夢の中で
夢を見た。
いや、正確に言えば過去の記憶だろうか。
ベッドの上でラブマジをプレイしている自分の姿を見る夢だった。
「うーん…どのルートみても、闇の亡霊の仮面外したスチルはないのかぁ……もやもやするなぁ…」
ポチポチと何周目かのストーリーを進めていたゲーム機を投げ、記憶の中の自分は目を閉じた。
投げ捨てられたゲーム機の画面には黒い仮面をつけた人影が静かにそこに佇んでいた。
ラブマジのストーリーは、光の神子として異世界…現実世界から召喚されたヒロインこと主人公が、魔法学園で魔法を学びながら、闇の亡霊の呪いに蝕まれていく王国を、色々ありながらも攻略キャラ協力し呪いを解き放つ、といったストーリーで構成される。
しかしこの手のゲームではありがちな、敵キャラが攻略対象…なんてことはなく、闇の亡霊は仮面をつけた人影としての出演のみで、何者なのか分からないまま進むのだが、第2王子のルートでちらっと、既に亡くなっているキャラクターであることしか分かっていなかった。
「あー!!こんだけ出てくるキャラ、出て来るキャラみーんなイケメンなんだから、絶対イケメンだったんだろうになー!!」
そう叫ぶ自分の声を聞いたあと、ブツンと視界が真っ暗になった。
真っ暗闇のなか、
闇の亡霊は何を呪って亡霊になったんだろうかとふと思った。
「……んん…」
……目が覚めると現実世界だった。
なんてことは無く、この世界の自室のふかふかベットで普通に目が覚めた。
「(……なんか喉乾いたなあ)」
とりあえず体を起こし、目の前で水差しをもった侍女がいたので、「みずをくれない?」と声をかけると、侍女は水差しをガッチャーンと音を立てて落とし、「お医者様を…お医者様を呼んでまいります!!」と走り出してしまった。
「(ああ…お水飲みたかったのに…)」
粉々になったグラスをみてしょんぼりしていると、
駆け足で消えた侍女が戻ってきたのは数分後だった。
宣言通りエトランゼ家お抱えおじいちゃんドクターと、
「……よかった!ルイ!」
「わっ!お母様!それにお父様も…」
いま私を抱きしめているお母様とそれを見守るお父様を連れてきた。
「…でもお母様、お父様何故そんなに慌てていらっしゃるんです?」
いつも穏やかなこの2人が慌てるなんてそんなに不味いことでもあったのだろうか?と首をかしげると、
「お前1週間も意識が戻らなかったんだぞ…」
「そうよ!魔力覚醒の反動に耐えきれなくて意識を失ったと聞いて……心臓が止まるかと思ったのよ!」
「………1週間…」
喉が渇いたなあくらいで、不思議と体に違和感がなかったから分からなかったけど
…確かにそれだけの間眠っていたとなればそれは驚くわ。
「ともかく…ドクター、診察を」
「はい。旦那様。
…お嬢様失礼しますね」
感覚的には普通に健康な体を診察されるのは変な感じだったが、診察の結果は眠る前同様全く健康体だと驚かれた。
「…眠られている間おそらく精霊が力を与えていたのでしょう……とても元気なお身体ですが、念の為2,3日は養生なさってくださいね。」
ドクターは大事なくてよかったですと言い残すと微笑み静かに部屋を出ていった。