私達の世界
私達は長い行列に並んだ末、やっと店内に入れた。
1時間にも及ぶ待ち時間も、美紀と手を繋いだままお互い無言だったが何も苦では無かった。
「なぁ美紀、足疲れてないかい?」
「うん、大丈夫。ありがとう……あっ、これ美味しそう」
「どれだい?」
私達は一つのメニューを同時に覗き込み、お互いの顔がぐっと接近する。
「これ、このパンケーキにする。ラズベリーにしよっと」
「じゃあ私も同じのにしようかな?」
「だーめっ、同じのじゃ食べ合いっこできないじゃない」
私はそうだね、と頷きメニューの隣にあったブルーベリーソースのパンケーキメニューを選ぶ。
待ち時間の間、私達に会話は特になくお互い見つめ合ってはメニューに視線を移したり、水が入ったキンキンに冷えたコップを手で触っては、手についた水滴を拭きとるという謎の行動を続けていた。
「お待たせしました、こちらでご注文はお間違いないでしょうか?」
私達は同時に頷き、笑顔でフォークとナイフを使いパンケーキを切り分ける。そして恒例行事の時間である。
「はい美紀、あーんして」
「もぅ、皆見てるよ……(ぱくっ)美味しっ」
美紀が目を細め、美味しいそうに食べてくれた。続いて私の番である。
「あーん、ふふ。可愛いね」
「それは褒めてくれてるのかな?」
私がパクリとラズベリーソースのたっぷりついたパンケーキを頬張ると、美紀は私に食べさせたフォークをパクリと咥えてみせる。
「こらっ、お行儀悪いぞ」
「えへへ」
「もう、私もいただきます」
美紀が私のフォークで食べてくれたのだ、このフォークで食べると間接キスである。慎重に、慎重にパクリと自分のパンケーキを口に運び、私はバレない程度にフォークまで堪能し尽くす。
「うん、美味い。美紀、このトロピカルジュースのストローさ」
「良いよ、一緒に飲も?」
私は無言で頷き、ぐるぐるっと渦巻状に一本のストローが二本に分岐している。
お互いが口の中にストローを加え、ちゅーっと音をたてながらみるみる内にジュースは減っていく。
美紀も上目づかいで私こっそりと私を見詰めてくれている。恥かしいのはお互い様であり、二人とも今、この世の誰よりも幸せなのだ。
「美紀、この後どこか行く?」
「うん、美香ちゃんと一緒に下着買いたいな……」
勝負下着選びの後は、私達のオタノシミである。




