表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

電話

 壁に響く歓声。天井に走る衝撃。僅かに聞こえてくる独特な音楽。

「いよいよだな…」

俺は控え室の一室で待っていた。両肘、両膝にサポーターを付け、

年季の入ったロングタイツを穿き終え、ブーツの紐を結んだ。

俺は部屋にあったカレンダーをふと見た。

今日は二十歳になる娘の誕生日だった。

テーブルに置いてあった電話を寄こして、娘の家に電話を掛けた。

「はい、どちら様でしょう」

声を聞けば、すぐ分かる。

「俺だ…」


一瞬の沈黙があった。

「何…?アンタ、金に困って、オレオレ詐欺でもはじめたの?」

少し厳しい口調で言われた。

「親に向かってアンタはよしてくれ」

「じゃあ、何?用件があるなら言って。こっちは忙しいの」

また、少し厳しい口調で言われた。

「今日はお前の誕生日だから…」

「だから、何?プレゼントでも贈ってくれたの?何年ぶりかしら」

「いや…、ただおめでとうを…」

「娘の誕生日にただおめでとうしか言えない親なんて情けないわ」

「ちょ…、待って、最後に一つ」

「もう、いい加減にして!」

電話は切られてしまった。

繋がらない受話器に向かって

「お前が結婚するときは、ヴァージンロードを歩いてやる」

と、俺は言った。

気づいたら、俺は泣いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ