変な村
見渡す限りの草原。
ホチュアから歩いて五日もするとこの光景にも飽きた。
草しかないし。
バッタ(予想通りデカかった)や蝶が時々現れるものの他は至って平凡。
とにかく何もない。
「ここは本当に何もないのよね。土地をめぐって領主と国と領民が三竦み状態になってね、ほっぽりだされてはや数年。
今じゃ開拓より他の道の復旧が先だし、まあしばらくこんな感じでいると思うわ」
そんなもんか。
どんな世界でもやることは一緒だな。
「…リーダー、あれ何?」
「あれは……え、村?」
ノーラが指差した先にはいくつかの建物。
時代劇に出てきそうな茅葺き屋根の小屋。
井戸や畑もあるようだ。
「あんなの前に来たときは無かったよね」
「それに、人が一人もいません」
…これ、絶対入っちゃいけないやつだな。
でもって勇者は絶対入ろうとするやつだ。
「ご主人様、信じるものは救われるから」
何に願えと?
勇者はにこやかに宣言した。
聞きたくねー。
「それじゃ、寄っていくわよ」
俺は断固反対だからな。
***
「…本当に誰もいないわね」
村を散策すること小一時間。
「でも、ここにある料理、冷めてない」
怪しすぎるから、それ。
ノーラはまだ温かいホットケーキ(だと信じたい)の上にのっているクリームを指ですくって……舐めやがった。
「甘い」
…あれだ。
猫は床に落ちたものでも平気だから。
「あたしの分もとっといてね」
こいつも食べる気だ。
お、俺は絶対食べないぞ。
毒とかあっても知らないからな。
「ご主人様、あれ、いいの?」
止めなさい。
***
「ねぇ、カトレヤちゃん」
勇者とノーラ、モリオンが勝手にお茶会を始めた頃ハリスが俺を呼んだ。
カルロスも手招きしている。
大男が手招きは怖いぞ。
「どうしたの?」
言っておくがまだ猫被りは続けている。
「この井戸、照らしてくれないかな。魔法担当のノーラはほら、あれだし」
なるほど。
そういう事な…あ。
しまった。
俺は光魔法なんて一つも使えない。
「…“火蛍”」
代用に火を使う。
「よし、中はどうなって……っ!?」
ハリスが井戸を覗いて青ざめる。
長い黒髪の女でもでたか?
俺も続いて覗きこむ。
そこには…
ここで恒例のクイズです。
井戸の中にはなにがあったでしょうか。
1 骸骨がわんさか
2 どこまでも暗く続く穴
3 サソリの大群
4 作者の戯れ言
次回予告
村の謎解きをしたりしなかったり