32 ルール、ルルル
集合場所についてから、参加者52人は案内役を名乗る人物に森の奥へと案内される。
「なあw」と隣を歩くエビィーが話しかけてくる。
「どしたの?」
「俺ら結構見られてるよな、さっきからww」
どうやらさっきの騒動のせいで、注目の的となってしまったようだ。しかも、ペトリカーナの施したであろう印象操作の魔法もあり、明らかにこちらに悪い印象を持っているような視線だ。
まったく。グレイオスなら、頭にフランスパンを乗せて、「何見てんだァ? あん?」とやるところだ。いや、グレイオスはフランスパン乗っけてなかったか。どっちでもいっか。
「まあ、見られるだけならタダだし、ほっとくしかないよねー」
「だなw」
立ち入り禁止の札をくぐり、しばらく歩くと、自然の中にはにつかわしくない人工的な神殿のような場所に辿り着く。この建物が特殊なのは、ひい、ふう、みい、よお……10もの入口があることだ。
どうやらここが第二試験の会場だと思われる。
立ち止まった案内人がいよいよ説明を始める。
「それでは私、アンナイ・ニースがシェリアンヌ・ギルファス様に代わり、ここから先の二次試験のルールを説明させていただきます。試験内容は、我々がこの場所に作ったダンジョンに入っていただき、宝探しをしてもらいます。」
案内人のアンナイ氏は、まるでAIが文章を読み上げるように澱みなく、あらかじめ決まっている内容を読み上げ始めた。
頭を使う試験って聞いてたから、まさかの宝探しとは想定外だった。
ダンジョンに入るっていうから、罠とかがあって、みたいな感じかな?
オーマンさんが事前に話していた通り、今回の試験はニース家が試験を取り仕切ってるようだ。
ニース家は有名な物作りの家系。ダンジョンを作るのもお手のものなのだろう。
「皆様に探していただく宝というのはこちらです」
彼が掲げたのは黄色っぽい光を放つ美しい宝石だった。
「これは金剛水晶という特殊な宝石を我々ニース家の技術で加工したものです。
合格条件は、この金剛水晶を入手すること、ダンジョンの外に出て我々に見せること、この2つを満たせばクリアとなります。つまり、もしダンジョン内で金剛水晶を手に入れたとしても、途中で奪われてしまえば合格とはなりません」
お宝を奪おうとするやつとかもいるのね。
気をつけないと。
「金剛水晶はある程度強度のある物ですが、3分の1以上の欠損がある場合は無効とさせていただきます。割れないようご注意ください」
イェーモがつぶやいた。
「仲間と一つのお宝を手に入れたとして、砕いて、全員仲良くゴールとはいかないってことだね」
欠損か……。
「これって、砕けちゃっても割れたやつ全部があれば合格になるのかな? それとも修復して元に戻せばオッケー?」
「分かんねえww。ルナット、質問してみたらどうよ?」
エビィーに言われてみて「そりゃ聞くのが一番だ」と納得した。俺は手を挙げて、当てられる間もなく質問をした。
「すみませーん。あのー、これって、砕けても破片が全部残ってれば大丈夫ですかぁ?」
周囲の冷たい視線がこちらに集まる。
アンナイは無表情に口を動かす。
「質問は受け付けておりません。こちらの提示するルールを踏まえ、それ以上のことは各々で判断してください」
そう、言われて俺は前世の記憶を思い出した。テスト中に手を挙げて質問をしては試験官の先生に「問題文を読んで自分で考えなさい」と言われる不毛なやりとりを繰り返した日々だ。
前世も今世も変わんないなー。
…………ほんと試験官っていう人々は。
「二次試験通過者は20人とさせてもらいますので合格者が20人となった時点で終了となります。
また、脱落者が出ていき、参加資格を持っている人数とすでに合格した人数の合計がちょうど20人となりましたら、その場合も試験は終了となります。その時点で参加資格を持っている方々は自動的に合格となります。ただ、やはり自力でクリアされた方のほうが、運営側の評価は高くなりますのであしからず」
……だんだんとルールが複雑化してきて、俺は一縷の不安を感じ始めた。
ちゃんとルール分かって試験に挑めるかな……?
もしかして、ルールを理解できる頭もこの試験内容の一つだったりする!?
っていうか、脱落とかあるのか……。
つまり、失格にさえならなければ、三次試験には進めるのかな? けど、ちゃんとクリアした方がなんか知らないけどいい感じってこと? ん?? どうゆこと?
名前を知らない参加者がヒソヒソと話している声が聞こえた。
「つまりギルファス家の側近として採用される目的なら、ここさえクリアすれば……」
「ああ、ほぼ間違いなくなるだろうな」
なるほど。
元々選抜で勝ち抜いて【魔戦競技】に出場することが目的ではなく、ギルファスの家に雇ってもらうことを目的に参加してる人もいるんだっけか。
【魔戦競技】の選手ということだけで見れば、戦闘能力しか重要でないはずだ。
それなのに、頭を使うような試験をするというのは、この選抜に別の目的もあるからだとメイさんに説明を受けたような気がする。
それにしても、参加資格を持っている人数と合格した人数の合計が20人になったら? ……ってことは、参加者は減ってくってこと?
分からないことは、質問してみるしかない。
「あのー。脱落する場合もあるってことですか?」
俺がまた質問をすると、周囲はすごい形相で見てくる。あはは、ウケる。
アンナイは、「またか……」といった表情で答える。
「ですから、お答えいたしかねるので、質問は控えてください。それについては今からご説明するところです」
と、ここで、いきなりアンナイは、近くで待機している同じ制服を着ているスタッフに指示をして、袋にから何か小さな装置を取り出して参加者に順々に配らせ始めた。
「ダンジョンに入る前にこちらを皆様には耳のところにつけてもらいます」
ワイヤレスイヤホンや補聴器のようなそれを、各々言われたとおり耳に装着する。
「これは、皆様の視野と音声を拾うための【魔法器具】です。禁止事項に抵触した場合、即時失格となるのでお気をつけください」
禁止事項?
どうやら俺の聞きたかったことを説明してくれるようだ。
「禁止事項は次の4つとなります。
1、耳の器具が身体から2メートル以上離れた場合。自発的に辞退する場合も器具を外して体から離して下さい。
2、悪質なダンジョンへの破壊行為。魔法による戦闘などによってダンジョンが破損した場合はやむを得ませんが、故意にダンジョンを壊すようなことはお願いなのでしないでください。
3、直接のクリア方法の他人への伝達。誰か一人に伝えた場合、伝えた人物が失格となります。二人以上に伝えた場合は伝えた者だけでなく、聞いた者全員が脱落となります。
4、自身が命を失った場合。参加者の命を奪う行為はあくまで試験としてルール違反とならないというだけで、その後国家から法的な追求があったとしても我々は責任までは追いかねますのでご了承ください」
最後の方、なんか物騒なことを言っているし……。
以上で説明は終了したようで、アンナイはダンジョンの方を指差し、向かうようにと示唆した。
「では、皆様を10ある扉に均等に振り分けますので、スタッフにお名前を呼ばれた方は順番に扉まで進んでください」
「あのー」
「ですから!」
スタッフたちの誘導によって、10の扉に参加者が振り分けられていく中、可哀想にペースを乱されてしまったアンナイは、迷惑な参加者(俺)の対応をまだしているのだった。
◆◆◆
[ロズカ視点]
こういうのも、意外と嫌いじゃない。
謎のダンジョンにもぐって宝探しとは、中々に参加者を楽しませてくれるものだと、ロズカは少しウキウキしていた。人目がなければ小躍りしてもいいくらいだ。
入ってきた扉が閉まる。いよいよという雰囲気だ。そして部屋中にどこからともなくアンナイの声色が響く。
『参加者が全員ダンジョンに入りましたのでこれから二次試験を開始します』
スタッフに告げられた扉を通ってついたのは「砂漠の部屋」とでも表現するのが相応しい場所だった。足元には大量の乾いた砂。部屋の中なのに風に巻き上げられ砂埃が舞っていた。無論、本当の砂漠と言うわけではなく、周囲は壁で囲まれている。大きさは学校の教室と同じか少し大きいくらいだ。
四角形の部屋で4方向の壁には扉らしきものがある。しかしながら、入ってきた出入り口の扉を含めて全て塞がってしまっている。
この閉じ込められた感じ……なかなかいいね。
いやいや、しっかりしなくては。ロズカは頭を左右に振った。楽しんでいるうちに試験に落ちてしまっては元も子もない。小躍りなどしている暇はないのだ。
それに、せっかくのいい気分を邪魔する存在がすぐそばにいる。
「まさか冒険者の真似事をすることになるとはね」
やれやれと言わんばかりに肩をすくめるキザな男、ハグリオ・チェビオーニは独り言なのか、ロズカに話しかけているのか、聞いてもいない感想を滔々と述べている。
横目でつまらなそうにそれを見ていると、ハグリオは益々ご清栄(おめでたい頭)となり尋ねてくる。
……しまった。相手にしてもらえたと勘違いさせて喜ばせてしまったようだ。
「試験のためだけにダンジョンを作り込み、探すべき宝石はニース家のシンボルともいえる黄金の瞳を想起させる金剛水晶。ニース家もアピールが必死だね」
「どういうこと?」
「準御三家の彼らは御三家であるギルファス家との繋がりをできるだけ保ちたいし、認められたい。そして恩を売りたいのさ。その地位が盤石な御三家と違って、彼ら準御三家の人間は家系が少しでも力を持てるように必死なんだよ。そしてギルファス家だけじゃなくて、僕ら参加者にも影響力の大きさをアピールしてるってわけ」
確かに試験を一度行うだけにしては、外から見ただけでもダンジョンの制作に気合が入っているのが伺える。
ただ、この嫌味ったらしい言い方にムカついたので、ダメもとで耳に取り付けた【魔法器具】に向かって話しかけてみた。説明を聞く限り、件のニース家がこっちの会話を聞いているはずである。
「だそうですよ、ニース家の試験官さん。ウザいから、ハグリオだけ失格とかにしてみてもいいのでは?」
応答はない。
代わりに、ハグリオの笑い声が響く。
「ははは、そんなことで失格にはならないさ。4つの禁止事項を踏まなければ僕らは参加資格を失わない。それがこの試験さ。耳飾りの喪失、ダンジョンの器物破損、クリア方法の伝達、生命活動の停止。僕の発言はこれらのいずれにも抵触しない」
案内人から淡々と説明されたルールはそうなっていた。
あのルール説明は、アンナイ・ニースは、あらかじめ用意された文章を一言一句違わずに読もうとしていた。
つまり、ルールはかなり厳密に作りこまれていて、それにきちんと沿うことこそが二次試験クリアの鍵となるのだろう。ハグリオも抜け目のない男だ。きちんとルールの持つ重要性を理解し、説明を頭に叩き込んでいるのだろうと、今の発言から感じ取れた。
しかし、現時点ではあまりにも情報が不足している。
まずは情報収集をしなくては。
4つの扉の上には目のような模様がある。意味ありげだ。いや、あの存在感で無意味なはずがない。目は試験開始の合図と共に赤色に光り始めた。それも何か意味があるのだろう。
さらに、目の模様のすぐ上には番号が書かれている。それぞれの数字は全て同じで「105」と記されていた。
部屋の4つ角には意味ありげなクリスタルがある。何かしらの部屋の仕掛けを担っているのは間違いない。この砂埃を操作するための制御装置だろうか? 位置として部屋の四隅に環境制御用の【魔法器具】を置くのは理にかなっている。部屋全体を制御する装置と考えるのが妥当だ。砂埃以外の仕掛けも何かあるのかどうか。
「で、この状況を君はどう見る? 砂の中から宝箱を探すのがいいか、部屋の謎を解明するのがいいのか」
「まず先に、アタシたちに説明されてない、この部屋の隠されたルールを把握する必要がある」
学校の中でロズカが優秀と言われていたのは、魔法の分野だけではない。運動系も学業も、彼女は周りから一目置かれる、あらゆる成績がよかったのだ。
頭を使う謎解きだって、ロズカにとっては無論例外ではない。これは、ただの運任せの宝探しゲームではないはずなのだ。
部屋にいるのはロズカとハグリオ、それから残り3人。参加者は全部で52人で、10の扉に振り分けられたのでどこかの部屋では6人となっているのだろう。
残りの参加者のうち1人は真面目そうな男性で砂を掘って宝を探していた。1人は扉の模様を見ながら何か考えている男性。もう1人は女性で、隠し扉でも探しているのか、壁に沿って手で触っていっている。
「部屋には4つの扉がある。しかし、いずれも閉まっている。問題はどうしたら扉が開くか」
「考えられるのは、時間が経てば扉は勝手に開く場合。または何かしらの条件を満たすと扉が開く場合」
とりあえず、前者の時間で開く場合を期待して待つより、後者の条件を満たした場合に開くと考えて動いた方が良いだろう。
「つまり、とりあえずはここにいる全員で協力して謎解きをするのが、本当は嫌だけど、ハグリオとも協力して、扉を開く条件を考えるのがベスト。アタシはそう思う」
ハグリオを無視してどこかへ行かず、会話を続けていたのはそれが理由だった。
浮ついた男はしかしながら、ギラついた本性を一瞬あらわにし、もう一つの可能性を示唆する。
「まあ、あとは、その条件がこの場にいる誰か、あるいは1人を除いて全員が脱落した場合に扉が開くのだとしたら……僕らは敵同士ということになるけどね」
ロズカは冷静に返す。
「その可能性は低い。二次試験は「思考力」を試すテスト。これだけ凝った仕掛けをしておいて、ただの力比べじゃあお粗末すぎる」
そりゃそうか、とハグリオは息を吐く。
協力する流れになっていることを聞いていたのか、壁を触っていた女性と砂を掘っていた男性がロズカたちのところに集まる。
まずは男性が報告した。
「ダメだ。砂の中はとても1人で探すには時間がかかる。やるとなったら、皆で手分けした方が良さそうだ」
続いては壁を触っていた女性。
「今の所隠し扉らしき物は見当たらないわ。ただ……壁の方から微かに地響きのような音がしているの」
「それは何かヒントになるかもしれないね。お手柄だよ」
はにかんだ笑顔を女性に向けるハグリオ。女性もまんざらでもない表情をする。
こんな薄っぺらな男に騙されるなよ……とロズカは思った。
「そういえばペトリカーナ様はやけに気にかけていたけど、あのルナットとかいう少年、明らかに頭が悪そうだし、いくら戦闘能力が高かったとしてもこの試験を通過できるとは到底思えないな」
ハグリオの口からルナットの名前が出たのは意外だったが、そんなことはどうでも良かった。たいしてルナットのことを知らないくせに、バカにしたような言い方をして、やはりこの男とは相容れないようだった。
ロズカが何かを言う前に、ハグリオは次の言葉を発した。
「今朝、君はあの場いなかっただろう? ちょっとしたイベントがあったんだよ。なんとギルファス家党首の妻であるはずのオーマン様が不貞を働いた証拠を公開されて、それで糾弾されるべきオーマン様を何も理解していないルナット少年たちが庇ってね。全くものの善悪も損得もわからないなら、大人しく引っ込んでいればいいのにね」
男性はうんうんと頷き、女性も同意を示した。
「あの場に私もいたけど、あのオーマン様を追い詰めてるのはスッキリしたわ。まさか奥様があんな嫌らしい女だったなんて。きっとその娘であるシェリアンヌ様もロクな人間じゃないわ。むしろ、ペトリカーナ様って、怖い方だと思ってたけど、なんだかファンになっちゃいそう」
何かがおかしい。
その場にいなかったから、状況はよく飲み込めないが、明らかに不自然な心理が働いているように感じる。これが集団心理というものなのか。
まるで洗脳でもされたような……。
そこで、ペトリカーナが精神干渉系の魔法が得意だったことを思い出した。
どうしようもなく気持ちの悪いこの空間をどうにかしてくれたのは、唯一会話に参加していなかった扉を見ているもう1人の参加者だった。
「やはり、あのレバーが怪しいと思うのですが……」
男の指差す先の壁にはいかにもなレバーが取り付けてあった。
ロズカとハグリオは同時にため息をついた。
どう考えても怪しげなレバー。部屋に入ってきてすぐに目に入ったが、あえて見ないようにしていたのだ。
しかし、こうなっては無視するわけにもいかない。
「誰が、引こうか……」
こんな怪しいもの、誰も引きたがらない。
一応意思表明をしておく。
「アタシは、ひきたくない」
「そりゃそうだろうさ。僕もだよ」
誰も、自分が引こうとは言い出さない。
「こんな怪しさの塊のようなものを、いきなり引くなんてこと、やるとしたら余程の考え無しかマヌケだろう。まあ、あのルナットとかいうおつむの残念な少年なら考えなしに引くかもしれないがね」
「あまりバカにしない方がいい。ルナットだってこんないかにもなレバー、何にも考えずに引くわけない!」
ルナットのことをバカにされて、なんだか無性に腹が立った。
結局、話し合った末に、女性の言う「地響き」は、何かが動いている証拠ということなので、少し待ってみることとなった。
◆◆◆
「えいや」
俺はとりあえずレバーを引いてみた。
なんのレバーかって? さあ?
それを確かめるために引いてみるんじゃないか! 理系男子は探究心を失っては生きていけないのだよ。
部屋はちょうどテニスコートほどの大きさ。コンクリートのような作りで、4つの扉と四隅にあるクリスタル以外はほとんど何もない、殺風景な部屋だ。
正面の扉の上には目の紋様があり、瞳の部分が緑色に点灯している。目の紋様の上には番号が書かれている。なになに? 472? 部屋の番号? だとしたら、このダンジョンはとんでもない部屋の数があることになるけど……。
この部屋で最も目立つ物が2つあった。
1つは、この部屋にたどり着いて一番最初に目に入った宝箱だ。
ガランとした部屋の中央に意味深に置いてある宝箱は、あからさま過ぎて怪しい。
同じ部屋に振り分けられた残りのメンバーはお互いに相手が開けないかと牽制しあうだけで、一向に状況が進まなそうだった。
そりゃそうか。だって、もし箱に宝が入っていたとしても、ルール説明で言っていたように後から奪えばいいんだから。
迂闊に触らない方がいいかとも思ったが、残念なことにエビィーやイェーモとは別の部屋に振り分けられてしまって相談できる相手がいない。
仕方がないから俺が宝箱に近づいて開けた。
他のメンバーが見守る中、宝箱の中身を確認すると……
なんと………………!!!!
………………………………………………………………………………中は空っぽだった。
ガッカリしつつも、宝箱の中をよく見ると文字が書いてあった。
《 合格者0人
脱落者0人 》
なんだこりゃ。
俺がなんともなかったのを確認した他のメンバーたちも宝箱に集まってくる。そして、遅ればせながら、俺と同じように落胆を見せるのだった。
そうして、俺や他のメンバーの興味はこの部屋で目立っている残りの1つの物へと集中した。
怪しげなレバーである。
皆、俺に視線を集める。俺が引くのを期待している。
なんてこった。自分たちで引くのが怖いからって俺に期待するなんて……。
参加者の一人など「なんかあるよ?」とさりげなく誘導までかけてくる始末。
仕方がないので、俺はレバーを引いたというわけだった。
レバーを引いたことで部屋にすぐさま変化があった。
4つの扉の上にある赤い色をした目の模様が一斉に黄色く光り始めたのだ。
そして部屋はゴトンと一瞬揺れる。
しかし、それ以降何も起こらない。扉も閉じたままだ。
もう一度レバーを引いてみるが、今度は何も変化はない。
うーんお手上げだ。
他の参加者たちもレバーへの興味は失って、床やら、宝箱やら、壁やらを探索し始めた。
と、状況は硬直したかに思えたのだが……。
突然目の模様の色が今度は一斉に緑色になり、扉が開いたのだった!
「な、なんだ!? なんで扉が開いたんだ!?」
周りも半分パニックになりながら驚いているようだった。
4つの扉の上の目のマークは全て緑になっていたが、扉が開いたのは最初に入ってきた扉ともう1つだけ。
最初に入ってきた扉は出口となってしまうため、進むとしたら選択肢は1つしかない。
扉を潜ると、今度の部屋は薄暗く、洞窟のように内部がボコボコとしていて、鍾乳洞のようなものが上からも下から生えていた。
『感覚』→《五感強化》→「視覚」
周囲を探索するために魔法を使う。
どうやら部屋自体はさっきの部屋と比べ、同じ大きさの四角い部屋で、同じように扉が4方向の壁に一つずつあった。
その部屋も扉は今しがた入ってきた扉ともう1つ、合計2つ開いていて、残り2つは閉まっていた。
ここで宝石を探すか、扉を進むか。
同じ部屋にいた参加者たちも意見が別れたようで、すぐに次の扉から進んでいく者と、俺のように2つ目の部屋に残り、探索をする者に分かれたのだった。
しかし、このこの時の俺は二次試験の全容を全く理解できていなかったのだ。
ブックマーク、スタンプ、高評価⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎、大変モチベーションに繋がります!
是非是非よろしくお願いします!




