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命の恩人

相変わらずの美少年力と、なぜかふてくされている表情が猫みたいでかわいいなと思いつつも、居住まいをただし、お客様であるノアに一礼した。


「…ようこそエトランゼ家別荘へおいで下さいました。ノア殿」


するとふてくされていた顔がポカンと変わり、ぱしぱしと瞬きをしたと思えば、


「…ほんとに男だったんだね」


とつぶやいた。

ノアの素直な感想に、修行も無駄じゃなかったなと、ちょっとうれしくなった。


「…その件は黙ってごめん。外で長話もよくないし。さ、中へどうぞ」


そういって私はノアを客間へ案内することにした。

客間に入るとのテーブルの上には、お気に入りの紅茶と、お願いしていた、つやつやと光るフルーツタルトが並んでいた。


「(ひゃーおいしそう…!)」


ノスカールは田舎なこともありフルーツや穀物が豊かに実る。

そのため、非常においしいスイーツが誕生するのである。

現世でも甘いものが好きだった私は、食べ過ぎてしまわないよう普段は気を付けているが、今日はノアも来るし、ひさびさにフルーツタルトを用意してもらった。

給仕を終えそばにいた侍女へ二人だけにしてもらうよう声をかけ下がらせる。


「ノアこっちこっち」


ノアの手を引きお気に入りのふかふかのソファーに並んで座る。


ゆらゆら揺れている紅茶の香りの堪能してから、私は口を開いた。


「…久しぶりだね、ノア。」


「うん。久しぶり。ルイ。元気そうで安心した。それと、」


と言ってノアはパチンと指をならすと黒い魔力が部屋全体を覆った。


「あの時は巻き込んでごめん。直接会えたら絶対言おうとおもってて」


表情は乏しいながらも泣きそうな声色でノアはそう言った。


「…手紙でも言ったけど、謝らないで。」


「…でも、結果として、俺のせいでルイに迷惑がかかった」


「…子供は迷惑をかけてなんぼなの。

むしろあの誰にも見られていない環境で魔力が覚醒したおかげで、まだ僕だって生きてるんだから。気にしないで」


もっと観衆の前で、魔力が覚醒していれば、私はとうに殺されていてもおかしくないのだ。


「…ルイだって子供じゃん。


でも…ありがとう」


「うん。」


命を狙われて、助けてくれた相手に謝れるこの幼い友達は。

どんな日常を過ごしていたらそんな言葉をつかえるようになってしまうのか。

家のことを話したがらないノアにいつか教えてもらえるのだろうか。


大人としての私が、そんなことを考えていると無言の空間が出来上がってしまった。


「(空気をかえよう)…そういえば、急に呼び出してごめん。大丈夫だった?」


昨日の今日で慌てて届けた手紙だったことと、ノアの家庭の事情を知らないことから正直ダメ元だったが、ノアは二つ返事で今日来てくれたのだった。





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