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『生きてこい沈黙』発売記念ツアーその1

 ツアーが始まった。

 初日の静岡はいけなかった。ライヴが終わってすぐ、名古屋に取って返して泊まるということも考えたのだけれど断念した。親戚との付き合いでもあれば良かったのだろうけれど、全くない。

 ということで名古屋から参戦した。

 得三という小屋は何度か来たことがある。いつも雨のイメージだ。今回も晴れるという予報だったのに随分曇ってきた。本降りにならなかったのが幸いだった。開場を告げる声がして、三々五々入場する。入場順というものはないらしい。並ぶということもしない。前は駐車場のところに並んだ記憶があるのだけれど、新しい建物がたっていたので変わったのかもしれない。そういえば前回来た時はそのせいで道に迷って開場に間に合わなかった。

 席に着いて舞台を見ると、右端にアップライトのピアノが見えた。この会場ピアノあったんだ。でもということは、ここでヒカシューを聴くのは初めてなのかもしれなかった。ほかのバンドで来ているのにね。席に座ったまま携帯で話しているバカがいる。鬱陶しいけれど、無視することにする。演奏に集中しよう。

 始まった。『自由でいいんだよ』即興的な録音のものを再現している。前半は新しいアルバム『生きてこい沈黙』の曲を演るとのことで、アルタイツアーの話を交えながら次々と演奏する。和風な『イロハ模様』変幻自在なリフの『静かなシャボテン』

 近ごろの箱根山の話題から入って『マグマの隣』を演奏するのだけれど、この曲を作ったからああなってしまったと。アルタイの信仰テングリの話から『テングリ返る』二種類の曲調が混じっている。中程の歌詞をCDとは違うように歌っていた。つづいて尺八をフューチャーしたインプロヴィゼーション。『アルタイ迷走』かな。そして『こんな人』『ナルホド』と、身体の底が震える曲が続いて、前半終了。そういえば今回バスクラがないことに気づいた。

 後半は、以前からの曲を演奏するとのこと。

 で、いきなり三田さんがギター全開で『でたらめな指』素晴らしい。この声の切れ目が独特なヴォーカルは唯一無二だろう。うしろから「懐かしい!」との声がかかるけれど、私は意外に感じた。このバンドはいつでも現在形だ。つづけて坂出さんのベースの先導で『ダメかな?!』

 前半でもこの曲のイントロを出していたのだけれど、三田さんが「まだだよ」といって中断していたので、満を持して。この曲も進化し続けている。今回も各人の相克がエキサイティングだった。シャープなベースで締めた。

 次がやや長めのリズムの利いたインプロヴィゼーション。その中でいくつかのテーマが提示されるけれど、最後まで突っ走った。清水さんのシンセサイザーのリフから『筆を振れ、彼方くん』が始まる。そして『うらごえ』なにやら作曲者三田さんの裏話があるらしいが「それを言うとそこだけ聞かれちゃうから」とのことで内緒になる。

 口琴を中心としたインプロヴィゼーション『アルタイの口琴』のあとは、巻上さんのホーメイから始まるインプロヴィゼーション。

『目と目のネット』は久しぶりだ。身体が踊る。『人間の顔』このあたりは、少し前のインプロで出されていたテーマからの発信の気がした。『もしもしが』巻上さんの語りが気持ち悪くてイイ。またしても長いインプロヴィゼーション。聞いたことのない曲が心地良い。

 今回の圧巻は『ベトベト』だった。それぞれのソロの爆発がこのバンドの素晴らしいところだけれど、今回は坂出さんのベースソロが凄まじかった。

 アンコールで『なのかどうか』どうかしたか・・・これは前作『万感』のテーマ曲だ。


 翌日は大阪東心斎橋の『コンパス』ここはオールスタンディングなので「今夜は踊るぞ!」と気合が入る。そういえば数年前私のことを「最前で踊っている客の気持ち悪いダンスが気持ちよかった」とツイートされたことがあったっけ。

 篳篥をフューチャリングしたインプロヴィゼーションから始まって、本日も前半は新譜から。『イロハ模様』『静かなシャボテン』そのあと三田さんから作曲秘話が。「『イロハ模様』は部屋に入ったらすぐ出来たんだけれど、そのあと双子のように湧いてきたのが『静かなシャボテン』」メンバーも今初めて聞いたとのこ今初めて聞いたって。アルタイの話のあと『テングリ返る』箱根山の話をして、「『マグマの隣』に住んでいるという歌だけれど、日本自体がそういう熱い状態になっているという曲です」と。ノリの良さで踊ってしまうが恐ろしい曲なのだ。初期の曲『ドロドロ』とメロディが似ているところもある。

 短いインプロヴィゼーションのあと『こんな人』意味深な歌詞だけれど、私には大きく広がった青空が感じられる。テングリだ。

『生きてこい沈黙』を、今夜はすべての歌詞を歌った。アルバムではインプロヴィゼーションが強い曲だけれど、歌を中心に静かに聴かせてくれた。

『ナルホド』で、内臓から踊りまくって、前半の終了。

 後半はやはり短いインプロヴィゼーションから始まって『うらごえ』

「だんだん遡っていきます」というけれど、曲が決まっているわけではない。前半のアルタイの話題で出た『生きること』この曲も進化し続けている。素晴らしすぎる演奏のぶつかり合いだ。坂出さんの赤ちゃん人形や「ブルブル」も飛び出した。三田さんが躍り出てギターソロを響かせる。

 終わるとすぐにドラムが『入念』を始める。定番の流れだけれど、やはりこの曲はノリが素晴らしい。踊るしかないね。そのあとは三田さんコーナー「ではオリエンタルカレーかな」と『カレー三昧』を。シングル『入念』の流れでもあるのだろうか。残念ながら売り切れている。「コリアンダー」の歌詞のあとで「パクチー」とのあいの手が笑った。

「では『ラヴ・トリートメント』をやりましょうか」と巻上さん。確かに遡っている。懐かしい曲だ。ドラムの佐藤さんが「分からない」と言い出した。「ギターに合わせればいいよ」ということで始まった。始まってしまうと合わせるどころではない。久しぶりにやる曲でもこんなに完成度が高い。間奏のシンセサイザーのところを清水さんが入らなかったので、巻上さんがテルミンでメロディを入れたら、次のときには普通よりも軽快にシンセサイザーが奏でたりするのだ。ラストもギターとドラムの掛け合いで見事に決めた。

『夕方のイエス、朝方のノー』この曲はメロディ部とメロディ部の間に長いインプロヴィゼーションの間奏が入る。ギターのソロから始まって、次々と音か拡大していく。スピードも極限まで追いかける感じだ。世界がぐるぐる回転し始める。思わず拍手が上がる。そうして再開するテーマでは、涙がこぼれる。

 アンコール。巻上さんが口琴を取り出す。メンバーが演奏しようとするのを制して「口琴をやります」と、しばらく口琴のソロ。空気が張り詰めたところで、ベースのリフが叩き出す。『パイク』だ。これ以上ないほどの完璧ヴァージョンではなかったろうか。中程の暗黒に沈む込むところでもリズムが緩まない。客の拍手の音も聞こえる。ずれているのすら呑み込んでしまう。巻上さんが操体を演舞して、脚を上げる。三田さんがギターを回して、エンディングで飛び上がる。

 

 

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