どうしたい?
「…ふーん。何も無かったんだ」
穴から出てみたら村が消えていたので驚いた。
映像って凄いな。
プロジェクションマッピング万歳。
「大蛇の巣か何かもしれないわね」
もしかしたら村がなくて、穴だけだったらそう思って通り抜けたかもしれない。
それ以前に草ボーボーで気づかなかったかも。
「よく分かんなかったけどとりあえず首都に行きましょ?」
それにしても俺が死ぬというのはいつなのだろう。
死亡フラグなんて立ててないぞ?
あ、勇者たちと行動してるか。
「…ご主人様、夜にお話、して」
勇者がカルロスとハリスを引っ張って前を歩き、ノーラが後に続く。
離れた頃を見計らってモリオンが耳元で囁く。やけにエロい声で言わないでくれ。
「何かあったんだよね?」
「うん」
後で話すよと後に続けて勇者たちを追う。
……今だったら、逃げられるんだよな。
こいつらと一緒にいると俺は死ぬのだろうか。
いや、それはないだろう。
あの上級魔族は勇者たちと別れて火山に来いとは一言も言ってなかった。
ならそれまでは死ぬような目には遭わないはずだ。
…多分。
「…ってそれじゃ、あいつらと一緒が良いって言ってるみたいじゃないか!」
「ご主人様、やっぱり休んだ方が…」
思わず声に出ていた。
そんな筈無い。
あいつらは敵だ。
あいつらは、人間だ。
そして俺は…
「ご主人様、どうしたの?」
俺は、何だ?
***
今日は結局、野宿になった。
川が近くにある空き地だ。
交代で火の番をすることを決めたので非番のものは寝入っている。
満月が真上に昇るころ、焚き火を囲むのは勇者とカルロスだった。
「あの子達のことだけど」
しばらく沈黙が続いていたが勇者はそんな空気に耐えられるわけもなく、おもむろに口を開いた。
「…リーダー、それは」
「分かってるわよ。でも、あの子達は、その、変よ。異常だわ」
パチパチと薪が燃えては崩れていく。
「どうしたいんですか?」
炎は一層、膨れ上がる。
「決まってるわ。あたしは勇者よ、困ってる人がいたら助けるの」
子供のように無邪気に笑う勇者の瞳に炎が揺れて煌めく。
「…あの子は、光魔法が使えませんでした。この大陸のことを知りませんでした。何より、身元がはっきりしていません。それに…」
「言いたいことは分かってるわ。そういう可能性もあるって。確実にそうだって分かったら殺るのはあたし」
カルロスはまだ心配そうにしている。
パチンと最後の木片がはぜた。
「なら…」
「もう、交代の時間よ」
月はもう西に傾きかけていた。
***
「ご主人様、話は理解したよ」
勇者たちに起こされて今は焚き火の番をしている。
「会いに行くときに勇者たちをどうするか、だね」
「置いていくか、連れて行くか…」
言い掛けたところでモリオンがきっぱりと言った。
「ぼくは、殺すべきだと思う。あいつは危険だよ。ほら、今なら寝首をかける」
殺す。
勇者を。
あいつを殺す。
それが一番良いのかもしれない。
俺は仇を討って、魔族を纏めて、邪神を復活させて。
完璧じゃないか。
「…でも」
それで本当にいいのか?
良い筈だ。
それで正しい。
「…何で? あいつは皆を消し飛ばしだんだよ、いつかご主人様を殺してしまうかもしれないんだよ?」
殺されるかもしれないから先に殺す。
それは、正しいのか?
「ね、だから殺してよ? お願いだから、あいつを…」
そこまで言われて気づく。
モリオンはずっと我慢してきた。
アグネス大陸に来てから負担をかけっぱなしだった。
俺は今も自分の事だけ考えて…
「ねぇ、ご主人様ぁ…」
そしてモリオンはずっと俺の事を考えていたのだ。
だから、モリオンの為にも、殺してしまおうか。
「ご主人様はぼくの、魔族の味方だよね?」
そこでまた疑問が浮かんでくる。
さっきから考えていたこと。
俺は、何だ?
「じゃあさ、殺してみせて?」
ナイフを手渡される。
人を害する道具。
それをしっかりと握る。
そのまま勇者の前に来て俺は、ナイフを…
***
同時刻。
ある上級魔族は一つの作品を完成させた。
「ふむ。材質を竹にしたら千里眼が安定したのじゃ、これで遠くは丸見えじゃのぅ。おなごの下着姿も覗けるというものじゃ」
アグネス大陸中央にある火山には誰も知らない(ということになっている)秘密の作業場がある。
そこに中学生くらいの少女がいた。
手には竹筒をもっている。
「そうじゃ、幼き魔王様の愛らしい姿を見て目の保養を…」
少女は加治屋の作業着のような服を着ていて頭には布を巻き付けている。
で、言わずもがなそういう趣味である。
「む? あれは…」
竹筒を覗こうとした少女は見てしまった。
「…おなごの湯浴みじゃ」
火山の近くにある村での入浴シーンを。
今日は英語のテストがありました。
入って二日目でテスト。
で、雪。
私、何か悪いことしましたか?
次回予告
ナイフを…




