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魔王様は撮り上手

「ふふ、こちらのパフェも美味しいですね」


 そうして二人で幸せな時間を過ごしていたその時だった。


「おいおい、魔族がいるじゃねぇかよ!」


 そう言ったのはガラの悪そうな男だった。どうやらこの店に来た客のようだ。


 俺は男の言葉に苛立ちを覚えたが、静かにグッと堪えた。


 人間の中には魔族のことを快く思っていない者が一定数存在している。この男もその一人なのだろう。


 男は俺たちの前までやってくるとメアさんに向かってこう言ってきた。


「侵略者がこんな所に来てんじゃねぇよ。とっとと失せろ、迷惑なんだよ」


 見下したようにそう言ってくる男に俺は我慢ができなくなってしまった。


「お前……! メアさんに謝れよ……!」


 俺が立ち上がってドス黒い声でそう言うと男は鼻で笑いながらこう言ってきた。


「はっ、俺は事実を言ったまでだ。誰が謝るかよ、それよりさっさとそこを退けよ。そこは魔族の席じゃねぇんだよ」


 その言葉に俺は胸の内から怒りが込み上げてくる。


 こいつ、メアさんのことを何も知らないくせに好き勝手言いやがって……!


 今にも爆発しそうな感情をメアさんが優しくなだめてくれた。


「ステラさん、私は大丈夫ですから……」


 そう言われ、俺がなんとか怒りの感情を抑えると男は性懲りもなくこう言ってきた。


「あ〜あ、ったく気分がそがれちまったぜ」


 そう言われ俺は押さえていた感情のダムが決壊した。


「この……が」


「あ?」


 俺は感情のまま、男にこう言い放った。


「このクズがって言ったんだよ! このチンピラ野郎!」


「……ってめぇ!」


 そう言って男は俺に向かって殴りかかってきた。俺はそれに対応できずに殴り倒されてしまう。


「てめぇ、覚悟はできてるんだろうなぁ!」


 そう言って指の関節をならしてくる男にメアさんが殺気にも似た感情を含んだ声でこう言った。


「……それはこちらのセリフです」


 そう言いながらメアさんは男ににじり寄っていく。


「私をなんと言おうとかまいませんが、私の友人に手を出すことは許しませんよ……!」


「へっ、女が。テメェが俺に何かできるとでも思ってるのかよ」


 馬鹿にするようにそう言ってくる男をメアさんは軽々と投げ飛ばした。


「⁉︎」


 何が起きたのか分からず驚愕する男に向かってメアさんはこう言った。


「私は魔族ですよ? 人間一人消すくらいわけありませんけど」


 殺気だった様子でそう言ったメアさんを見て男は逃げるようにこの場を去っていった。


「こ、こんな店、二度と来るか!」


 そう言って男が去ったのを確認するとメアさんは俺に寄ってきて心配するようにこう言った。


「ステラさん、大丈夫ですか……? すみません私のせいで……」


「大丈夫だよ。それにメアさんは何も悪くないよ」


 そう言っていると騒ぎを聞きつけた店員がこちらに向かって来ていた。


 俺はその店員に今起きたこと話して、謝罪する。幸い、今回のは男が完全に悪かったのもあってか特にお咎めはなかった。


 そんなことがあって、俺たちはキュートベリーを後にしたのだった。


「ごめんね、嫌な思いさせて……」


 俺がそう謝ると、メアさんは慌てたようにこう言ってきた。


「あ、謝らないでください。ステラさんは何も悪くありませんから。むしろ私のために怒ってくれて嬉しかったです」


「まあ、なんの役にも立たなかったけどね……」


 俺がうつむきがちにそう言うとメアさんは微笑みながらこう言ってきた。


「それでも今日はとても楽しかったです。ステラさんが良ければまた遊びましょう」


「俺も楽しかったよ。俺は基本暇だからいつでも誘ってね」


「はい。ではまた」


 そう言って去り際にヘタクソにへちゃっと笑ったメアさんに俺は思わずドキッとしてしまうのだった。


 解散して家に帰った俺は自室のベッドに横になってこう呟いた。


「……メアさん、めちゃくちゃかわいかったな」


 ……うまくいけば、メアさんとそういう関係になれたり……?


 俺は浮かんできた雑念を、首を横に振ってかき消した。


「いやいや、勘違いするな。あんな美少女と俺は不釣り合いだ。そもそもメアさんにそんな気はないだろうし……」


 そう言って俺はそれ以上考えないようにするためスマホの中に入っているドラシルYのアプリを立ち上げる。流れてきた呟きを見ていると一つの投稿が目に留まった。それは魔王様の呟きだった。


「あ、珍しく魔王様が呟いてる」


『休日』


 投稿にはその言葉のほかに一枚の写真が添付されていた。


「あ、これって今日行った店のパフェじゃないか?」


 魔王様もキュートベリーに行ったんだ……あの客、魔王様が行った時じゃなくて良かったな。間違いなく消し炭にされてたぞ。


「……っていうか、魔王様、写真撮るの上手だな」


 添付されていた写真にはとても美味しそうにパフェが写っていた。俺の撮った写真とは大違いだ。


 俺はスマホを適当な所に置いてからこう言った。


「さて、ゲームでもやりますかね」


 そう言って最近ハマっているゲームにログインすると、仲の良いもう一人のネッ友であるレンさんがメッセージを送ってきた。


『やっほー。オフ会どうだった?』


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