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よくある晴れた日、滅多にない出来事

別に、変化なんて望んでいなかった。





そこそこの容姿、中の上くらいの成績、至ってフツーの彼氏。

このまま高校卒業して、キャンパスライフを楽しんで、社会人になって、同窓会なんかで「昔と全然変わってないね。」とか言われて………それなりの人生。それでよかった。

トラブルもなく、平凡な、だけどそれでいて……、幸せ。

今思えば、達観はしてたんだと…思う。

その程度でいい、その程度の人間だから…。







今、目の前で起きている事象コトは、私の人生に置ける…大惨事。

私の器を砕け散らせたその人は、口に咥えた“しんせい”にマッチで火をつけ一服つくと、眼鏡越しにこちらに目をやり、低めの、落ち着いた声で呟いた。





「………パンツ、見えてるぞ」




――――――――――――――




「み~かっ!おっはよ~!」


いつも通う通学路、学校へと続く坂道の三合目。いつもと変わらない元気な声に背中を押される。


「おはよ、真琴」


振り向き、挨拶を返すのは和泉真琴…私の親友の一人。

ソフト部所属の体育会系で、いつもその自慢のポニーテールを、本当の“馬の尻尾”のようにピョコピョコ跳ねさせている。

よく言えばおっちょこちょい。悪く言えばそそっかしい。

まあ、それが欠点にならない女の子と言えば全て伝わるだろうか?

つまり…そういう子なのである。


「遅刻しそうだったから、走ってきちゃったよ~!美佳も急がなくていいの?」


私の肩に手をおいたまま、隣で荒くなった息を整える真琴は、登場して間も無く、よくわからない事を言い出す(オチはだいたいわかるのだが…)。


「真琴……時計、止まってない?」


「…………え?」


私の一言に真琴の表情がビシリと固まった。

そして、左手の腕時計をゆっくりと確認すると……


「ザ・ワールドッッッ!!」


虚空に向かって意味不明な雄叫びをあげた。



「…………行こうか」


「…………うん」



それからは他愛もない話。昨日のテレビの事とか、どこどこのスイーツがおいしいのとかを話しながら学校へと向かう。下駄箱を通り、一階にある教室に着くと、既に席についているもう一人の親友、溝口奈々子に話し掛ける。


「おはよう、奈々子」「ナナ、おっはよー!」


「おはよう二人共。あら?珍しいわね。真琴がこんな時間に登校するなんて…」


奈々子はふんわりとした優しい笑顔で挨拶を返すと、普段はこの時間にいるはずのない人間に対して首をかしげる。


「いや~、たまには早起きをしてみようと思いまして…」

「こういう事よ」


私はおどけて誤魔化す真琴の手首を掴むと、針が微動だにしない時計を見せた。


「ふふ、そういう事ね」


「あちゃ~、バレたか」


溝口奈々子…おとなしめの文学系女の子で、私のもう一人の親友。

物腰の柔らかい、THE・女の子といった感じであり、その瞳の大きい童顔とあいまって、男子からの人気がやけに高い。成績もよく実際に級長も務めており、優等生といった言葉がとてもよく似合う子である。

私達三人は席も近く、普段、学校にいる時間のほとんどを一緒にいる。部活などを除いて、そうじゃない時を挙げるのであれば、私が“男”の事情で離れる時くらいである。


「そろそろHRが始まるわね」


奈々子が壁の時計を見てそう零すと、教室内がバタバタと騒ぎだし、直後に始業を告げるチャイムが校内に鳴り響いた。

そこからはつまらない授業の連続。真面目にノートをとったり、手紙を回したり。フツーの女子高生らしい行動。

そうしているうちに昼休みになり、狭苦しい教室から移動した私達は、なんともなしに中庭に出ていた。


「う~~、やっぱシャバの空気は美味いぜー!」

「囚人かよ…」


相変わらずの真琴のボケにツッコむと、私達は食事をするのに適当な場所をぶらぶらと歩きながら探す。

周りには同じような目的で歩いている人達、既に座って食事を開始している人達がちらほらと見えた。


「あ、あそこ…」


5分かからない位だろうか、奈々子がちょうど木陰下に空いているベンチを見つけ、私達はそこで食事をすます事に決定した。


「いただきまーす!」


相変わらずの元気で両手を勢いよく合わせると、ガツガツと一気に白米をかき込む真琴。男顔負けの食べっぷりである。


「美佳、それちょーだい!」


米を口に含んだまま、素早い箸さばきと狩人の目で真琴は私の弁当箱から玉子焼きを許可もなくかすめ取っていく。


「ちょっと、それ私の……」


「古来から言うではないか、お前のものは俺のもの、俺のものも俺のものって…」


「ジャ、ジャイアン…。いや、女だからジャイ子だ」


「だれがジャイ子だ!」


絶対強者の理論を振りかざした真琴にそう言うと、途端に米粒を口から飛ばし怒る。

どうやらジャイ子はNGらしい。


「ふ、二人共喧嘩はやめて。美佳、私のをあげるから、ね?」


「いや、そういう訳じゃないんだけど…」


いつものように困った顔の奈々子がずれた発言でその場をしめると、仲良く食事を再開。いつも通り、いつもと変わらぬ昼食だった。

食後、ベンチにて風にそよがれ、心地よい満足感にまどろんでいると、思い出したかのように急に真琴が話し掛けてきた。


「ねえねえ美佳。あの噂、知ってる?」


「ハイハイ、どうせまた下らない噂でしょ?」


「ひどっ!?」


もはや毎週恒例となった真琴の噂話。誰々の好きな人から都市伝説まで、話題は尽きる事を知らない。

一般の女子高生ならスグ食い付くのであろうものの、私はあまりそういったものに興味はない。……が、とりあえずは聞いておく。それくらいの好奇心はあるのだ。


「……で、何?」


「お、食いついた。いやあね、風の噂で聞いたんだけど……成神なるかみ)公園裏の通り……出るらしいよ?」


「いやぁああああ!!!」


突然の奈々子の大声にビックリする私と真琴。心臓がビクリと大きく動いた後、バクバクと高鳴り続けているのがわかる。そして、その大声を出した本人はと言うと、耳をふさいで小動物の如く震えていた。


「大丈夫よ奈々子。お化けなんている訳ないじゃない。ただの噂よ」


「ほんとぉ…?」


………カワイイ。

その小さな体を震わせながら目をウルウルさせた美少女が、頼りなげにこちらを見上げている。女の私から見てもコレはヤバいぞ。


「そうよ、奈々子。お化けなんていなる訳ないじゃない。だから……」


真琴はおびえる奈々子の肩に優しく手を乗せると、母が子に言い聞かせるような声でそう話した。

だが、次の瞬間・・・


「放課後、確認しに行こうぜぃ!」


親指を力強く立てた(しかも、なぜかペコちゃん顔で)。


「い~~~~~や~~~~~~!!!!!」

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