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サテライトクラスタ  作者: 樫木佐帆
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初級チュートリアル その5



“またお会いしましたね。ではこれから初級チュートリアルのその5を行いたいと思います。初級チュートリアルはこれで最後になります。準備やお時間のほうは大丈夫でしょうか?”



 YES。




“今回は第六種エレメントである「理言」についてです。第六種エレメントであるカードはカードパックに5枚含まれています。分かりますでしょうか?”




 え? ランダムじゃない? YES。




“第六種エレメントであるカードは手に入りやすいですが他のカードよりも膨大に種類が多く、カードパックにカードパックに5枚含まれ、その意味では手に入りやすいですが、カード1枚では意味を成しません。英語の辞書をご覧になった事はありますでしょうか?”



 中学、高校と使っているのでYES。




“その辞書に書いてある分、種類が膨大になっています。英単語の合計は102万2000語にも上り、毎年さらに数千語ずつ増加しているだろうと考えられています。前にアイスクリームの例を出しましたが、その条件を満たすにはピンポイントで材料となるカードを102万2000語から探さないといけません。分かりますでしょうか?”



 はー、と思ってYES。



“つまりカードパックから目的の自力で探すという事はほとんど不可能という事です。そのため、他プレイヤーが持っているカードと交換、またはオークションに参加し、集めなければなりません。カード交換には5ゲームポイントから2000ゲームポイントが必要になります。他プレイヤーが持っているカードはいつでも検索可能です。”




 YES。




“それと注意点ですが、「理言」はルール自体を捻じ曲げる、つまりゲームルールを変えるほど強力なカードです。場合によっては自分側にも害が及ぶ可能性があります。”




 え? そうなの? YES。


“「理言」には数学、つまりmathと、言葉、つまりwordの2つがあります。mathは数・量・図形などに関する学問の事です。一般に形式科学に分類され、自然科学とははっきり区別され方法論の如何によらず最終的には、数学としての成果というものは自然科学のように実験や観察によるものではありません。mathとしてのカード数は0~10の数字と四則演算の記号、+、-、×、÷だけです。先ほども説明しましたがこれらはルール自体を捻じ曲げる恐れがあるため、非常に入手困難です。




 そうなのか、とYES。




“各カードは重ねる事で威力を増します。一枚目が2、二枚目が×10、3枚目が×8、四枚目が×6、5枚目が×4、6枚目が×2となります。ちょっとした計算をしましょう。2に×10は20。20に×8で160、160に×6で960、960に×4で5760、5760に×2で11520となります。これに限界突破として7枚目を追加した場合、11520×2で23040の魔法エネルギーを放出する事ができます。ここで1枚目のカードに「5」を加えてみましょう。5×10で50、50×8で400、400×6で2400、2400×4で9600、9600×2で19200、限界突破で38400となります。差にして26880の違いがあります。先ほど一枚目が2、二枚目が×10、3枚目が×8、四枚目が×6、5枚目が×4、6枚目が×2と説明しましたがこれも「理言」によって変更可能です。6枚目の×2が×5だった場合、カードを重ねる事で48000の魔法エネルギーとなります。差にして36480違います。分かりますでしょうか?”





 数学、あれ? 算数? が苦手だったのでちょっとわからない。でも凄い事は分かる。YES。




“プレイヤーキャラクターの素の状態は無防備でHPが10000。一瞬で死亡となります。”




 はえー、と思ってYES。




“話を数学、つまりMathに戻しましょう。「+」や「-」の記号が最初に使用されたのは、1489年にドイツの数学者ヨハネス・ウィッドマンがその商業用算術教科書である著作「Mercantile Arithmetic or Behende und hüpsche Rechenung auff allen Kauffmanschafft」で用いた時である、と言われています。「増減を表す記号」としての意味合いですね。1514年に、オランダの数学者のファンデル・フッケが、その著書において、「加算・減算のための記号」として初めて「+」と「-」を使用したと言われています。最もよく知られているのは、14世紀にラテン語の「and(及び、かつ)」を意味する「et」の走り書きが変形して、「+」になったというものです。なお、この説によれば、14世紀のフランスの哲学者であり、数学や天文学に関する多くの著書があるニコル・オレームが、最初の「+」記号の使用者であると言われているようです。同じような意味合いで「-」はminusの「m」が変形して、「-」になったと言われています。分かりますでしょうか?”




 何だか凄い話だ。YES。




“「×」の記号が最初に使用されたのは、英国の数学者ウイリアム・オートレッドの1631年の「Clavis mathematicae(数学の鍵)」という本においてであったようです。なお、それ以前の1618年に、英国のエドワード・ライトがネイピアの数表に注釈をつけたときに、掛け算記号として「×」を用いたとも言われています。分かりますでしょうか?”




 うん。まあ。YES。




“「×」という意味合いで「・」が使われた例があります。有名なドイツの数学者であるゴットフリート・ライプニッツによって、掛け算の記号として提唱されたと言われているようです。ライプニッツは、1698年にヨハン・ベルヌーイに当てた手紙の中で「私は掛け算の記号としての「×」を好まない。なぜならば、それはXと混同されやすいからである、私は単純に2つの数字の間に入れた「・」で掛け算を表す。」と述べています。細かいですね? 「*」も同様なようです。”




 んなのどっちでもいいじゃんとYES。



“「÷」という記号は、上下の2つの「・」がそれぞれ分母と分子の数値を表しているとされ、間の横線が分数の横線を表している、と考えられています。これに対して、「-」と区別するために、上下に「・」を付けたとの説があります。いずれにしても、「÷」という記号は、英国でアイザック・ニュートンらによって使用され、広まっていきました。それが米国に伝わり、日本でも幅広く使用されることになったようです。分かりますでしょうか?”




 細かいなあ、とYES。




“割り算を表すには、「÷」以外にも、例えば「:」や「/」という記号が用いられることもあります。実際に、「÷」記号は、小学校の時に学びますが、その後高等教育になっていくと、次第にその使用頻度が減り、「/」に置き換わっていくものと思われます。これも専門チュートリアルがありますので参照してください。”




 数学よくわからんけどYES。




“次にwordですが102万2000語からなります。膨大ですね?”




 英語詳しくないけどそんなにあるのか、とYES。




“『スペル・バインダー』ではそのいくつかをチョイスしています。言語学者、ポール・ネーション教授の研究によると、最も頻繁に使用される単語は1000語。英語のネイティブスピーカーの会話で使用される語彙の約85%をカバー、2000語ならば会話の約90%、新聞記事や小説の約80%~90%をカバーしています。そして私たちが日ごろ手にする、中サイズの「英和辞典」にはおよそ7万~10万語、大型の英和辞典には30万語が掲載されています。『スペル・バインダー』でカバーしているのは大体10万ですね。10万もの英語を映像に変えるのは大変でした。分かってもらえるでしょうか?”




 ああー、そりゃ大変だ。YES。



“その10万もの英語には第一種エレメントから第五種のエレメントの英語も含まれ使用する事ができます。「水冷」ならばwaterやiceなどです。ピンポイントで使う事ができます。『すぺる・バインダー』にログインする時に使うアカウント(account)も「理言」の一つのカードです。”




 へえ。YES。




“使用できる英単語はライブラリーを参照してください。英単語にはa~zの単体のものがあり、組み合わせる事で英単語となり効果を発動します。卵、eggならe、g、gですね。また相手が「理言」の言葉を使ってきた場合、a~zを挟む事で意味がない英単語となり効果が失われます。初級チュートリアルはこれで終了します。お疲れさまでした。”


 画面がホームへと変わる。さっきまで桜が舞い吹雪く映像だったのがキラキラした数式や英単語に変わっている。素直に綺麗だと思った。

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