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壮大な世界の物語~絶望の果てで、少年は勇者になる~  作者: おう
共和国遠征編

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第二章第十三話『馬車の中』



 「常世、会話は?」

 「問題ありません。会話の一切が外に漏れないように、高度な魔術が施されているようです」


 (ふむ、配慮されているのだな)


 案内された馬車には運転手しかいないこと、そして圧倒的な防音性。それらを前にしてレオンハルトはそんな感想を抱いた。


 「お前から見た石動恵、出雲はどうたった?」

 「まだ『三人衆』の一人しか見ていないので、決めつけるのには早いと思いますが、敵意はありません。魔力感知で確認しました」

 「なに?」


 魔力感知という言葉にレオンハルトは眉をひそめた。

 

 魔力感知は文字通り、『魔力』を感知する技術。それが敵意がないことを確認するのとどう繋がるのか。


 「俺の魔力感知は相手の感情まで分かります」


 自身の機能を説明するように、常世は淡々と言った。


 「流石は刀剣流の『剣王』と言うべき。凄まじいな。剣士相手なら敵なしではないのか?」


 冗談交じり言うが、常世はバカ真面目に答える。


 「他の流派の『峻剣流』、『列剣流』の剣王ならどうなるか分かりませんし、ましてや最強の剣士である『剣帝』相手なら劣勢になるでしょう」


 (負ける、とは言わんか)


 その言葉には強がりや噓なんて一切ない、真の言葉だった。改めて自分を護衛する男の強さを実感した。

 この男は有事の際、刀剣流の頂点としての力をいかんなく発揮するのだ。護衛としてこれ以上に心強いことはない。


 「ですが、力だけが全てではありません。魔力感知という点では俺より優れたものがこの部隊内にいます」


 「……何? この部隊内にお前以上の感知能力を持つ者がいるというのか?」

 

 レオンハルトは驚きを隠せなかった。剣王たる常世をして「自分より優れている」と言わしめる存在。近衛騎士団やギルドの精鋭が揃っているとはいえ、そんな逸材がいたかと思案する。


 常世の視線は、無意識のうちに後続の馬車……ユダたちが乗っている方へと向けられていた。


 「よりによってあの若い三人の一人か」


 レオンハルトの呟きに常世は静かにうなづく。


 「あの三人が載っている馬車に、『三人衆』の一人が相席しています」

 「なに?」


 レオンハルトの表情は怪訝なものになった。

 不意打ちを受けた、というべきか。レオンハルトは出雲の温厚な態度に僅かに警戒心を緩めていた。

 それが仇となったのか。


 十分に頭は回ったはずだ。もし何かを狙うなら、若いものをと。そしてそれに該当するのがこの部隊内にいることも。


 「外務大臣。何か勘違いされているようですか、ユダ君達のところにいる三人衆にも敵意はありません。三人と有効的に話しています」


 「……友好的に、だと?」


 レオンハルトは拍子抜けしたように、あるいは自身の深読みを恥じるように呟いた。


 「ええ。怒りも、殺意も、あるいは何かを企んでいるような澱みもありません。感じ取れるのは、春の嵐のような豪快さと、若者たちに対する純粋な興味だけです。……おそらく、あの男は本当に、ただ客人を迎えに来たのでしょう。将軍の制止を振り切ってまで」


 常世のその言葉を聞き、レオンハルトはようやく強張らせていた肩の力を抜いた。

 外交の世界に身を置きすぎたゆえの弊害か。出雲の「裏」ばかりを探ろうとして、彼らが差し出した直球の「誠意」を、毒入りの変化球だと決めつけていた。


 「……そうか。ならば、私がお前以上にあの少年たちを過小評価していたということだな。あるいは、出雲という国の『懐の深さ』を」


 レオンハルトは自嘲気味に笑い、再び窓の外へ視線をやった。


 「帝国との血生臭い外交のせいで、敏感になっていたかもしれぬな」


 思い出すのは、『剣帝』と『魔帝』に囲まれて外交をした時のこと。流石に最強の剣士と魔術師に目をつけながらする外交は生きた心地がしなかった。


 その点、出雲とはやりやすい。


 「出雲が懐の深さを見せるのなら、こちらも答えようではないか」


 レオンハルトは深みのある笑みを浮かべるのだった。



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