どうして君は太ったの?
「あ、うん。
ステラ王子、私あなたには言ってやりたいことがいっぱいあるわ。
でもその前に今回の件を謝らなければいけない。
プポルは無実よ。
事情があってユリカが嘘をついてしまったの。
そのユリカのついた嘘を信じて私が事を大きくしてしまった。
私、ついさっきユリカが嘘をついていたことを知ったの。
ほんとにプポルには申し訳ないことをしたわ…
あ、もちろん訴訟はすぐ取り下げる」
そう…少し落ち着いて考えればきっとユリカの嘘を見破れた。
でもわたしはどこかユリカの嘘にすがりたい気持ちがあったのよね。
だから単純にも信じてしまって…
「プポルを訴えてしまったことの責任は全部私が取る。プポルにも、忙しいでしょうにわざわざプポルについてタフタ国に乗り込んで来たあなたにも心からお詫びをするわ」
そう言ってススン姫はステラ王子に頭を下げた。
体がまん丸過ぎたため腹がつかえて腰から折れず首の角度がちょっと下がっただけだったけれど、それが今のススン姫には精一杯だった。
その姫に対してステラは質問をした。
「君はどうしてそんなに太ってしまったの?」
ブチッとした。
姫のこめかみの血管が。
何この人!?デリカシーがない。
聞く?そういうことを!
ってか今は許すとか、許さないとか私が謝ったことに対してなにか言うのが先でしょう?
こっちが誠意をもって謝ってんだからっ!
ぶそくりながらも姫はステラの問いに答えた。
「いえいえ、太ったわけじゃないわ。元に戻っただけよ。
あなたと出会った時のわたしは仮の姿だったの。
これがわたしの真の姿なのよ。
まあもとの体重より10キロ増えちゃったんけどっ」
ぶりぶり怒りながらも質問に答えるススン姫を見てステラは相変わらず正直だなと思う。
悔しいがそれがとても可愛らく感じる。
「君は…本当に正直だな。だからあのときもあんなに正直に君にとって私が君の愛しい人の身代わりであることを言ってしまったんだな?」
思わずそんな言葉がステラの口をついて出た
「愛しい人の身代わり?何それ?」
ステラの発言に、ん?と言う顔をしてススンは聞き返す。
「覚えてないのか?あの植物園でのことを?」とステラはススンの緑色の瞳を覗き込んだ。
「は?忘れるわけないでしょう。
あなたが私にしたひどい仕打ちを。
私あのときはあなたが口づけをしてくれたものだからあなたの恋人になれたと思ってうれしかった。
だけどあなたはそんな私を理由も告げずサクッと捨てたのよね?
私はその悲しみや悔しさで食欲が押さえられなくなって55キロも太っちゃったのよ!」
ススン姫のその言葉を聞きステラはえっ?と言う顔をした。
そして顎に手をあて「?…捨てられた悲しみで?55キロ?…55キロ…55キロ…55…」とつぶやきながら何かを考え込んだ
「ちょっと!何回エコーみたいに55キロを繰り返すのよっ!なんか失礼よ!
今度はこっちが尋ねるわ。
ステラ、あなたはどうしてあの日、私に挨拶もせずに帰ってしまったの?
私はあの植物園であなたとの結婚の約束が成立したと思ったのにあなたが突然いなくなって悲しかったわ」
「55キロ…」
「まだ言ってる!さっきから何55キロにこだわってるの?オタクの国では55は悪魔の数字かなんかなの?
あのね、ユリカは多分あなたに傷つけられた私の心を軽くしようと嘘をついたのよ。
あなたたちが突然帰ってしまった理由を捏造することによって、私の心を救おうと思って!
つまり今回の件はあなた達にも原因があることなのよ!」
そう言ってステラを責めた姫の瞳にはゆるく微笑んでいるステラの口元が映っていた。
えっ?なにこの人笑ってるの?
飛竜ゴンドラから降りて来た時と全然顔が違う。
私たちいま、喧嘩の最中なのに…
戸惑ったススンにステラは少し早口で言った。
「ススン姫、君の両親のもとに今すぐ私を案内してくれ。
私は君との結婚の許可を貰わなければいけない!」と。
「へ?な、なに言い出すのよ!何がどうなってそういう話になるの!?」とステラの申し出にススン姫はうろたえた。
「私は君を55キロも太らせた責任を取る。
そういう話を別にしても、私は君がとても好きだ。あの日君は私にプロポーズをしたし、私もそれに応じた。その約束通り君と結婚したい。
さあ、両親に会わせてくれ!」
「ス…テラ…本気で言ってるの?」
「本気だ。私はたった今君を許すことにした」
「あ?ありがとう!じゃあユリカがしたことを帳消しにしてくれるのね?良かったー」とススン姫は思わず自分の胸に手を当て、ほ〜っと息を吐いた。
「いや、君たちがプポルを嘘の罪で訴えたことをではなく、あの夜君が私にしたひどい仕打ちを許すことにしたんだ」
そう言われてススン姫はキョトンとする。
私がしたひどい仕打ち?
なにそれ?