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スラット城にて

スラット城に着いたステラとプポルは謁見室に通された。

兄の登場を待つ間、ステラは少し不安を感じていた。


いつもは兄の居室で話をすることが多いのだが、改まって今日はいったいなんの用だろう…




彼らが謁見室に入室してから三十分ほどしてステラの兄が入ってきた。二人の見知らぬ男と共に。


兄のいつもの温和な顔に少し苦さが浮かんでいる。


フォンデュがまず声をかけたのはスララではなくプポルにだった。


「プポル…お前は…とんでもないことをしてくれたな…

ステラ、お前も監督不行届だ」とのいきなりの叱責に「は?」と二人は同時に首をかしげた。


その二人にフォンデュはこう告げた。


「プホルにタフタ国の裁判所から出頭命令が出ている。

それも正式にガガンメルテ中立裁判所を通じてだ」


タフタ国…?

あ、ススン姫の母国か。

なぜプポルに?


「兄上…いったいなんのことかわかりません」とステラは質問したが、プポルはもっとわけがわからなすぎて口をポカーンと開けていただけだった。


「ハルンメル国でプポルが犯したタフタ国の姫の付き人への強制わいせつについて裁きたいと言ってきているのだ」


しばらくの沈黙のうち部屋中に響き渡る声でプポルが叫んだ


「なんだっっ!それーーっ?!?!」








ここで少し時間を戻す。


今から一ヶ月前のタフタ国の城内での話。


ユリカはススン姫の姿を見たり、そばを通るたびに胸を痛めていた。


ああ、今はこの自分の特殊な能力が恨めしいと、ズキズキと痛む胸を押さえて天を呪う。


言っとくけど、ユリカの胸が痛むのは人の心を読む魔法のせいではない。

親しい人の落ち込んだ姿をそばで見ていれば誰だって悲しく思うし、胸は痛むものである。


でも人って自分には人にない特別な能力がある〜って思いたいものだから…

ね?


あ、それはさておき…


ススン姫がひどく落ち込んでいるのは誰の目にも明らかだった。

ちょっとした異常行動もしてるし…


みんなはいったい何が原因なの?と不思議がったがユリカにはその原因がステラ王子だというのはわかっていた。

あの日突然なんの挨拶もなしに王子が帰ってしまったせいであると。


いったいあの日夜の庭でステラ王子との間に何があったんだろうとユリカは気を揉むもののススン姫に直接尋ねるのも気が引ける。


プポルから届いた手紙には、二人の間に何があったのかを推測できるような有益な情報は書かれてなかった。


ただご機嫌いかが?

元気にしてる?姫はどうしてますか?みたいなことが書かれていただけだった。


ちっ!

相変わらず使えないな!

お前んとこの王子が突然帰ってしまったせいでうちの姫は大変なことに…


何がお返事下さいだ、バーカ。

誰が出すかっと思ってユリカはプポルの手紙は破り捨てていた。

自分に対する甘い言葉の一言も書いてなかったのも気にいらなかったし。




ああ、この姫の落ち込みをなんとかしてあげたい…

早くなんとかしなきゃ益々大変なことに…とユリカは日々考えていた。


そしてある日ひらめく


ん?

あっ、おっ、いいこと思いついた!


ステラ王子が突然帰った理由を捏造すればいいじゃん!

ステラ王子が挨拶もなしに帰ったのは自分のせいじゃないって姫に思わせればいいんだ!


ああ、この名案をなんで今まで思いつかなかったの?




ユリカは鉄砲玉みたいな性格である。

このアイデアを思いつくと同時にススン姫のところに飛んで行った。

ススン姫は中庭のテラスで虚ろな目をしてシュークリームを食べていた。


その姿を見てユリカはかわいそうで涙が出てくる。

姫!今その悲しみの海から救ってあげますからね。




「ん?どうしたの?ユリカ、真っ赤な顔をして」と突然現れ目の前で仁王立ちしているユリカにススン姫は尋ねた。


「姫…

私…言おうか言うまいか今までさんざん悩んでいたんですけど言うことにします!」


「何を?」


「ハルンメル国であった出来事を!」


「え…?」


「実は私…

姫たちが植物園に散歩に行ってる間にプポルに襲われたんです!」


「え…え?」


「あの時私はプポルのこと友達以上に思えないってはっきり言ったのにプポルったら!無理やり!


…だからあの二人が突然帰ってしまったのは、その罪から逃げるためだと思います。

私、頭にきたんでプポルに明日の朝一番に風紀取締所に訴えてやるーって脅したんですよ。


きっとプポル正直に王子にそのこと話したんですよ。

ほら、あの人たち仲がいいでしょ?

ステラ王子は私がプポルを訴えられたら困ると思って急いでハンメル国を夜のうちに脱出したんだとおもいます。

ハルンメル国そっち方面の法律厳しいから!!」


ユリカの話を聞き終わったススンの顔は怒りで真っ赤になっていた。


「許せん!プポルー!!!」


そう叫んだあとススンは勢いよく立ち上がりユリカの手を取った。


「ユリカ…辛かったわね…可哀想に…悔しかったでしょ?

うん、ユリカが泣き寝入りする必要はないわ!

私、正式にガガンメルテ中立裁判所に申し立ててプポルに裁きを受けさせる!」


「は?へ?」


ユリカの話は、唇だけ奪われて、いきなりいなくなってしまったステラ王子にもて遊ばれたような気がしていたススンの心に火を付けた。

自分の心の痛みと同じようなものをユリカが抱えていたのかと思うといてもたってもいらない。


「さあ、ユリカ、行くわよ!」


「は?あの?どこに…?」


「司法長官の所へよ!提訴の書類を作ってもらいに!」




きゃー

なんか話が変な方向に…

ど、ど、どうしよう〜


私はただステラ王子が急に帰ってしまったのは事情があったのことですよ、姫が振られたわけじゃありませんよって慰めたかっただけなのに…


でも…

ガガンメルテ中立裁判所へ提訴するのってかなりハードル高いよね?

訴訟の供託金も高額だし、姫のお小遣いじゃ賄いきれないよね?

それに一召使いのことで国家を超えて裁判起こすなんて前例がないもの。


多分大丈夫。

うん、大丈夫、たち消えるよ。

うん。うん。

と、思ったユリカの考えは甘かった。


なにせススン姫の両親はハルンメル国から帰ってきてからの娘の落ち込みに心を痛めていたので、高額の供託金をボンと出した。

ススン姫が何か夢中になれることがあるのはいいことだと思って。


ほら、ここんちの両親姫に甘いから。


こうしてユリカのススンを慰めるための嘘は一人歩きをし、国を超えての大事おおごとになってしまったのだった。


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