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壮大な世界の物語~絶望の果てで、少年は勇者になる~  作者: おう
アアル王国編

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第一章第二十四話『内通者』

 


 ──醜悪な雰囲気がそこにはあった

 

 その部屋には陽の光が通らず、醜悪な匂いが蔓延していた。

 外の音がほとんど聞こえず、聞こえるのは不定的に滴る水滴な音だけだ。その全てがこの部屋にいるものを不快にさせた。否、意図的に不快にさせているのだ、『ギルドマスター』アルデバランの手によって。

 

 「それで情報は吐いたのか?」

 

 少し居ただけで気が狂いそうなこの部屋で、透き通った声を発したのはアルデバランだ。その目線の先には桑靴を口に挟まれながら椅子に固定させられている男がいる。

 

 「いえ、いくら拷問しても一切情報を吐きません」

 

 先程まで持っていた拷問具を手から離してアルデバランの質問にそう応じたのは、紫色の髪の男、『特務部隊隊長』、サミュエル・ディースカだ。

 彼はユダたち『第一部隊』が男を確保をしてからユダが翌日に目を覚ますまで、アアル王国にいる内通者を見つけるため、それとの接触経験があるだろう男の尋問を行なっている。

 乱雑に置かれた無数の拷問具と、男のげっそりとした体が拷問の過酷さをひしひしと表している。

 過酷な拷問を受けてもなお、一切の情報を吐かない男には犯罪者ながら天晴と言わざるがおえなかった。

 仲間の情報を敵に渡すまいと、拷問に耐える覚悟を見せた人物をサミュエルは沢山見てきた。しかしその多くは数時間もせずに情報を吐いた。それ故にこの男は凄かった。

 

 「ならどうする?……って言ってもお前の中にはいい方法が思いついているんだろうが」

 

 事実、サミュエルの頭には目の前の男に情報を吐かせる方法を思いついていたが、それを実行するのには躊躇いがあった。

 

 「ええ。「痛み」を与えて駄目なら次は、「甘さ」を与えます」


 「痛み」ではなく「甘さ」、普通の犯罪者に対してならばサミュエルもこの方法を速やかに実行していただろう。しかし目の前のディアブロは、あの大規模テロを『大罪教』と結託して実行した極悪人だ。「甘さ」──、恩赦や減罪なんて与えたくなかった。


「別にこいつ自身に恩赦を与えなくてもいい、与えるならこいつの組織の部下だ。こいつは絶対に処刑台に送る」

 

 サミュエルと同じ思いをアルデバランも持っているようで、思いを久んで最善策を提案する。


 「なら、その方法で行きましょう」

 

 そう言い、椅子に縛り付けられている男の耳栓と桑靴を外す。

 

 「……なんだ?拷問はもう終わりか……?」

 

 耳と口が解放されると男はどこか挑発的にそう尋ねる。そんな姿を見たサミュエルは眉をひそめて──、

 

 「ああ、そうだ。いくら痛みを与えても貴様は一切情報を吐かないからな。そこで一つ提案がある」

 

 「へぇ、聞いてやろうじゃないか?」

 

 椅子に縛り付けられて視界を閉ざされてなお男は、下手に回らずに上から目線で言葉を口にする。

 

 「お前らに接触したアアル王室内の内通者の名をこちら側に教えてくれたら、減罪してくれるように王国に頼みこんでやる」

 「俺が自分一人が助かるために情報を渡すとでも?」

 「減刑してくれるように頼むのはお前じゃない。お前以外の『アアルの目』の構成員全員だ」

 「──つ」

 

 一瞬その双眸に戸惑いが宿る。サミュエルが示した条件は、男にとって非常に魅力的なものだ。テロ組織で度し難い悪だとしても、『仲間』は大切な存在だ。それの減刑が行われるのならば……

 その思考になるようにアルデバランは仕込んだ。ディアブロが仲間を家族同然の扱いをしていたことは知っていたからだ。

 

 「分かった。その条件を飲んで、内通者の情報をそちら側に渡そう」

 

 否応なく条件を男は飲んだ。

 

 「なら、交渉成立だ。教えてもらおうか」

 「あぁ、内通者は…オットー・トートス」

 「──」

 

 内通者の情報を聞いたサミュエルとアルデバラン、その両者が意外な内通者の招待に驚く。

 しかし何故かと、考えるよりも早くアルデバランはこの拷問部屋を後にしようとする。

 「おい! 待て!」


 ディアブロの声にアルデバランは怪訝そうな顔をしながら振り向き、苛立ちを込めた声で「何だ!」と返す。


 「何で剣王何てとんでもない戦力を民間組織が持ってんだ?」

 「それは俺の人徳だ」


 重要なことをアルデバランをはぐらかして言うと、ディアブロは眉をひそめながら、


 「違うな。多分弱みを握るのが上手いだけだろう。アンタが」


 妙に確信めいたことを言ったディアブロに一瞬、驚愕の目を向けるとアルデバランは止まっていた足を動かした。

 『アアル王国137第国王』セクメト・アアルに、その意外な内通者の情報を一刻も早く教えるために。



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