像は、顔が増え、腕が増え(二人、三人、たくさん)、もう阿修羅像のようになっている。

 ・・・グループを四十人以上にしようなんて誰が考えたんだろう? しかも、卒業、入学? を繰り返した結果生まれたのは、テセウスの船。かけたところを新しい部品で埋めた船は、元の形を保ちつつも、その実、最初からあったものは無い。・・・グループに初期メンバーがもういないように。

 のべ人数、数百人以上。

 目立つ、本当にやりたかったアイドルができているのは、ほんの数人。他は仏像の横や、頭の上についてる小さな顔や、千手観音の後ろの手、なら、まだいい。

 蓮華座、仏像が立ったり座ったりしているハスの花の形をした台座の花びらの一枚にでもなった日には一生土台だし、胎内納入物、仏像に納められた経典や小さな仏像、臓器を模した金属なんかなった日には目も当てられない。実際にちっとも見てもらえない。


 ・・・お分かり頂けただろうか?


 多々いるグループメンバーの中で、私がどの立ち位置にいるかが。


 そう、仏教系不思議担当アイドルが私である。

 今日はもう一人、頭いい系、頭脳派アイドルと一緒に呼ばれている。


 爪跡を残す!


 ・・・ネットで「なんだあいつ、空気読めよ」と叩かれないぐらいで。


 ○≡


 オカルト=隠されたモノ。

 ゆえに一言でそう言われても、ジャンルは様々だ。最近は漫画の影響で呪術、呪物に注目が集まっているが、一昔前はUMA、二昔前はUFOとその時々で流行り廃りがある。


 そんな業界? だからこそ、テレビ番組に呼ばれる面子はほぼ固定されている。


 オールジャンル系。

 呪術に詳しく、心霊現象に心当たりがあり、UMA・UFOの映像に詳しく、心霊写真にコメントできる。

 研究者にありがちな、特定の分野には詳しいが、他の話題になったら、鼻をほじっている、なんて人ではダメなのだ。

 いや、鼻はともかく、研究者とはそういうものだけれど。


 今回、スタジオに入って違和を感じたのは、そういう一流どころ? が、いなかったからだろう。

 それどころか、知っている顔が一人もいない。真面目に検証する番組だから、「宇宙人は必ずいまーす」と叫ぶヒトや、隕石パワーで一儲け、の、成功者が呼ばれていない可能性はあるが、真っ青な顔で下を向いたきり、ぶるぶると震えながらブツブツ言っている人ととなり合わせるとちょっと、どころかかなり不安である。あれでいて、テレビに呼ばれる人は、どんな奇抜な服装をしていても、隕石? を浸けた濁った水をごくごく飲んだとしても、まとも? な人なのだ。その証拠にパフォーマンスタイム、以外はちゃんと座っていられるし、マイクに拾われるような奇声をあげたりもしない。否定派、肯定派の対決になると常軌を逸した激昂を見せるが、MCがゴングを鳴らせば静まるぐらいの理性があるし、割り当てられた時間はきっちり守り、オーバーすることはない。


 常識人なのである。


 ・・・本人がそう言われて喜ぶか、は、わからないが。


 それとは別に、知識は必要なんだけどなー、という人もいる。

 ある現象の経験者。

 研究成果を発表したくてしたくてたまらない人。

 あとは何かしらの信念を持っている人、だろうか?


 得てしてそういう人は一見、普通に見えるが、スイッチが入っちゃうと止まらない。

 生放送、をうたう討論番組で「退場!」を宣言される人がこれにあたる。


 それでも、どうしても。

 そういう人の知識が必要な時はどうするのか?


 こうなるのだ。


「はい、では事前にインタビューした映像を見てみましょう!」の。


 モニターの中に封印されるのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ