はじめまして
「…まあまあ、ワタシのことはいいのよぉ。さあルイおぼっちゃまのばん」
「はい…こころのなかで呼びかけるでしたよね。
意外です、もっと呪文とか唱えるのかと思ってました」
「あらそうねぇ…呪文も必要な時は必要よぉ。
でも、呪文は複雑なやりたいことをやる為の数式のようなものだから、いまみたいに簡単なことなら必要ないのよぉ」
「なるほど…(確かに、世界を救う魔法と精霊をただ呼び出す事では、ことの大きさが違うわね)」
ラブマジのキャラクターたちは呪文を使っていることが多かったから忘れていたけれど、思い返せばお父様がいつも家で魔法を使う時に、呪文を唱えているところは見た事がなかった。
「…でも、ローズ先生、僕は光の精霊の姿を見ていないので肝心の精霊の名前が…。」
普通は魔力の覚醒と共に姿を表す精霊だが、
初めてあった時……お茶会の時の私の意識は半分以上なかったため、光の属性であること以外、まったく姿もわからない。
「そうねぇ…うーん、たしかに呼び出しは名前を呼ぶのがいちばん簡単なやり方ではあるけれど…」
そういってローズ先生は大きな目で私の顔をじっとみつめると、
「でも、うん。そうね、大丈夫。
きっと答えてくれると思うわ。ね?ノーム」
そう言われたノームはうなずき、一生懸命短い腕を伸ばすとマルをつくってアピールしてきた。…ちょっとかわいい。
「というわけで、百聞は一見にしかず。
目を閉じて、集中して…体に流れる魔力の存在を感じるのよ」
「…はい」
短く息を吐き、言われたままに目を閉じで集中する。
あの日、初めて魔力を使った時の感覚を思い出す。
「(あの時はボロボロだし、いっぱいいっぱいだったけれど、今は少し違う。)」
心臓から送り出されるように体をめぐる、血液とはまた違うそれをハッキリ認識し、倒れないように足にぐっと力を込めると、
不思議と風がないのに髪がおどり、自分の周りの空気が水のように揺らめくのを感じた。
「(……アクエリアス……光の精霊さん。2人にお礼が言いたい……!)」
思わず手をぎゅっと握りしめ願うと、
ふいに頬が温かいもので包まれた気がした。
「「こんにちは、可愛いルイ」」
愛情を感じる手のひら達にそっと目を開けると、視界いっぱいの眩く輝く精霊達、
「……こんにちは、アクエリアス、
………それとレム…であってるのかな?」
長く輝く白いまつ毛、床に着くほどの白銀の髪。
何をしている訳でもないのに辺りが陽の光を浴びたかのように輝く。
まばゆく美しい光の最高精霊レムの姿に思わず確認すると、目の前のレムはパァッと顔を輝かせ
「…わっ!」
私をぎゅっとだきしめた。