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転生して魔王になったら  作者: 揚羽
二章 アグネス大陸にて
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冒険者ギルドはやはり有った

「人殺しの勇者だ、に、逃げろ~」


勇者が名乗ると店にいた連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

勇者はすっかり貸切状態になった店の椅子をひっつかみ男に振り下ろす。

何かが潰れる音が聞こえた気がした。

気がしただけだと信じたい、男として。


「リーダー、その、脅かしちゃ意味無いと思いますよ?」


禿頭の男がおずおずと言った。

その言葉に勇者は物凄く良い笑顔で“子供の頃から制裁の大切さを学ぶべきよ”と言いやがった。

なんなんだよ、こいつは。

こんな奴が魔王を?

実感がない。


「で、君たちは何でこんな所にいるの? 迷子?」


当然の質問。

…いや、答えられないんだけど。

でまかせを言うことにする。


「旅してるの。それでこの町のこと聞こうと思って…」


猫は被っておく。

この嘘は情報収集を兼ねた優れもの。

とっさについた嘘にしては高クオリティだ。


「子供が二人きりで?」


低クオリティだった。


「それに酒場なんて来なくても冒険者ならギルドで聞けば…」


やっぱり有るんだ。


「旅してるなんて嘘ね。家出かな? 身なりも綺麗だし貴族の子供?」


その路線でいったら“どこの家の子? お姉さんが連れて行ってあげるよ”という流れになりそうだ。


「旅してるもん」


言い張ることにする。


「じゃあ、どこに行きたいの? お姉さんが連れて行ってあげるよ?」


そっちのパターンかよ。

でもってアグネス大陸の地名なんて知らない。


「首都」


とりあえずどこでも通用するセリフで切り抜けることにした。


「遠いわね…」


「元はといえばリーダーが…何でもない」


そこで何か言おうとした勇者の取り巻きの一人が勇者に睨まれて黙った。

なんとなく魔族的な主従関係が見えた気がした。


「君たちがどうして家出…じゃなくて旅してるかは知らないけど冒険者ギルドにはいった方がいい、あたしがついて行ってあげるから」


そしてこいつが決して悪いやつでは無いことは分かった。

本当にこれが魔大陸を消し飛ばした本人なのか?

勇者に手を引かれながらモリオンと顔を見合わせた。


「で、君たちの名前は?」


名乗って大丈夫だろうか。

あ、でも人間には魔王に娘がいることも知らないのだから本名でいいか。


「カトレヤ、こっちはモリオン」


「良い名前じゃない、花の名前に魔除け石の名前。素敵ね」


好印象。

モリオンって名前つけて良かったかもしれない。

間違っても魔族と手を組まなそうな名前だし。


「あたしはセシリア。そっちのハゲがカルロス、あっちのヒョロ男がハリス、こっちの黒猫がノーラ」


随分な紹介だった。


「私、猫じゃない。豹、女豹」


そうなのか?

どうみても猫だ。

まあ、それでいいや。


「あれがギルド。君たち冒険者として登録してある?」


「してない」


「旅してるの?」


「してる」


商人でも登録だけはしているらしい。

ロードサービスがいつでも…では無いけどそれなりに受けられるからだとか。


「新規登録ですね、こちらに書き込んでください」


という訳で登録する事になった。

アンケートに書き込みをするだけ。


  冒険者 登録


*性別 ( )


ここから精神的ダメージが…


*年齢 ( )


で、ここも精神的ダメージが…


*職業 ( )


何それ。


「そこは何でもいいのよ、あたしは勇者、カルロスは戦士、ハリスは騎士、ノーラは魔法使い。ほかには…何があったっけ?」


「商人、盗賊、僧侶、鍛冶職人、パン屋さん、学生、大人、俺、やかん、揚羽蝶…」


要は何でもいいのか。

とりあえず魔法使いにしておこう。

モリオンは…ペット?


*宗教 ( )


知らないよ。


「神なんて信じても何もしてくれないのよ? あたしを信じなさい」


セシリア教でいいか。


*タイプの異性 ( )


何の意味があるの?


*目玉焼きは…


次。


*卵焼きは…


次。


*ゆで卵は…


次。


*スクランブルエッグは…


「その先は殆ど意味ないから」


そだね。


「はい、ありがとうございます。あなたは今日から冒険者ですよ。“卵”の腕輪です」


卵、雛、若鳥、成鳥、老鳥、聖鳥、神鳥。

何故途中で老けているのかは知らないが鳥でランクが決まっている。


「依頼をこなせばランクが上がります」


依頼はポイント制。

受けるときに余りに難易度と実力が合わない場合、弾かれるが基本的に誰でも受けられる。

また、上のランクになればギルドでより優遇され、自慢できるため皆、必死で上げようとする。暇人め。


「あたし達は“神鳥”よ?」


だろうと思った。

というか天下の勇者サマが神鳥じゃなかったら誰がなれるんだよ。


「そこのエルフは案内係、質問があるなら聞けるの、で、そっちの犬娘のところで両替とか金品の換金とかできて…」


めちゃくちゃ便利だった。

とりあえず困ったらギルドにいこう。


「そこの老婆は骨拾ってくれるわ」


……あ、そう、なんだ。













結局モリオンの職業は付き人か腰巾着かペットかやかんになりました。


次回予告

ワイワイ旅に出る

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