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悪評

 裕太は早速山崎さんの通う女子校に赴く。女子しかいない空間に慣れているはずがなく、なぜか罪悪感みたいなものがこみ上げてきて、身を潜めるように校内を移動する。山崎さんは2年3組にいるらしいが、立花くんに詳しい位置を聞いていなかったので、教室を探すのに少し手間取った。教室を覗いてみるが、山崎さんの姿はない。


 教室はいろんな会話が飛び交っている。


「ねえ、昨日山崎さんが救急車で運ばれたらしいよ」


 その一言が聞こえた瞬間、裕太はある女子グループの会話に耳を傾ける。


「え!?まじ?なんでなんで?」


「なんでも、ビルの屋上から飛び降りようとしてたらしいよ」


 昨日の出来事なのに、もう噂になっているみたいだ。


「え?やばいじゃん!自殺ってこと?」


「分かんないけどさあ。そういえばあの噂がどうも本当らしいよ」


「あれでしょ?3ヶ月くらい前に商店街で轢かれたのが山崎さんの彼氏だったってやつ」


「そうそう。山崎さんあの日からしばらく学校休んでたし、最近様子おかしかったから、やっぱりそれが原因なんじゃない?」


「うわー、あれ本当だったんだ。山崎さん可哀想」


「でも山崎さんの彼氏ともなれば、むちゃくちゃイケメンだったんだろーねー」


「それがねー、カッコよかったらしいんだけど、どうも不良だったらしいの。髪も金髪で、評判も悪くて喧嘩ばっかりしてたらしいよ。カツアゲされた人とか、いきなり暴力を振るわれた人もいるらしい。あと女癖も悪くて、自分の学校だけじゃなくて他校の色んな女子とかにも手を出してたらしいよ」


「え、山崎さんってそういうタイプが好きだったんだ」


「それで、山崎さんも遊ばれてたらしい」


「えー!流石にそれはないんじゃない?だってあの山崎さんだよ?」


「いや分かんないよー。その彼氏相当なクズだったらしいから。轢かれたのも自業自得かもねー」


「ちょっとー、それは言い過ぎでしょー」


「まあ噂だけどねー。それよりさぁ、昨日うちの彼氏がさあ……」


 話題は山崎さんと立花くんの話から逸れてしまう。今の話を聞いて裕太は噂というのは怖いものだなと思った。確かに山崎さんが屋上から飛び降りようとして病院に運ばれたことも、3ヶ月前に商店街でトラックに轢かれた青年が山崎さんの彼氏というのも正しい情報だが、あんな見た目だけど立花くんがそんな悪いことをする人にも見えなかったし、純粋に彼女のことを心配していたようだったので、仮に女癖が悪かったとしても、山崎さんに関しては本気みたいだった。遊んでいたなんて嘘に違いない。何より、自業自得という言葉が許せなかった。



 しかし、そんな思考の片隅で薄っすらと浮かぶモヤモヤに裕太は気づいていた。一体自分は立花くんの何を知っているのだろうかと。


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