これは逆プロポーズ?
植物園の湿度も手伝ってステラは汗が出てきた。
失礼、と言ってステラは詰め襟の上着の一番上のボタンを外す。
ほんの一瞬だけステラに色気が漂う。
ステラはススン姫の言った私も姫よという言葉の意味を考える。
その前の文脈から考えれば、出て来る答えは一つしかない。
ふつふつと湧いてくる喜びを押さえ込み、ステラはススンに尋ねる。
「…逆プロポーズに聞こえる。君みたいに美しい姫がなぜ会ったばかりの私に?」
「ふふ、美しい姫…ねぇ…」そう言って笑ったあとススンは語り始めた。
「私ね、ちょっと前まではすっごく太っていたの。今のこの美しい姿からは想像できないでしょうけど。
長い間男の人には全然女として扱われて来なかった。
だからなんとなく男の人が好きじゃないの。
だけど…あなたは素敵だと思ったわ。
私達出会ったばかりだけど、私あなたにとても惹かれてる。できれば結婚したいと思うくらいに」
あまりにもストレートで正直なもの言いにステラは衝撃を覚えた。
かわいい…
今まで出会った人間にこんなに素直に自分の考えを口に出す者がいただろうか。
プポルを除いて。
この姫が愛しいと思う気持ちが抑えきれず、ステラはススンの髪を縛ってあったりリボンをシュッと解いた。
一瞬でふわっと髪が広がりイケメン王子は姫に戻る。
そしてステラはススンの逆プロポーズに口づけを持もって答えた。
ステラは父王の城で暮らしていた頃ませたメイドに誘惑されて口づけを交わしたことが、一度か二度あったが、ススン姫にとってはこれが人生初めての口づけだった。
夢や空想の中では何度もリュートと口づけを交わしていたけれど。
ススンはぽうっとなって顔をステラの胸に預けた。
そしてそこからステラをうっとりした瞳で見上げて「私、一人だけとても好きな人がいたの。その人に失恋してご飯が食べられなくなって45キロも痩せたの。
あなたは雰囲気がとてもその人に似てる…」と言った。
その時植物園の扉が開いてユリカとプポルが駆け寄ってきたので
二人はばっと離れた。
「ススン様、クローズ姫がお部屋にいらっしゃってますのでお戻り下さい」
あ…こんなタイミングでと思いつつも「わかったわ」と言ってススンは立ち上がった。
そしてステラの手からリボンを受け取りきゅっと髪を結び、植物園を出て四人で城内に戻った。
ススン姫の部屋の前でステラは姫に挨拶した。
「姫、私は今日はこれで失礼します」と言った後ステラはユリカの前を横切って去っていった。
その時ユリカの胸に痛みが走った。
あっと小さくつぶやいたユリカにどうしたのとススンは尋ねる。
「今、王子の胸にすごい痛みを感じました」
「そう…」
ススンはユリカの読心術を信用していなかったのでこの言葉を軽く流した。
自分の新しい恋の成果により目の前はバラ色だったし、あとは親友の恋の成就のために頑張らなくちゃと心は切り替わっていたので。
クローズたちを上手く取り持って、明日の朝はステラ王子を交えて四人で朝食を取ろう。
そしてその後ステラ王子ともう一度庭を歩き、また…
ススン姫は頬を染めながらドアを開け「クローズ、お待たせ。私あなたに大事な話があるのよ!」と言いながら勢いよく部屋に入っていった。
一方ステラは姫と別れた後早足で城の廊下を歩いていた。
「プポル…帰るぞ」
「はいはい、シオン王子と顔を合わせてまた妙なことになっちゃっうと困りますもんね〜
私たちはあの湿っとした半地下の部屋に戻りましょう」
「…違う、国へだ」
「はい?え?ま、まさか今から?」
「今すぐにだ!」
「ええっ、なんでぇっ?どうして?!」
ステラはプポルのその質問には答えず、早足で半地下の部屋に荷物を取りに行った。