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そして、私は心を殺す、或いは、絶望を身の内に。

 


 ―――「ちったぁ、機嫌良く笑えよ、母さんが心配するぜ?」




 そうアナタはよく言っていましたね。

 どうにも考え過ぎる私をよく引っ張ってくれたアナタ。

 アナタはもういません。

 数ヶ月前に、生まれ故郷であの抗争で死んでしまいました。

 私達のセルは、大概、本来の名前と関係無く《蝙蝠》と呼ばれます。

 色々と、FHとしては逸脱しているからでしょう。

 UGNとして、『レゲネイドウィルスを隠して、非発病者を含む一般人を守る』ことを望んでも、できない超人オーヴァードもいます。

 私やジンのように、FHでしか認められない特殊な超人オーヴァードだったり、覚醒した際にたまたまFHにいて名をあげてしまったり、謀らずも死にかけて母さんに助けられたり。

 FHは、“強者こそ論理”。

 時に母さんが出張り、時に私達構成員が出張り、“力”を示しました。

 もちろん、“リエゾンエージェント”の一人が、母さんの義理の“母親”だったと言うことも大きいのでしょうが。

 ・・・ここ数年はフィリーさんから受け継いでリーダーになり、落ち着きましたが。

 十年前が一番、私が経験した中では酷かったでしょう。

 結局、弟分のカズマを手放すことになったのですから。

 「機嫌よく笑え、ですか、家族が欠けた状態で笑えるほど酷くはないですよ。」

 数日前、弓月榮太郎が逝きました。

 少々、大きなドンパチがありました。

 激しさだけならば、十年前のカズマを手放すことになったそれでしょうが。

 裏切り者のせいで深くまで食い込まれました。

 結果、アジトを一つと母さんの血の繋がった息子の父親を失いました。

 顔さえ見ないまま、榮太郎は逝ったったのです。 

 ・・・一応、報復も含めて、後始末が終わりましたし、母さんの世話は他のメンバーが見ているでしょう。

 そんな少しの隙間の時間、ふと、ジンの台詞を思い出したのです。

 多分、死ぬ・・・殺される直前のことです。

 まだ、数ヶ月前のことですね、母さんに息子が出来たのがわかる前ことですから。

 書類仕事の合間のコーヒーブレイクの時でしょうね。

 レゲネイドウィルスの活動が控えめになるまでのそんな隙間時間の雑談ででした。

 どんな脈絡で出てきたのか覚えていませんが、そういわれたんです。

 私達のセルは常日頃から、大なり小なり他のセルから攻撃は受けます。

 一応は、本拠地が日本の関東某所ではありますが、手毬市も含め、他の場所にもアジトはありますし、それは日本に限りません。

 私やジンの故郷であるアメリカのどこにでもあるような商業都市もそんなひとつです。

 そういうところでは、UGNやFH以外のマフィア、或いはフリーな超人オーヴァードが関わって居たりしてややこしいんです。

 あの時も、そうでした。

 当時の敵対マフィア連合・・・UGNや私達と対抗するのに、超人オーヴァードを要していても一つじゃ拮抗すら無理な辺りでお郷が知れるというか・・・がいまして。

 モチロン、その街だけではなく他の街幾つかとの合同な組織です。

 ジンの能力的な問題で、被弾覚悟じゃないと集団戦・・・三人以上を見方として相手取るのが難しいんです。

 組みたがる面子も、母さんや私、フィリーさん、ロゼ姉さんぐらいでしょう。

 そのせいもあり、単独行が多いエージェントでした。

 当然、怪我も増えます。

 それなりに経験を積んでいるせいか、すぐに《リザレクト》は使えなくなりますしね。

 レゲネイドウィルスが落ち着くまでは、傷も治りません。

 まぁ、それでも死ぬような怪我はしないのが、ジンでした。

 幸い、母さんが拾ってきた元・FHチルドレンやエージェントは、私やジン、ロゼ姉さんほどではないですが、使えますので時間稼ぎぐらいは出来ます。

 ついでに言いますが、ロゼ姉さんはフィリーさんの双子の姉妹です。

 見た目が完璧に男にしか見えないので忘れない為に、姉さん呼びをしています。

 同じ頃でしょうね、日本の神城グループの内部分裂で、私達にも有効な実弾兵器を流し始めたのは。

 分かりやすくチープに言えば、狼男に銀の銃弾とかそういうものです。

或いは、製薬会社エレキシエルより、実験的なレゲネイド・ウィルス抑制剤も流れてきてました。

 一時的に、レゲネイドウィルスの活動を抑える薬です。

 そう活発な活動じゃなければ、《リザレクト》が使えるのですが、この薬剤を投与されればそうも行きません。

 体質次第ですが、多少のエフェクトは使えますがほぼ人間と同じです。

 怪我は治りません。

 つまりは、心臓を破壊されたり、首を飛ばされる程度なら、シンドロームは選びますが、そう死ねません。

 しかし、この薬が効いていると鉛弾を腹に数発でも危ないのです。

 一応は、粗製乱造なので、品質のばらつきがあること。

 また、専用の銃でないと撃てないこと。

 そういう代物ですから、効かないことが多いのですが。

 ・・・一種の油断があったのでしょうね。

 その時も、ジンが一人でグループを相手にしました。

 『一時間もすれば、終わるだろうから、連絡する。』

 ジンはそう言ったのに、一時間以上経っても連絡がなかったのです。

 携帯電話を前にうろうろしたり、百面相をしたり。

 ロゼ姉さんが、落ち着かせる為でしょうが、恋人を待つ娘のようだと言いました。

 ・・・ある意味、否定できませんね。

 それこそ、物心付いたころからつるんでましたし、そういうアレ・・も致しましたし。

 まぁ、戦闘重なってヌく暇もなかったので、手近で済ませたある意味で子犬同士のじゃれあいみたいなものです。

 下手な話、恋人がこの先できたとしても、母さんよりもジンがどう思うかなんて先に今でも・・・考えてしまうほどですから、色々と重傷です。

 思考の沼にハマりかけた時、やっと携帯電話がなりました。

 「色々とミスった。エクリシエルの薬を食らった上で、神城の弾を受けた。

  やべxegak・・・」

 しかし、すぐに携帯電話を撃たれたのでしょう、途切れました。

 すぐに指示を出して、最後の電話の位置を特定させます。

 そこへ急ぎ向かう最中、マフィアの連中が音もなく襲ってきますが、モチロン返り討ちにします。

 一応、ロゼ姉さんには連絡して、生きていたら、オレンジジュースを搾り取るように拷問の上で情報収集をお願いしました。

 そして、十五分後でしょうか、路地裏で座り込むジンを見つけました。

 もう、虫の息でした。

 ウィルスの活性状況で、《リザレクト》も使えず、抑制剤で身体能力も落ちているのでしょう。

 その上、腹に大きな血染み。

 幾ら、私達超人オーヴァードでも、助からないでしょう。

 幸い・・・そう言っていいのか分かりませんが、ジャーム化しそうではないというのが救いでしょうか。

 「・・・悪ぃな、約束守れそうにねぇ。」

 「私が守りますよ、ジン。」

 震えていたのは、私なのかジンなのか、手を重ねました。

 とても、とても、冷たい手でした。

 「・・・俺がいなくても、ちったぁ機嫌よく笑えよ。

  依存してるのは、母さんでも・・・気を許してんのは・・・・・・俺ぐれぇだろ?

  ・・・・・・ああ、ねむいな。」

 それが、最後の言葉でした。

 ええ、そうですよ、母さんがジュリさんが大事です。

 ですが、ジンほどに気を許して、甘えれていたわけではないのです。

 「・・・貴方がいなくて、笑えるんでしょうか。」

 この後のことは、多く語りません。

 マフィア連合が壊滅し、エリシエル製薬がしばらく、しばらく表立って動けない程度にダメージを与えたぐらいです。

 それから、しばらくして、コタロウが生まれてそれに少しは癒されましたが。







  


   



ほんのり、BL風味。

・・・ディートの中の人とそういう話で盛り上がったせいとも言えるし。

中の人曰く、『見た目ほど、余裕はないし、元が元だから甘えベタ』と言う。


そして、イメージソングは、『青春アミーゴ』。

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