夜露に濡れる子猫
ええと、この話から、リプレイオリジン読んで、幻滅しないでね。
ブログに二年ほど前に載せた小話をベ-スにした小話です。
関東近辺、オフィス街の公園の街灯下。
雨降りそぼる春の夜。
月笠榮太郎が、死んで数日後のこと。
樹梨は、彼と訪れた場所を彷徨うように巡っている、
雨が降る中でも、傘を差さず、佇む白金の髪の少女。
傘を差し出す応理を無視して、樹梨は視線を合わせないまま声を掛けた。
自分と同じく、時計の壊れた長命者に。
自分よりも、永く長く生きて別れた長命者に。
「ねぇ、『生き飽きないの』、《永遠少年》?」
「…………《氷乙女》、否定はしない。」
「その名前で呼ばれるのも、応理に会うのも久しぶり。
今は、《永遠少女》だもの。」
「二代目が亡くなる前かな?」
「ううん、もう少し前よ。」
「初代が亡くなってそれなりか早いもんだ」
十年ほど前に、初代UGN日本支部長・轟厳十郎が亡くなった。
まだ、五十代と若かったのだが、レゲネイドウィルスが発覚した二十年前からの十年間の波乱は彼の寿命を確実に縮めたらしい。
それに、ではないけれど、その前後の《アダム=カドモン》計画のゴタゴタもあったからだろうか。
二人は、それぞれに優秀な戦士であり指導者であった為もあり、同じ戦場に立つことは少なく。
それでも、超人である以上に『同じ』であったから、それなりにこう言うはあったのだ。
端から見れば、樹梨のほうが年上に見えたけれど応理のほうが年上である。
色々とヒドイ馬鹿ではあるが、妙に女の子の扱いが上手い……外見相応以上にとはつくけれど。
「人の時間は短いもの。」
「そして、僕らの時間は長過ぎ、遅過ぎる。」
「…………『十年前』が、またひとつ終わったわね。」
「人は神にはなれない、と言うことだね。」
「そうね、歴史は繰り返すと言うけれど、人は《神》になることを選ぶもの。」
「……君は止めたね。」
「ナチが証明しているのに、UGNとFHはそれを辞めないわ。
同族を消費してまで、どうして、《神》になりたいのかしら。」
「…………」
「あの人は、無理矢理能力を覚めさせられた齟齬は重かったから……ね。
……榮太郎も逝ってしまったわ、子どもの顔を見ずに。」
「……若いのが行くのは辛いことだね。」
「それ以上に愛した人が逝くのは辛かったわ。」
「……………………そうか」
応理の逡巡たっぷりの応えを無視して、樹梨はポツリと呟く。
「どーしてかな、置いてかれるのはしょうがないけど、どうして若い間に死ぬのかなぁ。」
泣きたいのに泣けない。
応理にも覚えのある感情だからだ。
人から遠い超人、それからすら遠い古代種。
同じく、人からも超人からも遠い、闇に生きる者。
だけれど、彼らはどうしようもなく人間なのだ。
寿命は遠いけれど、それでも、心までそうではない。
優しく撫で、抱きすくめる応理。
大人が小さな少女にするようにそんな優しさを込めて。
「全く、君は甘え下手だね。」
「そういう生き方はできなかったからね」
「難儀だね。」
「そういうものでしょう、私達。」
「違いない」
「ご飯でも食べない?
昔話もしたいし、時間あるんでしょ?」
「一応、FHだろう?」
「貴方はUGNね。
久しぶりに会った友人とお話したいだけよ?
ロイス足り得ないけど、大事な友人よ?」
「敵対したら、戦うだろうけれどね。」
「……FHの為じゃなく、息子をまた失うなら戦うわ、だけど、間違っても私が戦うのはFHの為はないわね。」
「全く、悪役らしくないね」
「FHだもの、自身の欲望の為に所属しているの、UGNでやれない事の為に。」
「やれやれ、君は変わらない。」
十年前に別れた時からも変わらない樹梨。
永い時間一人だったせいもあるのだろうが、甘えん坊なところがある。
応理ともそれなりに長い付き合いのせいもあり、それなりに好きなようだ。
お互いにとって、その「好き」は、「きょうだい」としてのそれに近い好きではあるのだけれど。
どちらが、「姉」「兄」かは、お互い譲らないのだろう。
「永く行き過ぎると変われないの。で、どうする?」
「ご相伴預かろうか。」
「食べたいのあるの?」
「そうだなぁ……」
そうして二人は、ひとつの傘に入り、公園を去った。
一応、 二人の外見は、樹梨14歳、応理10歳なわけですが、実年齢は応理が上です。
不死者・・・つか、不老長寿者の悲哀なお話。
それを割とリプレイに忠実にやっちゃうと、確実にギャグにしかならん。
何故か?
気になった方は、「田中天」のWikipediaを参照の事。
とりあえず、同じオーヴァードで、同じ長命者なんで仲は良かったし、積極的にUGNとドンパチをDr.コードウェルがあの宣言出した後もしていないセルなのとUGN時代よくつるんでたたから、UGNとFHになっても仲は悪くないのです。
本格的に敵対すれば、殺しあうだろうとは、リプレイの方の中の人談。
しかし、書き途中含めると、微妙に年表タイトよなぁ。
一応、時期的に、前話とどっこいか、少し後です。初夏前ぐらい。