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9話

 別荘にしては広い庭園。でも、この庭に咲くのは定番のバラではなく、見たこともない青色、紫色の花と野草、数種類のハーブが生えていた。


(面白いから、そのままにしているけど。見れば見るほど、不思議な花と野草よね)


 カサンドラは変わった花たちを眺め、庭園を散歩する。


「いいお天気〜散歩の後は水魔法と生活魔法を使って、シュシュと洗濯をして。それが終わったら、またシュシュと読書の時間ね」


 次に読むのなら……貴族達の午後。結ばれない二人の恋。最古のドラゴンと村娘、どの本も面白いから捨てがたい。


 読者の本を考えながら庭園を散歩しているカサンドラの足元の茂みが揺れ、一匹のまん丸で茶色の獣が現れた。


「「⁉︎」」

 

 その獣も、この庭園には誰もいないと思っていたらしく。突然、目の前に現れたカサンドラを見て飛び跳ね、すこし離れた位置に着地した。


「まぁなんて、まん丸な獣なの?」


 その獣はカサンドラに向けて「ウワーーン」と威嚇して鳴いた。

 

「今度は鳴いたわ。この獣、鳴き声も変わっていて可愛い。……あなたは何処からきたの?」


「ウ、ウッウウ!!」


 側に近付くカサンドラが怖いのか、獣は後ろにジリジリさがり警戒する。


「大丈夫よ、獣ちゃん。私は何もしないから怯えないで……所で獣ちゃんは猫? それも犬? ……うーん、見た目から犬かしら?」


 

「……ブッブ――不正解。正解はタヌキだよ」

 

「まぁ、タヌキ?」


(ここは隣国に近い辺境地……だから、変わった獣もくるのね。茶色のモフモフした毛とまんまる瞳、モフモフの太い尻尾)

 

「なんだ? おまえはタヌキを知らないのか? さては都会から来たんだな?」


「都会? えぇ、カサドールの中心部から来ました。私、カサンドラと言いますのよろしくね。ところでタヌキちゃんは、シュシュのお手製バタークッキー食べます?」


「バタークッキー? 食う……けど、オレ、いま、ケガしているから」


「ケガ?」


 よく見れば、タヌキはあちこちにケガをしていた。


「まあ大変だわ。すぐ、手当てをしないと」

「ま、待て、オレに触れると……綺麗な服が汚れる」

 

「そんなの平気ですわ! 汚れたら、洗濯すればいいだけです」


 ケガをしているタヌキを、カサンドラは優しく捕まえて、庭園のテラスにいるシュシュの元に連れていった。


「シュシュ、シュシュ! 見て、庭を散歩していたら面白い獣を捕まえたの。でも、この子ケガをしていて、救急箱はどこにあったかしら?」

 

「え、ケガをした獣? 救急箱はキッチンのテーブルの棚の上ですが。カサンドラお嬢様……その獣は猫? 犬? ……わかりました、猫ですね!」

 

「……不正解、タヌキだ」


 言葉を話すタヌキに、シュシュのメガネの奥の瞳がまんまるになる。

 

「珍しい、こ、言葉を話すタヌキ、面白いです。カサンドラお嬢様……違う国には獣人という種族がいるそうです。あなたはその獣人という種族ですか?」


「お、おう、そうだけど」


 シュシュは獣人と聞き、更にメガネを光らせタヌキを両手で持ち上げると、顔、お腹、尻尾と観察しはじめた。


「カサンドラお嬢様、私が読んだ書物によりますと『人型と、他の動物の外見をあわせ持つ』と、書いてありましたが……この子はモフモフな毛で覆われています」


「フフ、モフモフで触り心地いいわよね」

「はい、とても、モフモフ気持ちいいです」


「うぎゃっ! 女! オレの大切な尻尾を触るな」

 

「少しくらい、いいじゃありませんか。ついでに、どこをケガをしているのかも見ましょう」


「うお? そこは見るなぁ!」


(フフ、もう仲良しね)

 

 カサンドラは救急箱を取りにキッチンへと向かい、救急箱を持って戻ってきても仲の良い二人に微笑み。二人のやりとりをしばらく眺めた。


「フムフム、足とお腹、手にもキズあり」


「ちょっ、おまえ! この格好は恥ずかしいからやめろ。見てないでオレを助けろぉ!」


「タヌキ君、動かないでください。今、観察中ですのでお静かに」


「ぎゃっ、そんなに見るなって! おい、カサンドラ……マジで助けてぇ〜!」

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