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クソ女

見てくださってありがとうございます。

今回はほぼあらすじみたいなものですが、よろしくお願いします。

どこにでもありそうな、寂れた五階建てマンション。薄汚いレンガ壁は数ヶ月前から近所の不良たちの落書きによって彩られている。

このマンションの住民の一人である三芳凪子はこのカラフルなイタズラを存外気に入っていたが、凪子の母を始めとする多くの住民は悪ガキを捕まえ、親諸共警察に突き出してやると躍起になっていた。未だ犯人は捕まっていないが。

土曜の午前授業から帰ってきた凪子は、しばらくの間その落書きを見つめてぼんやりとしていたが、どこからか漂ってくる香ばしい焼きそばの匂いに意を決して家族と共に住んでいるマンションの一室を目指した。

わざわざ意を決して自宅に向かわなければならない理由は、父親と兄だ。いわゆる男尊女卑の考え方を持ち、この現代では生きづらそうなくらい捻くれ者で頑固な性格をしている。それでも母には頭が上がらないらしく、不貞腐れながらも母の言うことだけは聞く。しかしながら、凪子の母は今日、パートなのだ。

「帰ってくるのが遅いんだよ!お兄ちゃん達お腹空いてるの、わかってる?」

凪子がドアを開けると、ただいまと言う間もなく兄の怒号が飛んできた。カップラーメンでも食っとけと言い返したいが、言い返せば面倒なことになるのを知っているので、凪子はだんまりを決め込んだ。

自室に入り、部屋着に着替えようとして、凪子は部屋の片隅に追いやられていたビニール袋を見つけた。ビニール袋には大々的に格安衣料品チェーン店のロゴが描かれているが、その上に小さなメモが貼り付けられていた。

『なぎちゃんへ。パパとお兄ちゃんがうるさいでしょう。ごめんなさいね。でも、できれば気にしないで。この間、長袖の服が欲しいと言っていたので買っておきました。安いけど、とっても素敵でしょ?なぎちゃんに似合うと思うわ。ママより。』

メモの内容は母親からの伝言だった。気にしないでという言葉にはどういう意図があるのか。少し不快な気持ちになったが、凪子はビニール袋の中を漁った。中には灰色のタートルネックとセットの黒いワンピースが入っていた。値段は千九百円と本当に安い。それでも、母の言う通り、その服は凪子に良く似合っており、凪子を品の良い可愛らしい女の子にした。試しに色付きのリップクリームを塗れば、凪子は完璧に外行きのお嬢さんだった。

凪子が鏡の中の自分を見つめていると、ドアを荒々しく叩く音が部屋中に響いた。

「凪子、お兄ちゃん達を飢え死にさせる気か!」

「女のお前は家事しか能が無いんだから、早くしろ!このクソ女!」


――クソ女……


凪子は思いもよらなかった。父親にクソ女と呼ばれるなんて。先程、母からのメモを見た時に感じた不快感が蘇ってきた。何年も我慢してきた不満が膨らんできて、今にも弾け飛んでしまいそうだった。

凪子は、財布と定期、学生証、携帯をお気に入りのバッグに詰めてからドアを開けた。勢いよく開けたので、ドアに張り付いていた父と兄は大きな音をたてながら、情けなく廊下に転がった。

二人がぎゃあぎゃあと言葉になっていない言葉で騒いでいるが、凪子は聞こえないふりをして家を飛び出した。当てはないが、とりあえず家には居たくなかった。

いつもより少し早く歩くが、すぐに立ち止まってしまった。またもやマンションの壁の落書きに目を奪われたのだ。今まではその色鮮やかさに心惹かれていたが、よく見ればくだらない罵詈雑言がたくさんの色のスプレーで乱雑に書かれていただけだった。バカ、ファック、死ね……。もっと下品な言葉もたくさんあった。凪子はこの落書きが今の自分自身の気持ちを代弁してくれているような気がして、僅かながら気が楽になるのを感じた。

さて、これからどうしようかと、凪子は軽くなった脚で歩きながら考える。


読んでくださってありがとうございました。

なるべく早く続きを書きたいと思います!

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