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episode1 『とにもかくにもヘンなモノ』

とにかくあたしは信じてる。誰がなんと言おうとも。

――幽霊は絶対いる!!


 ここはとある近郊。住宅街の外れにある小さな公園に月の光が降り注ぐ。

その公園の街灯に照らされて、二つの長い影が伸びていた。

「よしっ、準備オッケイっとお。・・・・・・で、そっちはどお?ヒナタ」

 一つの影の主がパンパンっと勢いよく両手を叩く。

「どお?ヒナタ」と問われ、もう一つの影の主がその言葉に反応した。

「っえ゛・・・・・・?ま、まあ言われた通りにやってみたから大丈夫だとは思うけどさ。・・・・・・(ゆずりは)、お前まさか本気でこんなこと・・・・・・」

「このあたしが自分の言ったことを実行しないように見えて?」

 楪が二マッと笑いかけると、ヒナタはそれこそ石のようにじっと動かなくなった。そんなヒナタに楪はまたしてもニマッと笑いかける。

「まままっ。とにかくあたしにまっかせなさあい!ね、おにーちゃんっ」

 同い年の実兄であるヒナタを見てドンッと胸を叩くと、ヒナタは怪訝そうに顔をしかめ、

「マジかよ・・・・・・」

 そう呟いた。


   ◆


 肌寒い風が楪の前髪をかきあげる。

 楪は埃を被った分厚い茶色の表紙の本を手に持っていた。

  南東から吹く風に着けている漆黒のマントをはためかせ。

 耳の上で二つに結っている三つ編みもなびかせ。

 ついでに制服のスカートもはためかせ。

 学校からこっそり盗んできた白のチョークで描いた三角やら四角やらの図形が入り組んでいる魔法陣の中央に立つ。

「っていうかお前、その黒のマントどっから持ってきたんだよ。まさか万引きとか言わないだろーなあ」

 そんな楪を遠巻きに見ながらヒナタが人を馬鹿にしたような口調でそう言った。

「ちょっとそこ、外野っ!うっさい!黙れハゲ!」

「誰がハゲだ!オレはまだ十分すぎるほどフサフサだ!」

「雰囲気壊すなって、ばあーーーっ!!」

 注意しても聞かない外野に、楪は言葉と共に其処ら辺に丁度良く転がっていたソフトボール大の石を投げつけてやった。見事命中。

「さっすがあたしっ☆」

 ガッツポーズをとってから、楪は静まり返った公園で、パラパラと黄ばんだページをめくり始めた。

お目当てのページに差し掛かり、ぴたりと手を止める。


――すうっ。


 深く息を吸う。

 そして、月の光と街灯の僅かな灯りを頼りに、本の中身を唱え始めた。

「【古今東西を守る神よ 我に力を貸したまへ。卯より酉に沈む者、汝の在るべき姿形で君臨し虚空に続く道を開け】っ!!」

「・・・・・・アホらし」

 突然、声がした。

 ソフトボール大の石にノックアウトされて伸びていたヒナタであった。石が直撃した即頭部をさすりながら、なんのためらいもなくため息混じりにそう呟く。

「アホらし」

 続けざまに同じように繰り返す。

 人が真剣に行っている時に「アホらしい」と言われたら、当然、誰でも「ムッ――」となるものである。もちろん楪も人の子良い子。「ムッ――」となり、

「ちょっとヒナタあ!あんた『アホらし』ってなんなのよ『アホらし』って!!しかも二回も言って!!泣いちゃうわよ!」

「アホらしいから素直な感想を述べたんだよ。だって・・・・・・そう。アレだろ?幽霊を呼び出すって、本当に出来るとか思ってんのか?ちょっと頭のおかしい本の読みすぎなんじゃねーの」

「ばっ、馬鹿にしたわね!!それにちょっと頭のおかしい本の読み過ぎはあんたの方でしょーがっ!・・・・・・ってかヒナタ。あんた、夢がないのね」

 憐れむように、言う。

「可哀想な子だねえ。どうしてあんたって子はこんな子になっちゃったんだろうねえ。片割れのあたしはこーんなに素直で可愛くて良い子なのに。うんうん」

「よけーなお世話だ!!んでもって全くもって逆だよ!」

「ま、とにかくとにかくぅ、」

 楪は魔法陣の外にいるヒナタをちらりと見やると、直ぐに細かい文字の書かれた本に目を落とした。

「呪文唱えてる最中なのよ。邪魔しないでよね」

「お前が勝手に絡んできたんだろーがっ」

「うっさいなあ・・・・・・全く、もお・・・・・・」

 誰に似たんだか、、と愚痴をこぼしながら、空いている右手で片耳を塞ぎ、楪は残り三行である呪文を一気に唱えた。


「【失われし()の者は空音(そらね)により破滅に導かれん。今降臨する。我の前に姿を現せ】っ!」


 一陣の風が虚しく楪とヒナタの間を通り抜けていく。

――何も起こらない。


「な、何で・・・・・・」

「ほーらみろ。やっぱオレの言った通りだって。こんなの出来るはずがないって・・・・・・」

「・・・・・・」

「言ってる・・・・・・」

 楪はただ魔法陣の真ん中で呆然と立ち尽くしていた。

それを見兼ねたのか、ヒナタは落ち込んでいる様子の楪にポツリと問う。

「・・・・・・なあ、そのめちゃくちゃボロボロっちい埃被った本さ、どこで手に入れたんだ?」

「ボッ、ボロボロっちい埃被った本ってなんなのよ!これ、あたし達のお兄ちゃん、亜倉(アクラ)から貰った大切なものなんだからね!酷いとか思わないのっ?!」

「いや、お前の場合貰ったんじゃなく奪ったんだろ。亡くなった兄貴、死ぬ間際まで持ってたもんな。で?」

「で?じゃないのっ。これに載ってる降霊術とかなんとかを実践したらもしかしたらアクラに会えるんじゃないかって考えてるバカなあたしがいるのよ。・・・・・・本当に・・・・・・バカだよね、あたし」

「・・・・・・本、ねえ、、」

 楪から本を受け取り、ヒナタはそれをパラパラとめくっていく。カビ臭い何かが鼻をつく。

「って、きゃああああああああああ!ヒナタあんたっ、これ、アクラから貰ったもんなんだから汚い手で触んないでよねっ」

 突如、物凄い勢いで本をぶん取られ、何が起こったのか把握できていないヒナタはしばし自分の手を呆然と見つめていたのだった。

 それからようやく楪の行動を理解すると、魔法陣から離れたところで本を大事そうに抱えている楪に、頬をヒクヒクとヒクつかせながら近づいていく。

「オイ。汚くて悪かったな。どーせオレは穢れてますよー」

「なんだ自覚してるんじゃない。穢れてんだったら今から身を清めるためにナイアガラの滝にでも打たれてきなさいよ」

「清める前に溺死しちゃうだろーが!お前、オレをなんだと思ってやがる!」

「恥ずかしくも、あたしの双子の兄よ!全く・・・・・・こんな奴があたしと血が繋がっているということ自体が恥ずかしいわ」

「それはこっちのセリフだけども!」

 フンッ。

 楪とヒナタはお互いそっぽを向いてひとまず兄妹喧嘩を終結させた。

「・・・・・・それにしても、」

 今二人から離れた場所に描かれている魔法陣は月の光が反射して、静かに冷たく光っている。

「やっぱ無理だったな、その・・・・・・幽霊呼び出すヤツ」 

 そっぽを向きながらヒナタが言う。

 楪はその言葉に勢いよく振り返って、

「無理じゃない!無理って言ったら無理に決まってるわよ!」

 黒いマントをはためかしながら、

「大丈夫。幽霊は、必ず現れるんだからっ!」

「さあ、どーだか・・・・・・」

 微塵も信じていないヒナタに、楪は飛び膝蹴りでも食らわせてやろうかとそっぽを向いたままのヒナタに駆け寄って――


「――?!」


 突然、楪の後ろの魔法陣がピカッと激しく光った。続けて中心部分から銀色を帯びた風が巻き起こる。

 それは月の光を吸い込むかのように、どんどん大きくなってゆくのである。

「おっ・・・・・・おい楪、これは・・・・・・。どういう、ことだよ」

「あたしに聞かれたってえええ~~~」

 その間にも風は竜巻と化して周りにある木々をざわめかす。

 そして――。


 なんと、その竜巻から黒いブヨブヨした物体が溢れんばかりに出てきたのだった。


――スライムのような。

――影のような。

――はたまたアメーバのような。


 何処が顔とも知れないが、裂け目からはこの世を絶するような悲痛なうめき声が漏れ出していた。これらがこの世のものではないことは確かであった。


「いやあああ!ち、ちょっとヒナタっ!こ、これは想像を遥かに絶するモノよ!どーにかしなさいよおおおおおお」

 ヒナタの服にしがみつきながら叫ぶと、ヒナタは震えた声で、

「ど、どーにかって言ったってお前・・・・・・オレだって、・・・・・・怖いんだ」

「あんた男でしょーーっ?!」

「この際、男か女かは関係ないだろう!!男女差別だあああ!」

「いっつも『女おんな』うるさいのは、あんたの方でしょうがーー!」

 こんな時でも言い合いを始めるいつも通りの二人。

 そんな二人に吹き付ける風はより一層強烈なものになってくる。

 と、言い合いをしながら飛ばされないように風に対抗していた楪に、突如黒い物体がバッと襲いかかってきた。

「キャーーッ!」

「楪っ?!」

 楪は掴んでいたヒナタの服を思わず離してしまった。

 黒い物体が楪を追う。楪は必死になって黒い物体を避けまくる。

「いーやー!こっち来ないでーーっ!清らかな私の全てが穢れるうう!!どうでもいいヒナタの所へ行ってよ~!」

「オレに擦りつけんなっ!」

「・・・・・・っ!」

 ブンブンと腕を振ってガードを図るが、意味は無い。黒い物体は顔らしくない顔にポッカリと空いている口らしき穴を歪ませた。


『我ヲ呼ビ出シタノハ、オマエカ』

 【ソレ】は確かに、そう言った。

初めましてでございます。


まずは、このページを開いて下さったこと、お礼申し上げます。

ありがとうございます。

これも何かのご縁。

目を通して頂けて、双子ともども嬉しさでいっぱいです。


  ◆


改めて。瀬野 こなみと申します。

ネットに小説を上げるのは今回が初ということで。

一人ドキドキしています。ドキドキ。


今回のお話は、私が中学生の頃恥ずかしながらもそもそノートに書き溜めていたお話です。友達に双子の兄妹がいまして、とても羨ましく思ってた時代です。

このお話の楪とヒナタはいつも喧嘩してるようだけどね(汗)

でも、二人共ただ素直になれないだけなんだと思うの。ふふふ。



そうそう。このお話、恐ろしくなっがーーい題名なので、

「ノンスト」など、略して頂けたら・・・恐縮です。

  

  ◆


もしよろしければご要望・ご意見・ご感想等頂けたら今後の糧にしていきたいと思っております。

というか、待ってるのだい。切実だい。


 

  ◆


というわけで、不慣れな拙い文章でお送りいたしました。

これからも双子ともどもよろしくお願い致します。

次回は新キャラ登場予定です。


悪霊を呼び出してしまった双子。さあ、どうなる?!


(2013.02.15)


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