終末のフレンズ
※この作品はリレー小説です。
響く鉄の音。鋼の拳と鋼の剣がぶつかり合う。
これで何度目か。終わらない戦いは、早くも千年続いていた。
鋼の拳を持つ、金髪で長髪の少女。
鋼の剣を持つ、茶髪で短髪の少女。
二人は人によって作られた、血も涙もない兵器。
そして二人は万を超える激突を繰り返す。
「また会ったわね」金髪の少女サーバルが笑みをこぼす。
「そうね、おとといぶりかしら」茶髪の少女は顔にこそ出ていないが、嬉しそうに答える。
彼女たちがこうして笑顔で会えるのは戦場だけである。
かつて、この戦争は人間によって行われていた。
だが人類は最終戦争の後、優れた技術を以てしても文明を維持できないほどに衰退した。
千年を待たず絶滅した人類にとって代わったのが、兵器である彼女らなのだ。
彼女らは今もヒトの命令に従って戦争をし、今でもヒトの命令を待っている。
だがそれは叶わない。彼女らに命令をするようなヒトそのものが存在しないからだ。
彼女たちは元々ヒトに危害を加えないように、またヒトに恐怖を与えないように造られている。
故に小柄な少女の形をしているし、笑顔という人を安堵させる表情はプログラム上で再現できる。
だが、彼女たちは心から笑わない。笑えないのだ。
そのことに関して不満を彼女たちは抱いたことすらない。
しかし、なぜかどうしようもない空虚な感覚が、彼女達の大半を占めていた。
その結果、二人は争い続けている。
「昔はもっとたくさんいたのにね」金髪の少女は寂しそうに、そしてまた無機質に腕を振り下ろす。
「そうね、もう残っているのは私たち2人だけ」茶髪の少女の古めかしくて少し欠けた剣が爪を受け止める。
【熱源探知】【サーモセンサーに感有り】
瞬間、二人の視線が合う。そんなはずはない、ここに熱源があるはずがない。
理論回路の故障か、ある種"戸惑い"に似たバグがAIを強張らせる。
二人はその熱源へ視線を向けた。
刹那、爆ぜる視界。溶ける体、焼ける大地。
巨大な光線が、二人の半身を通過していた。
メインコンピュータに損傷はないために、どろどろになった半身で器用に立つ二人。
その右目と左目の先には、巨大な砲塔を構えた奇怪な乗り物が存在していた。
あれは最終戦争で使われた兵器。文明を大敗させたその原因。どうやらヒトが乗っているようだ。
彼等は少女らを危険な存在と認識し、排除しようとしているらしい。
「あれは……モビルアーマー(MA)! 私たちがすべて壊したはずなのに!」
突如MAから音声が流れた
「ふうむ、まだここで戦闘を継続している機体があるとはな、それも連邦軍と新政府軍がつがいで残っているとは」
「うわ!なんか勝手にしゃべってる!」
数世紀前に消えたと思われていた貧弱な機械音と、少女らと寸分たがわぬ滑らかな声が同じスピーカーから漏れ出す。
そして兵器から出てきたそれは、見た目彼女らと変わらない-半身が無くなっているわけではないが-姿をしていた。
「すみません!変に弄っていたら・・・」
その姿に、二つの機械はついに確信する。
ヒトだ、と。
MFとMAが交わるとき、歴史が変わる!? 2巻にこうご期待!(担当)
制作:終末のフレンズ制作委員会