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歌声の贈り物  作者: なるちん
プロローグ
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プロローグ

自分の名前は江入義人(えいりよしと)といいました。自分がこんなことになるまでは……


ある日。

自分は当時16歳高校一年だった。

外見は普通。勉強も普通。運動も普通。何のとりえもないモブに近いような存在だった自分。とあることを除けば…だけど。


とあること…とは自分は男性なのに女性の制服を着て学校に行っていたのだった。これは小学校、中学校と続けてきていることである。


これは、自分の家の取り決めなのだ。代々日舞をやっている家系で、異性の心、感情を知るために、男なら女の格好。女なら男の格好をして、生活を送ること。というしきたりがあるからなのだ。

そのため、仕草や口調は女性と遜色のないものだった。

成人を迎えるまで、日舞の舞台に立てるまではこのままなのだ。


っと話が若干脱線したので修正しましょうか。


ある朝の出来事。その日は家に近くの浜辺にいた。自分はとにかく小さいころから海が好きで、毎日とはいかないけれど、波の音を聞きながらぼーっと海を眺めるのが一番心が落ち着くとき。

そんなぼーっとしているときにとてもきれいな声が聞こえた。


『聞こえますか……だれか…………聞こえ……ます…か』

「っ!だれ…ですか?」


周りを見渡しても誰もいない…途切れていくこえはもう聞こえない。

自分は今日はちょっと疲れているのだろうと思い家に向かう。


その日の昼頃

自分は今日は学校で友達に朝の事を話してみた。(この話をしたのは全員女の子である。学校では事情を知っている先生以外は義人を女の子と思っているためである。)大体の友達は「幻聴だ!」と小ばかにしてくるが、中には「神秘的だね」という声もあり、ネタとしては微妙なところだった。


だが授業中にあの声が聞こえてくる。

『私の……名は………どう……か……私………達…………』

「っ!」


いきなり声がするものだから勢いよく立ち上がってしまった。それがいけなかった。


「江入…トイレなら行ってきなさい。」

「あ…いえ……すいません」


うつむきながら席に座る。やっちゃったよ~


その日の夜


あの綺麗な途切れていくこえが気になって眠れない。

どうすればまた聞けるのか?どこにいけば聞けるのか?……悩んでいるときにはいつも行くにはあの浜辺。最初もあの場所で聞いたしまた行けば聞こえる…確証はないがそう感じた。


街頭を頼りに浜辺につく。暗闇から聞こえる波の音。寒くも感じる風。だけど、自分にとってはとても心地いいものだった。

そんな風に自然に体を預けているときだった。あの声が聞こえる。


『聞こえていたのはあなただったんですか?』


今はあの綺麗な声がはっきり聞こえる。それも自分に対して言葉を投げかけている。


「私にはあの声は聞こえていました。…というよりあなたは誰なんですか?」

『私は今ここにいます。』


綺麗な声はそう答えると海のほうから何かが跳ねる音がする。そして近づいてきた声の主の姿に見とれてしまった。


『驚かしてしまいすみません。ですが、こうして会えたことをうれしく思います。』

「あの…人魚……さん?」

『こちらの世界ではそういわれていますね。』


そう。声の主は人魚だった。見たこともないほどに綺麗に整った容姿にあの声。多分間違いはない。


『あなたに声を送り続けていたのは私です。どうしてもあなた様にお願いしたいことがありましたので。』

「お願い?」

『はい、あなた様に私たちの世界で、私たちの姫になっていただきたいのです。』

「えぇ~!私が姫?無理無理無理!だって私男だよ?」

『それは承知の上です。ですがあなた様はむこうの世界では女と認識……いえ私たちと同じと認識されるでしょう。』


言葉が出ない。自分たちの姫になれ?そんなのむこうの世界とやらで決めればいいと思った。自分はこの生活を変えたくないし。


『どうか……お願いします……』


その声は泣き出しそうな声だった。


「どうしてそこまで自分にこだわるの?ほかの人でもいいんじゃないの?」

『あなた様でなければ…だめなのです。私たちを救えるのは…あなた様しかいないのです。』

「…………」


もうこんな考えはやめよう。泣きながら訴えている彼女の言葉に嘘はないだろうし。自分の陰気な言葉で彼女が傷つくのは見たくないと思った。


「分かったよ。姫になってあげるよ。ちゃんとした姫には慣れそうにないけどね。でも、できる限りの事はやってみようと思う。だからさ、力を貸してくれる?」

『あ…ありがとう……ございます。』


涙を拭いながら人魚さんは答えた。


「早速だけど私はどうすればいいの?」

『眠っている間に私たちの世界にお送りいたします。それに伴って私たちの世界での名前はどういたします?』

「このままじゃダメなの?」

『はい…申し訳ありません。あっ!ちなみに私の名前は、シエナといいます。』

「気にしなくていいよシエナ。…そうだなぁ……よし!エリィっていう名前でいこうと思う。」

『エリィ様…いいと思いますよ!理由をお聞きになっても?』

「いいけど…ただ江入をもじっただけだよ。」

『ですがいい名前だと思います。ではエリィ様ごゆっくりお休みください。次に目覚めたときは、私たちの世界で、姫……こちらの世界でいう人魚姫としてお力をお貸しください…エリィ様』


そうシエナが言い切った途端に言いようもない眠気が自分を襲い浜辺で眠りに落ちた。





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