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お前を愛することはないと言われた婦人は街道の守護者となる

掲載日:2026/07/19

お前を愛することはない!からザマぁじゃない物語を考えてみました。

結婚式もつつがなく終わり、初夜のために整えられた夫婦の寝室で、わたくし、クランク侯爵家の次女であった17歳のアンナローズは、旦那様となったハミルトン伯爵家の嫡男、ジーラモン様の到着を待っていた。


この婚姻は、現伯爵夫妻が事故で亡くなり、経済的に困窮しつつあるハミルトン伯爵家を救済するための、王命による政略結婚。それは貴族に生まれた者の責務として、アンナローズも十分に理解していた。


だが、寝室に現れたジーラモン様は、ラフではあるものの、しっかりとした外出着を身にまとっていた。


「アンナローズ、君を愛することはない」


アンナローズはあっけにとられたが、言葉の意味を確認するためにどうにか声を絞り出した。


「ジーラモン様。それはどういう意味でしょうか?」


ジーラモン様はわたくしを一瞥して言い放つ。


「私には最愛の女性がいる。男爵家の御息女だ」

「しかし、この婚姻は王命ではございませんか!」

「そうだ、だから結婚という形式だけは調えてやった。伯爵家が潰れて困るのは俺ではない。王家とお前の実家である侯爵家だ。侯爵領から繋がる街道の保全のため、伯爵家の人員がそのまま残っていた方が都合が良いからだろう?」


アンナローズは目を見開いて驚いた。


「貴方様は、伯爵家などなくなっても良いとおっしゃるのですか?」

「そうだ。俺は愛する彼女と暮らせればそれで良い。婚姻はしてやったのだから、あとはすべて好きにしろ。伯爵家のこともお前に任せる」


そう言って、ジーラモン様は部屋から出ていこうとした。


「どこへ行かれるのですか?」

「彼女のところだ。子供は彼女と作る。だが、教育はお前が好きにしたら良い。伯爵家を継ぐだけならそれで十分だろう」


乱暴に扉を開き、彼は部屋の外へ出て行ってしまった。

まさか、当の伯爵家嫡男が、自ら貴族籍を捨てたがっているなどとは思いもしなかった。 これからどうしたら良いのか、アンナローズはただ途方に暮れるしかなかった。



翌朝、浅い眠りから覚めたアンナローズは、身支度をして伯爵家の執事を呼び出し、朝食後に詳しい事情を聞いた。


ジーラモン様はひとり息子でありながら、昔から政務に全く興味がなく、幼馴染の男爵令嬢と添い遂げると公言していたらしい。わたくしとの話のあと、本当に伯爵邸を出て、今もその男爵家に身を寄せているという。


「お相手の男爵令嬢の実家はどうなのです? 爵位のない旦那様を迎え入れても問題ないようなお家なのですか?」


執事が言うには、その男爵家は貴族籍こそあるものの、伯爵領の隣にある長閑な村で、名ばかりの暮らしをしているらしい。男爵自身も領主というよりは村長といった様子で、男爵家そのものが潰れたところで、彼らの生活は何も変わらないのだという。


これにはアンナローズも頭を抱えた。よりにもよって、王命による結婚の当事者たちが、貴族という地位にこれっぽっちもこだわりがないのだ。これでは政略結婚の意味がない。


はっとして、アンナローズは重要なことを思い出して執事に確認した。


「街道の保全はどうなっているの? 機能しているのかしら?」

「前伯爵様が生前にお手配されていたおかげで、まだ現状維持には問題ありません。道や橋の補修などの要望は届いておりますが、今すぐ対応が必要な段階ではないという認識です」


ふぅー、と深い息を吐き出した。

これはもう、わたくし一人の手で対応できる範疇を超えている。

そもそも、婚姻前の事前調査はどうなっていたのだろうか。 これでは伯爵の妻ではなく、伯爵家の当主そのものを丸投げされたようなものだ。


だったらなぜ、ジーラモン様は爵位を国王陛下に返還しなかったのか……。いや、あの様子では、おそらくその手続きすら知らなかったのだろう。

愛のある結婚ができるかどうかという心配はしていたが、まさかこんな事態になろうとは。


「奥様……」


執事の不安げな表情が物語っていた。これから、私達はどうなるのでしょう、と。

そんなもの、わたくしだって知りたわよ。


「お父様に連絡を取るわ。手紙を書くから、クランク侯爵家へ大至急届けて。返事もすぐにもらってきて頂戴!」


こうして、アンナローズの受難の日々が始まった。



クランク侯爵家からの返信は、翌日には届いた。

手紙には「事情はこちらでも確認する。王家とも話し合うため、アンナローズはひとまず伯爵家の維持に努めてほしい」とあった。


淑女教育こそ徹底して受けてきたが、領地経営など学んだことはない。

アンナローズはお父様や王家の方々の方針が早く定まるようにと祈りつつも、とにかく現状を把握しなければと、再び執事を呼び出した。


ハミルトン伯爵家が管理する街道は、南北に長く、東西は深い森や渓谷に囲まれていて地形の変化に富んでいた。 街道自体は馬車が二台すれ違うことができる幅があり、この南北を結ぶ主要街道を繋げた功績によって、ハミルトン家は高位貴族へと上り詰めたのだ。

アンナローズがやらなければならないのは、その南北の街道そのものの維持・管理。そして、宿場町や水場の整備、安全確保のための警備体制の構築、それに伴う人員管理だった。


「今は現状維持ができているということだけど、収支はどうなっていますの? きちんと黒字で経営できていますの?」


アンナローズは執事に尋ねる。


「はい、僅かではありますが黒字を保っております。しかし、大規模な補修を行えるほどの予算はなく、現在は小規模な整備費のみで対応している状態です」


なるほど……。 帳簿なども見せてもらう。収支はギリギリの黒字。

しかし、何か不測の事態があればすぐに破綻する。これは現状維持に努めつつ、いずれは自ら視察に出向かなければならないかもしれない、とアンナローズは考えていた。


それと同時に、ジーラモン様の動向確認も必要だったが、彼は一向に男爵家から戻る気配がない。 「好きにしろ」とおっしゃっていたが、本当にこのまま戻らないつもりなのだろうか。


額を指でグリグリと押さえながら、頭を抱える。

わたくしは新婚のはずだ。嫁いだ家での嫌がらせや無視、あるいは無関心などは想像の範疇だったが、この状況では怒りや悲しみすら湧いてこない。


王家への忠誠は誓いつつも、お父様や国王陛下に文句を言いたくなるのを堪え、街道整備の現状確認と補修費の決済業務などをこなすうちに数日が変わらず過ぎていった。

そんなある日、お父様が数人の実務に長けた使用人を伴って、伯爵邸へとやってきた。


「正式に伯爵代理を認める……ですか……」


わたくしは、指で額をグリグリと押しながら、疲弊しきった声で言った。もはやこれが癖になってしまっている。


「男爵家にいるジーラモンにも、書面にて同意の書簡をもらっている。彼はそのまま男爵家で暮らすそうだ」

「……それをお認めになられたのですか……」

「王家にも話は通してある。領地経営に詳しい部下を連れてきた」


お父様は諦めたような顔つきで言う。


「何故ですか? わたくしはどのような方に嫁いでも恥ずかしくないよう、淑女教育を学んできました。しかしながら、当主としての務め、いえ、領地経営について学んだことは一度もありません。即刻、きちんとした代官を派遣されるのが、当然の措置だと思うのですが……」

「すまん。しかし、今は王家がひどく混乱しているのだ。国王陛下の御不例に加え、側妃の産んだ第一王子と、王妃の産んだ第二王子が不穏な牽制を始められた。中央の貴族たちはその対応に追われ、当主不在の地方領地にかまっている状況ではないのだ」

「そんな……。では、わたくしはどうなるのですか……」


夫となった人間は他の女の元へ逃げ、学んだこともない領地の責任者を押し付けられ、責任を丸投げされる。わたくしは一体、何のために結婚したのだろう。


「すまない。だが、王国のために耐えてくれ」


お父様が頭を下げた。

頭では理解している。これは王命であり、取り下げられない限りは従うのが貴族の責務だ。 本来ならばジーラモン様の責任問題となるはずだが、国家のより大きな政変によってなし崩しにされてしまったのだ。

やるしかない。


それでも、わたくしの女としての生は、これで終わってしまったのだと絶望が胸を満たした。

わたくしは表情を消し、静かにカーテシーをしながら言った。


「承知いたしました。伯爵代理としての任務、全力を尽くします」


そう言うほかに、道は残されていなかった。



それから、5年の時が流れた。

お父様が連れてきてくれた優秀な使用人たちに手伝ってもらいながら、何とか伯爵家は維持できていた。 しかし、財政はかなり綱渡りの状態だった。


おかげで社交には一切参加できていない。ドレスを仕立てる金があるなら、それをすべて街道の整備に回さなければ、一瞬で赤字に転落してしまうからだ。


ただ、五年もの間、必死に領地経営と向き合ってきた経験によって、課題点も明確に見えてきた。

南北に長いこの街道は、伯爵家の財政の細さゆえに、大規模な改修の手を付けられずにいる。 だが、もし街道の中央部にある村に物資集積場としての機能を持たせ、補給が容易な「街」を作ることができたらどうだろう。

商人たちは飼い葉や水、食料などの道中の荷物を減らすことができ、その分、輸送する物資を増やせる。彼らが街で消費すれば、領地の財政も大いに潤うはずだ。これが機能すれば、我が家の財政も一息つける。 問題は、そのための莫大な初期資金をどこから調達するか、だった。


そんな折、伯爵家に一人の幼子が尋ねてきた。

忘れていたわけではない。

しかし、ジーラモン様、貴方はどこまで独りよがりな方なのですか……。


その幼子は、4歳になるというジーラモン様のご子息だった。


衣服は薄汚れて泥にまみれ、身体は信じられないほど痩せ細っている。どう見ても伯爵家当主の令息には見えなかった。 しかし、その顔立ちは、わたくしの記憶にあるジーラモン様の面影を確かに残していた。

幼子は小さな声で言った。


「ここに行けば、ご飯が食べられると言われたの……」


これでは完全に口減らしではないか。


部下の一人が、昨年は領内全体が不作の年であったこと、そして国王陛下の御容態は悪化の一途をたどり、王子たちの対立も続いていることを報告してくれた。お父様や宰相閣下などの実務派の政務官たちが必死に国を回して、何とか保っている状態らしい。

それゆえに、国民の飢えに対して国も地方領主たちも対応しきれていないのだという。


なんということだろう。この子もまた、大人の身勝手な争いの被害者なのだ。責任を取るべき者が責任を果たさないツケが、こうして目に見える形で現れている。

わたくしは癖になった指で額を強く押し、首を振った。

それでも、やるしかない。


ここで現実から目を背けたら、わたくしもあの無責任な彼らと同類になってしまう。それだけは、自身の矜持が絶対に許さなかった。わたくしは、わたくしであり続けるために、この子を育てると決めた。


「いらっしゃい。温かい食事を用意させましょう。ですが、食事を得られる代わりに、貴方にはこれからたくさんのことを学んでもらいます。きちんと責任を取れる、立派な大人になってくださいね」


わたくしは彼の手をとり、ゆっくりと屈んで目線を合わせた。


「お名前は?」

「……ライアン……」

「今日からわたくしが貴方の義母です。今までの家には、もう帰れないと思いなさい」


どうか、この子がジーラモン様のようにはなりませんように。

そう祈りを込めて、優しく彼の小さな手を握りしめた。




さらに、5年の歳月が流れた。

王国内の混乱は、未だ収まりを見せていなかった。国王陛下が四年前にお亡くなりになると、本格的な王位継承の武力闘争が勃発したのだ。


皮肉なことに、その戦乱のおかげで軍事的な物流が活発化し、我が領地の財政は一息つくこととなった。


しかし、今度は継承権争いの中で、アンナローズは「どちらの派閥に付くか」という選択を迫られることになる。わたくしはあくまで臨時の代官であり、王命によって街道保全を任されている身。王命が正式に書き換わらない限り、中立を保って街道を守る義務があると突っぱねた。

資金も兵力も、決定権すら持たない貧乏伯爵家であったことが幸いし、貴族や派閥も、本気でこちらを抱き込もうとする前に争いが激化し、結果的に見逃される形となった。


しかしながら、念願だった物資集積のための「中央街の建設計画」は完全に頓挫していた。どこの貴族も商会も、そんな大規模な投資をする余裕などなかったのだ。


自分たちにできることとして、小規模な農家に飼い葉の増産を依頼し、倉庫を建て、水路を繋いでため池を作るなどの地道な準備を進めた。

同時に検地と測量を繰り返し、いつでも動けるように詳細な街の計画図を作成し続けた。


ため池や飼い葉の効率的な運用により、ある程度の税収の上振れが見られるようになり、あとは本格的な出資者さえ現れれば、すぐにでも計画を始動できる段階にまで漕ぎ着けていた。 わたくしはまた、じっと我慢の時を強いられることとなった。


ライアンの基礎的な学問はわたくしが自ら教え、侯爵家から派遣された使用人たちが領政の実務を叩き込んだ。

11歳となったライアンは、かつての痩せこけた面影はなく、健康的な筋肉がつき、厳しい勉強にも必死に食らいついてきた。 わたくしは彼に無条件の母性を与える存在にはなれなかったが、過酷な世を生き抜くための知識を与える存在として、確かな信頼関係を構築していた。


その甲斐あって、ライアンはまだ幼いながらも、十分にわたくしの政務を手伝えるまでに成長してくれた。


「義母上、商人ギルドの使者が面会を求めて参っております。約束は頂いていないとのことですが、急ぎお伝えしたいことがあると。お忙しければ日を改めると申しておりますが……」


ライアンは最近、わたくしの秘書のような役割を務めてくれている。領地の視察を執事に行かせる代わりに、細やかな取り次ぎをこなしてくれているのだ。


「会いましょう。何の話か気になるわ」


応接室に入ると、商人ギルドの副ギルドマスターが慌てて立ち上がった。王家や貴族たちが頼りにならない中、一縷の望みをかけて、商人ギルドに出資してくれる商会がないか密かに問い合わせていたのだ。


「お忙しい最中、突然の訪問をお許しください、伯爵代理」

「構いませんわ。お急ぎの要件とお伺いしました」

「はい! お問い合わせいただいていた、街道中央部の街の建設に関して、出資を前向きに検討したいという商会が現れましたので、急ぎご報告に上がりました」

「まあ、それは重畳ね。一体、どのような商会なの?」

「フラングレー商会です。扱う商品は武器から鍋釜まで多岐にわたり、行商を中心として、安く仕入れて高く売る、新進気鋭の商会です」

「聞いたことがない商会だわ。本当に大規模な出資が可能なの?」

「フラングレー商会は、ここ数年の王位継承争いに乗じて急速に台頭してきた商会なのです。武器、食料、飼い葉を、必要のない場所から必要とされる場所へ迅速に運ぶという行商の強みを活かし、各勢力の物資運搬を一手に引き受けることで、今や王国屈指の財力を誇るまでになりました」


わたくしの運命を狂わせた、この国の醜い内乱。その混乱の中で彼らは幸運を手にしたのだと思うと、一瞬、理不尽な怒りと嫉妬が胸をよぎった。


しかし、わたくしは静かに目を瞑り、机の下で固く拳を握りしめて、その黒い感情を心の奥底へ押し流した。


これはただの八つ当たりだ。決して表に出してはならない。わたくしはもう、責任ある立場にある大人であり、貴族であり、この領地を守る義務があるのだから。

完璧な微笑みを顔に貼り付け、わたくしは言った。


「ぜひ、その方と面会をさせていただくわ」



フラングレー商会からやってきたのは、艶のある黒い髪を後ろできっちりと纏め、挑戦的な輝きを放つ青い瞳を持った、比較的若い男だった。 わたくし達は、わたくし、執事、ライアン、そして街の計画責任者である使用人の四名で彼を迎えた。


「お初にお目にかかります。フラングレー商会、第二輸送隊の番頭を務めております、ハインツと申します。南北街道の守護者にして、美しき伯爵代理にお会いできて、心より光栄に存じます」

「丁寧なご挨拶、ありがとう。あまり時間もありませんので、早速ですが出資についてのお話をお伺いしてもよろしくて?」


若い商人は深々と頭を下げて、淀みなく返答を始めた。

彼は、現在の南北街道が置かれている状況を驚くほど正確に把握していた。そして、中央部に物資集積場と街を建設することがどれほど理にかなっているか、さらに、限られた予算の中でため池や飼い葉を増やしたわたくしのこれまでの実績が、いかに商人たちの助けになっていたかを熱心に称賛した。


「我々は『必要なものを、必要な場所へ!』をモットーとする商会です。残念ながら、今は生活物資よりも戦乱のための軍需物資の運搬で飛躍いたしましたが、商売の信念は変わりません。戦乱が終結した暁には、国内の流通を支える南北街道の発展は絶対不可欠となります。我々はそれを見越して、確信を持って出資の手を挙げさせていただきました」


ハインツは、わたくしの目を真っ直ぐに見据えて言った。その瞳には、どうか信じてほしいという強い決意が伺えた。

通常、平民が貴族の顔をこれほど堂々と見つめることは不敬とされる。 しかし、彼はそれほど真剣だった。 だからこそ、わたくしは最後に一つだけ、彼に本質的な問いを投げかけた。


「なぜ、まだ戦乱が続いている『いま』、出資の声を上げてくださったのですか?」

「この不毛な争いは、あと僅かで終結すると踏んでいるからです。その時、どこよりも素早く国内全土へ物資を輸送できる体制を、あらかじめ調えておきたかったのです」


わたくしはそっと目を瞑った。

本当は、その答えを聞く前から出資を受け入れることは決めていたのだ。たとえ悪魔に魂を売ることになろうとも、この街道を発展させ、領地を守らなければならない。選り好みなどできる立場ではない。


だが、わたくしはただ、自分を納得させるための大義名分となる言葉が欲しかった。そして、彼は期待以上の言葉をくれた。

仮に、これが後に街ごと伯爵家を乗っ取るための罠であったとしても、今はその言葉に縋るほかなかった。


「出資を受け入れます。新たな街の建設を、共に成し遂げましょう」

わたくしは立ち上がり、彼に向かって右手を差し出した。貴族の淑女としてはあるまじき行為だが、今のわたくしには、対等なビジネスパートナーとしての信頼を示すために必要な儀式だと思えた。


ハインツは一瞬呆気に取られた表情を浮かべたが、慌てて自分の服でゴシゴシと手を擦り、顔を真っ赤にしながら手を差し出してきた。

どうか、わたくしに未来という名の夢を見せて頂戴。そんな祈りを込めて、彼と固く握手を交わした。




フラングレー商会からの潤沢な出資を受けてから二年。


街の建設は凄まじい勢いで進んでいった。 ハインツの宣言通り、フラングレー商会は人材でも物資でも、必要なものを瞬時に手配してみせた。 街の発展に伴い、大工、料理人、小売商人、宿屋の店主など、多種多様な人々が次々と流れ込み、活気に満ち溢れていく。


人口は爆発的に増え、流通は活発化し、税収は劇的に増加した。新しく人員を雇う余裕も生まれ、ようやく伯爵家として相応しい規模の組織を配置することができるようになった。

そして、長く続いた王位継承の争いも、ついに終結の時を迎えた。


長期化する戦乱に辟易した中央の貴族たちが、隣国の王妹を頼り、その実子を新たな王太子として迎えたのだ。 隣国の強大な兵力を借りて王城に入った新王は、すぐさま即位を宣言。騒乱の首謀者であった王妃、側妃、そして二人の王子は残らず捕らえられ、速やかに処刑された。


事実上、外国の大きな影響下に置かれることにはなったが、長い戦乱に疲れ果てていた国民からは盛大に歓迎され、新たな王の治世は穏やかに受け入れられた。

それと同時に、国中へ救援物資が送られるようになり、南北街道はかつてないほどの賑わいを見せ、莫大な利益が伯爵家に積み重なっていった。


王命を守り抜き、伯爵家を守り、街道を守り切った。アンナローズは自室で静かに涙を流しながら、自らの長い役目がようやく終わりを迎えたことを実感していた。


気づけば齢は30歳となり、貴族の独身子女としてはもう通用しない年齢だ。この10年間、社交界からも完

全に遠ざかっていたため、どこかの貴族の後添えになることも叶わないだろう。


王宮の混乱が落ち着けば、当主が職務を放棄しているハミルトン伯爵家は取り潰され、新たな代官か別の領主が任命されるに違いない。


ライアンも立派に育ち、あと数年で成人を迎える。彼は一緒に街を作り上げた確かな実績があるし、ハインツが「フラングレー商会で責任を持って雇う」と約束してくれている。


もうすぐ、すべてが片付く。すべてが片付くのだとしたら……。

わたくしはこれから、一体どこへ行き、どう生きれば良いのだろうか。



「アンナローズ様。こちらにいらっしゃいましたか」


執務室に入ってきたのは、フラングレー商会のハインツだった。 窓の外の活気ある街並みを眺めていたわたくしが振り返ると、彼はギョッとした表情を浮かべ、慌ててポケットを探って上質なハンカチを差し出してきた。


「涙を……拭いてください。一体、何があったのですか……?」

「涙?」


驚いて指で頬に触れると、確かに冷たいものが濡れそぼっている。ハインツはなぜか耳まで真っ赤にしながら、ハンカチを差し出したまま固まっている。


「ありがとう、ハインツ」


ハンカチを受け取ると、彼は緊張のあまり直立不動になってしまった。


「ふふっ、どうしたの? 商売の時はあんなに堂々としているのに」


涙を拭いながら尋ねると、彼はどこまでも真面目な顔つきで、静かに問いかけてきた。


「差し支えなければ……なぜ泣いておられたのか、教えていただけませんか?」


わたくしは少し呆気に取られながらも、くすりと微笑んだ。

これまで共に苦難を乗り越え、街を作り上げてきた彼になら、すべてを話しても良いと思えたのだ。先ほどまで胸を占めていた孤独な不安を、ありのままに言葉にした。話すことで、心の整理がつくことを期待して。


全てを話し終えると、ハインツは見たこともないほど真剣な眼差しになり、その場に深く膝を突いた。


「平民の身で、このようなことを申し上げるのが、どれほど不敬であるかは重々承知しております。ですが……もし、アンナローズ様にこれからの居場所がないとおっしゃるのなら、わ、私と結婚していただけないでしょうか」

「え……」


わたくしは言葉の意味をすぐには理解できず、ハインツの言葉を頭の中で何度も反芻した。

沈黙に耐えかねたのか、ハインツは必死に言葉を繋いだ。


「平民ではありますが、アンナローズ様に決して不自由な生活はさせないだけの甲斐性と財力は身につけたつもりです。大貴族の贅沢には及ばないかもしれませんが、豊かな暮らしをお約束します……貴族の地位を失わせてしまうことは、本当に申し訳ないのですが……俺は、貴方に、ただ隣で笑っていてほしいのです……!」


ハインツの突然の告白に、わたくしは激しく動揺した。

そして、自らの「貴族としての責務」について改めて考えを巡らせた。

王命を受け、伯爵家に嫁ぎ、領民のために身を粉にして働き、そして本来の目的であった南北街道の流通は見事に軌道に乗った。わたくしの伯爵代理としての役割はもう十分に全うされたはずだ。


平民になることに、何の未練もない。そして、何よりハインツの隣にいる未来は、わたくしにとっても決して嫌なものではなかった。


「わたくしの立場から、勝手に爵位を返上することはできません」


ハインツは絶望したように俯き、黙り込んでしまった。


「ですが……」


わたくしはゆっくりと屈み、彼の大きな手をそっと両手で包み込んだ。


「新たな王が、この地を治める正式な人間を定めれば、わたくしの貴族としての責務は完全に終わります」


ハインツが勢いよく顔を上げ、わたくしを見つめる。


「それまで、待っていてくださいますか?」


ハインツはわたくしの手を痛いほど握り返し、それを自身の額に当てながら「はい、待ちます。いつまでも、どこまでもお供します」と、大粒の涙を流しながら答えてくれた。



わたくしは、実家のお父様へ向けて一本の手紙をしたためた。


ーーーー


拝啓

新王御即位の賀事を経て、皆様におかれましても、ようやく平穏な日々を取り戻しつつあることと存じます。 さて、本日お便りいたしましたのは、わたくしが十二年間お預かりしてまいりましたハミルトン伯爵家、および南北街道の現状報告と、今後の体制に関する切なる具申でございます。

お父様より国王陛下、ならびに国政の重鎮の方々へお伝えいただきたく、不躾ながら書面にて失礼いたします。


一、領地財政および南北街道の現状について

フラングレー商会からの出資と官民一体となった中央街の建設により、かつて困窮していた伯爵家の財政は劇的に好転いたしました。現在、南北街道は王国第一の流通の要として完全に機能しており、今後の新体制下においても国家へ多大な経済的利益をもたらし続けることを確約いたします。わたくしに課せられた「王命たる街道保全の責務」は、ここに完全に果たされたものと認識しております。


二、現当主ジーラモン殿の処遇について

現当主ジーラモン殿は、婚姻の初夜より現在に至るまで十余年間、領地および政務を完全に放棄し、行方を眩ませております。これは貴族としての義務不履行であり、国家の要所たる本領を統治する器としては明確に不適格と言わざるを得ません。速やかに同殿より爵位を没収(または返上)させるのが妥当かと存じます。


三、婚姻関係の真実について

ジーラモン殿とは婚姻の夜以来、一度も寝室を共にしておらず、現在に至るまで完全な「白い結婚」でございます。ハミルトン伯爵家とクランク侯爵家の間には、血縁的な繋がりは一切存在いたしません。


四、令息ライアンの意向について

現在、わたくしのもとで政務を補佐しておりますジーラモン殿の令息ライアンですが、爵位没収に伴い、平民として生きる道を完全に受け入れております。


五、今後の管理体制およびわたくしの身処しについて

ハミルトン伯爵家という「枠組み」はその役目を終えました。つきましては、王家より新たな代官を派遣いただくか、あるいは街道管理に適した新たな貴族への委任を速やかに行っていただきたく存じます。 新たな統治体制への引き継ぎが完了いたしましたら、わたくしは貴族籍を離脱して平民となり、フラングレー商会のハインツ氏へと嫁ぐ所存です。


これまでクランク侯爵家の娘として育てていただいた恩義、そして王命という重責に応えるため、わたくしは持てる全ての力を尽くしてまいりました。 何卒、わたくしの最後の我儘をお聞き届けいただき、王家への奏上を進めていただけますよう、伏してお願い申し上げます。


ハミルトン伯爵代理 アンナローズ


ーーーー


お父様からの返信は「少し待て」という短いもので、それ以降、パタリと音沙汰がなくなってしまった。 外からは見えない王宮の戦後処理が、未だに混乱を極めているのかもしれない。


中央が動かないのであれば、今できることを自分で進めるまでだ。

これこそが、ハミルトン家でわたくしが学んだ最大の処世術だった。


わたくしとライアンの爵位放棄の手続き、ハインツとの新しい生活のための準備、そして将来を見据えたライアンとハインツの養子縁組の手続き。すべての書類を調え終え、さらに一年が過ぎた。


王宮からの公的な連絡は未だ届かなかったが、驚いたことに、あのジーラモン様から一通の手紙が届いた。

そこには、深い謝罪と感謝の言葉が綴られていた。



戦乱によって彼が身を寄せていた男爵家も困窮を極め、食べるものにも困る生活となり、やむを得ずライアンを勝手に預けるような真似をしてしまったこと。 そして、その窮地を救ってくれたのは、皮肉にもアンナローズが発展させた南北街道のおかげで物資が流通し、命を繋ぎ止められたこと。

自分が身勝手に放棄した街道が、多くの人々を救うのを目の当たりにしてようやく自らの愚かさに気づき、合わせる顔もないため手紙にて謝罪する、という内容だった。



手紙をライアンに見せたところ、彼は静かに微笑んだ。


「父は悪人ではありませんでしたが、人の上に立つ統治者としてはあまりに無能でした。義母上、勝手を申し上げますが……義母上がこの領地を統治してくださって、本当に良かったです」


正直なところ、まともに顔を合わせたこともなく、歳月によって顔もはっきりとは思い出せない。

それでも、彼は貴族としてではなく、平民として愛する家族を守り抜いた男ではあったのだ。 だから、わたくしも彼を「元夫」としてではなく、「救われた一人の領民」からの手紙として受け取ることにした。そして、そっと手紙を棚の奥へ仕舞い込んだ。


それから数日後、ついに王宮から正式な通達が届き、ハミルトン伯爵家のお取り潰しと、わたくしおよびライアンの爵位放棄が認められた。


新たな代官の氏名は記されていなかったが、わたくしとハインツは、爵位放棄の了承が届いたその日のうちに、南北街道の中央街にある教会でささやかな結婚式を挙げた。

わたくしとハインツ、そして立派に成長したライアンの三人だけの式だったが、かつて高位貴族の家に嫁いだ時の豪華な式よりも、何倍も温かく、幸福に満ちた結婚式となった。


式を終えたわたくし達は伯爵邸を後にし、中央街に新しく購入した自宅へと生活の拠点を移した。ライアンは「フラングレー商会の本部で、本格的に商人としての修行を積んでくる」と力強く宣言し、旅立っていった。

こうして、わたくしは人生で初めて、本当の意味での「妻」となることができたのだった。



中央街の新しい自宅で、ハインツの妻として慎ましくも幸福な新婚生活を始めて数ヶ月が経った。


代官が就任したため政務から完全に退こうとしたのだが、その代官から「引き継ぎが不十分なので、もう少しだけ政務を手伝ってほしい」と頭を下げられ、周囲の商人たちからも「あんたが完全に抜けると不安で仕方がない」と懇願され、結局、週に数日は政務の手伝いを続けていた。


そうして伯爵邸で仕事をし、夕方には中央街の自宅へと戻る充実した生活を送っていたある日、実家のお父様たちがこちらの自宅を訪問するという先触れが届いた。


実に10年ぶりの再会となる。 ハインツは「侯爵閣下が直々にお見えになる」と知った瞬間からガチガチに身体を硬直させてしまい、わたくしは「あなた、一体誰の夫になったのか、今更忘れてしまったの?」と笑ってしまった。


自宅に両親を迎えると、お母様は挨拶もそこそこに、わたくしに激しく抱きついてこられた。

「アンナローズ……本当に、本当に大変な思いをさせてしまって……」


涙を流しながら何度も謝罪するお母様に、わたくしは苦笑交じりに応じた。


「お母様、わたくしの愛する家族を紹介させてくださいませ」

「ごめんなさいね、みっともない姿をお見せして……」


お母様はハンカチで涙を拭いながら微笑み、お父様はその肩を優しく抱き寄せた。


両親が改めて視線をわたくし達へ向けると、直立不動のハインツが深々と頭を下げた。


「ハインツと申します。フラングレー商会の第二商隊の番頭を務めております。こ、この度は、誠に不敬ながらも、お嬢様と婚姻を結ばせていただきました。事前に直接のご挨拶にも伺わず、誠に不義理をいたしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます!」


あまりにも仰々しいハインツの挨拶に、両親は一瞬目を丸くしたが、すぐに破顔した。


「そう身構える必要はない。娘が自らの意志で選んだ伴侶だ。無事に結ばれたことを嬉しく思うよ」


お父様はそう言って、ハインツとの結婚に異議を唱えることなく、温かく受け入れてくれた。

客間に二人を案内し、これまでの経緯をお父様が語り始めた。


「お前から手紙が届いた時、王宮はまだ戦後の大混乱の最中だったのだ。王子たちに従った多くの貴族が処断され、爵位や領地の没収、再配置の処理に追われていた。

戦乱に巻き込まれず平穏だったハミルトン領の処理はどうしても後回しにされてしまったのだよ。そんな中、伯爵家のお取り潰し決定の通知を出した途端、お前が即座に爵位を返上し、平民となって商人である彼と結婚してしまったものだから、王家は大騒ぎになったのだ」


「ハミルトン伯爵家がお取り潰しとなったのであれば、わたくしとライアンの貴族籍も自動的に抹消されるはずです。手続き上、特に問題はないと認識しておりますが……」


「普通の貴族ならそうだが、お前にはあまりに巨大な実績がある。あの凄惨な内乱の中で街道を完璧に維持し、流通を止めずに国民の生活を守り抜いた。その功績は計り知れないのだよ」


「正当にご評価いただき、恐悦至極に存じます」


「待ちなさい、話を勝手に終わらせるな。最後まで聞きなさい」


お父様は苦笑しながら続けた。


「ハミルトン伯爵家の取り潰し自体は決定事項だったが、お前の功績に報いるための『褒章』をどうすべきか、上層部で激しい議論が交わされていたのだ。

私が言うのも何だが、わずか17歳という若さで嫁ぎ、夫が政務を放棄して失踪したというのに、逃げ出すこともなく当主代理として街道を維持し続けた。それだけでも大功績なのに、フラングレー商会と手を組んで街道をさらに発展させ、物流を活性化させた。


戦乱収束後、お前の街道とフラングレー商会の物資に命を救われた領地は、国中に数え切れないほど存在するのだよ。


普通であれば、お前自身が新しく叙爵されてもおかしくない功績だ。しかし、お前の立場はあくまで『ハミルトン伯爵家の妻』であり『伯爵代理』。しかも、そのハミルトン家は取り潰しが決まっている。全員がどう処遇すべきか頭を抱えていた。

そこへ来て、お前は平民になって即座に結婚してしまっただろう? 国王陛下も思わず頭を抱えられたよ」


「まあ、そんな大ごとになっていたのですね……。もしや、国王陛下の不興を買ってしまったのではございませんか?」


わたくしが少し不安になって尋ねると、お父様は愉快そうに笑った。


「いや、気分を害されるどころか、陛下は大笑いしていらっしゃったよ。『流石は、あの南北街道を守護する女傑。即断即決の行動力が実に素晴らしい』とな」


お父様は懐から一通の手紙を取り出した。

それは、王家の紋章が刻印された金糸の装飾が施された、極めて豪奢な封筒に入っていた。


「そこで、お前たち夫婦に正式な褒美が与えられることとなった。翌月の国王生誕祭において、今回の争乱に関する大規模な論功行賞が行われる。夫婦揃って出席しなさい」

「おれ……いえ、私もですか!?」


ハインツが飛び上がらんばかりに驚く。


「そうだ。当日は、フラングレー商会の会頭である君のお祖父様も出席される」

「平民である私たちが、国王陛下の生誕祭に……?」

「そうだ。君のお祖父様は、これまでの多大な物流の功績を認められ、新たに『子爵』に叙せられることが決定している。したがって、君も貴族の一員として堂々と参加しなさい」


こうして、わたくし達夫婦は国王陛下の生誕祭のため、再び王城の地を踏むこととなった。



十数年ぶりに足を踏み入れた王城の大ホールで、わたくしは深い感慨に浸っていた。

かつて、貴族子女の一員としてお披露目されたのも、まさにこのホールだった。


あの頃のわたくしは、これからこの絢爛豪華な世界で、立派な貴婦人として生きていく覚悟と期待に胸を膨らませ、このホールでダンスを踊り、先王陛下と王妃殿下にご挨拶をした。


しかし、現実は想像を絶するほど過酷で容赦がなく、少女の頃の夢は脆くも崩れ去った。

だけど、今、隣で緊張のあまりガチガチになっているハインツの姿を横目で眺め確信を持てた。

あの頃の夢は叶わなかったけれど、わたくしはそれよりも遥かに素晴らしい宝物を手に入れたのだ、と。 誰かのためにただ耐え忍ぶだけの妻ではなく、夫と共に支え合い、対等に歩む妻へと変わることができたのだから。


やがて、新たな国王陛下が威風堂々と登場し、論功行賞の厳かな儀式が始まった。


「――クランク侯爵家次女、アンナローズ。ならびにフラングレー商会。両名は先の未曾有の争乱の中、徹底して中立を貫き、南北街道における王国の物流網を完全に死守した。


さらに、中央街の設立により、戦後の物流活性化を見事に実現せしめた。


その卓越した統治・管理の手腕は、国家に対する多大なる功績として永久に認められるものである。


本来ならば、当主の責務を果たすべき者が失踪し、領主不在で瓦解するはずであった地を、領主代理として守り抜き、さらに発展させたアンナローズの功績は極めて大きい。


よって、国王の名においてここに命ずる。 フラングレー商会会頭を『子爵』に任ずる。

今後も王家の物流の要として国を支えよ。


そして――クランク侯爵家アンナローズ。そなたの不屈の功績を称え、新たに『女伯爵』の爵位を授与し、旧ハミルトン領の統治を正式に委ねる。


さらに、フラングレー子爵の嫡孫たるハインツとの婚姻を、王の名において正式に承認する!」


一度はすべてに絶望した。

一度はすべてを諦め、自ら捨て去った。

だけど、絶望の中で一歩ずつ、己の誇りを胸に歩み続けた結果が、今、最高の形で報われた。


わたくし達が床に膝を突き、深々と国王陛下に頭を下げると、会場を埋め尽くす貴族たちから、地鳴りのような盛大な拍手が沸き起こった。


貴族の世界に戻ることで、これからさらなる苦労や困難が待ち受けているかもしれない。

貴族の空気に滅法弱いハインツは、緊張のあまり本当に倒れてしまうかもしれない。

けれど、わたくしたちが泥を啜りながら必死に歩んできた道の結末が、この未来なのだとしたら、わたくしたちは何一つ恐れることなく、堂々とこの道を歩んでいける。


わたくしの、ハインツの、そして――わたくしの愛おしいお腹の中に宿った、新たな小さな生命とともに。


おしまい


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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― 新着の感想 ―
国王になりたいために国を傾けさせた者達を無事に排除出来て何よりです。 元夫もどうせ王命に背くなら婚姻自体も背けばいいのに。
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