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転生して魔王になったら  作者: 揚羽
二章 アグネス大陸にて
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華麗な技の数々

宿“紫陽花”は非常に居心地が良かった。

白く塗られた建物は三階建ての立派なもの。

“兎と子猫”は狭かったがこちらは広い。


「小さな宿はみんな経営難で潰れて広いのばかり残ってるのよ」


なるほど。

“兎と子猫”は民宿。

“紫陽花”はホテルだ。

接待をするエルフたちも教育が行き届いているようで見ていて気持ちいい。


「で、やっぱり部屋は分けるのよね?」


「はい」


俺たちは二階、勇者パーティーは一階と分かれた。


***


部屋の中もかなり気に入った。

白と青の部屋。

大きな窓からは町が見渡せる。

複雑に絡み合った水路は巨大な一枚の絵のようだ。

景色はいい。


が、なんだこの沈黙は。


さっきまで騒いでいたモリオンは押し黙り、微妙な空気が部屋を支配している。

普段うるさいだけにこれはキツい。


「…」


どうしよう。

何か話さないと。

…話題が無い。


「…」


静かすぎるまま五分ほど経過。

流石に話さないと。


「…モリオン」「…ご主人様」


本当にかぶる事ってあるんだ。じゃあここは譲り合ってまたかぶる展開だな…という現実逃避。


「先に言って」「先に言ってよ」


ほらね。

次はきっとじゃあ話すってかぶる筈だ。


「ご主人様がそう言うなら…ぼくからね」


あ、主従関係がお約束を壊した。


「ごめんなさい、ご主人様。困らせるようなこと言って。ぼく、悪い子だよね」


いつもならぱっちりと開いている目を伏せて申し訳なさそうに謝るモリオン。

いや、これは俺が悪いわけで…


「だからお仕置き、して?」


潤んだ目で言わないでくれ、エロいから。


「駄目、かな?」


このままの展開は色々不味そうなのでお仕置きとやらをすることにする。

…お仕置きって何すればいいんだ?

露出度高い服でヒールを履いて、黒革の鞭で攻撃した上でかかとグリグリか?


「ご主人様…」


モリオンは頭をこちらに下げる。

ヒールか? ヒールなのか?

いやここは、俺を殴ってくれ! な展開なのか?


「…ぅう」


目を堅くつむっている。

どうしろって言うんだよ。


「……ぇ?」


ぎゅっと抱きしめる事にした。

そのまま腕を回して艶々な黒髪を撫でる。


「馬鹿ぁ…」


ああ、俺は馬鹿だよ。


「ごめん」


それしか言葉が浮かばないほど。


***


一方勇者パーティーの部屋は…


「さて、あたしは散策に行くわよ。ついて行きたい人は?」


明らかに何かやらかす予感にメンバーは一瞬固まる。


「僕は行くよ?」


ハリスは謎な思考回路で一緒に行くといったものの他のメンバーは視線を泳がせている。


「荷物を何とかしたいので行きません」


カルロスはハリスに任せるようだ。


「私、カトレヤちゃんとモリオンくんと遊びたい」


ノーラは尻尾を巻いて逃げることにしたらしい。


と、そこで勇者は重大な事実に気がついた。

これって、二人きりじゃないか。


「僕みたいに若いのとデートだね。ふぐぁ!」


早速、自爆。

渾身のアッパーにひとたまりもなく吹き飛ぶハリス。

カルロスは目と耳を塞いでいる。

ノーラに至ってはネコミミに耳栓をつけている。

実に手慣れている。


「じゃあ行くわよ」


「デートに。っ、うわあぁぁぁああ!」


ハンマー投げ選手も真っ青な人間回しという妙技を披露した勇者は明るい笑顔で手を振った。

こんなんで大丈夫なのだろうか。


***


「で、リーダーはどこにいきたいの?」


「聞いてなかったの? さっき言ったでしょ? 酒場よ。さ•か•ば!」


旅先で毎回このくだりをやる意味はあるのだろうか。


「また問題起こすんでしょ?」


「正義の制裁よ」


そうなのか?

明らかに違うだろ。


「ついたわよ」


「ついちゃったよ」


如何にも“不良です”とか(以下略)


「な、勇者だと?」「神よお助けください」


「最期に君に会いたかった」「夢、よね?」


脱兎のごとく逃げ出す民衆。

それを横目に見ながらハリスはため息を一つ。勇者に向き直りこう言った。


「やっと、二人きりになれたね。キス、いいでしょ? ぐべっ!」


ハリスは念願のキスを果たした。

地面と。

かかと落としだった。

























勇者に壁ドンしたら逆に瓦礫の下敷きになりそうですね。

セシリア教(またの名を自分が正しい教といいます)の真髄です。


次回予告

問題起こす




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