紅茶を甘く
プポルはススン姫が一杯目の紅茶に砂糖を入れず飲んだことに着目していた。
そして姫がステラ王子と見つめ合ったあと二杯目の紅茶を自分のカップに継ぎ足したときチャンス!と思った。
キリキリとしたユリカの視線に気づきもせず、ススン姫の紅茶に砂糖スプーン一杯分の甘みを与える魔法を使うことに集中した。
プポルの思考的には、ススン姫があらっ不思議、お砂糖入れてないのに紅茶が甘いわっ?なぜっ?あっ、もしかしてステラ王子と一緒に飲んでるからかしら?そうよ、そうに違いない、恋って甘いものだものっ、ああっここは勇気を持って王子をお散歩に誘って見ようかしら?なんてことを思ってくれることを狙ってのことだった。
ススン姫は二杯目の紅茶を口にし不思議に思った。
甘い…
せっかく痩せたのでリバウンドしないようにお茶には砂糖を入れないで飲むようにしていたんだけど…
この紅茶仄かな甘みがあって美味しい。
なぜ?
一杯目はこんな味じゃなかった。
カップを両手で包み、じっと紅茶をみつめる。
そのあと姫は顔を上げステラ王子を見た。
この人と見つめ合った後紅茶が甘くなった。
なんで?
…私、もしかしてこの人が好きなのかな?
それにしても、この人まだ少し元気がない。
そうか…
この人だって本当はクローズの花婿に選ばれたくて選考会に来たのよね…
クローズに好きな人がいるんで望み絶たれちゃったのよね。
でも、この人いい人だわ。
クローズのためにシオン王子を体を張って引き止めてくれたんだもの。
ふふ、リュートに似ているだけのことはある。
リュートに似ている…だけのことは…
そう思いながらススン姫はステラを見つめた。
まんまとプポルの作戦に引っかかっちゃったススン姫であった。
ステラはススン姫が自分に向けている視線に気がついた。
潤いを含んだ瞳で自分を見つめている。
ステラはああ、この姫は深い緑の瞳に生命力があって美しいなと思う。
男装ではなく、ドレス姿を見てみたいな…
うん…?今まで女性の華美な服装を無駄なものだと思っていたのに。
なぜこんなことを思うのだろう。
その理由がわからないほど初心なステラではなかった。
多分自分はこのマウンテンゴリラ姫に惹かれている…
さっき必死でシオン王子を止めたのもきっとこの姫に良いところを見せたくてのことだ。
ユリカが、ユリカがあんなことを言ったものだから私は急に姫を意識してしまった。
「このステラ王子は私の大切なススン姫が一目惚れした相手ですからクローズ姫と結婚するわけにはいかないんですよ!」というあの言葉で。
あのときは一瞬真に受けてドキッとしてしまったが…
ふ…ユリカの読心術の精度を考えれば、まあガセネタだろう。
ステラはそうは思ったのだが、自分を見つめるススン姫の潤んだ瞳を見るともしかして…と思ってしまう。
思い切ってステラは姫に声をかけた。
「ススン姫、よろしければクローズ姫のエステが終わるまで少し夜の庭を散歩しませんか?」
!!
うひょっ
王子!
女子を誘う気なんかないだろうと思ったからススン姫から誘わせようと思ったんだけど!
王子、どうしちゃったんですか?
この国に入ってからの王子はなんか一味違うっ。
プポルはステラのススンへの働きかけにひどく驚いた。
ステラ王子のような草食系男子は相手の好意を確信してこそ、自分の好意を行動という形に出来るのだった。
そういう意味では、ユリカの意気込みと暴走が二人が夜の庭を散歩するきっかけを作ったと言えよう。
あと甘い紅茶を飲んだ後、ススン姫は潤んだ瞳でステラを見つめたわけだから、プポルの頑張りも褒めてやらなければいけない。