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壮大な世界の物語~絶望の果てで、少年は勇者になる~  作者: おう
アアル王国編

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第一章第十六話『捕縛作戦③』

 


 「大丈夫か!?」


 駆けつけた常世の第一声は心配の声だった。

 結界に封じ込められたユダたちが動揺する中、同じく結界に封じ込められた常世達本隊がが合流を果たした。


 「ええ、こっちは大丈夫です」

 

 希望の少年であるユダがそう頷いたので、常世は安堵した。

 アルデバランにユダだけは絶対に守れと、そう言われたからだけではない。そもそも常世にとって第一部隊の隊員の命の重さは等しく同じで、ユダがだからといって特別扱いをするつもりはない。

 しかし隊長の常世としてではなく、◼◼◼としてはその命は非常に大切だ。


 「常世隊長ちゃん!!」


 幼い声そして、地面を軽快に蹴り上げる常音が世の耳に入ってきた。

 それに釣られて声の方向を向いた。


 「副隊長。負傷者は?」

 「大丈夫だよ! みんな軽傷!!」


 常世のことを敬称と親愛が入り乱れた名前で読んできた、第一部隊副隊長のマナ・イハート。

 彼女の報告に常世は愁眉を開いた。状況は悪い方向に向かっているが、隊員達が無事ならばまだ挽回の機会がある。

 

 「っ!!」

 

 周りを見渡せばフェリスとアリス、そしてユダが、隊員達を閉じ込める結界──薄い透明な壁に向かって剣を振っていた。

 結界を内部──内側から壊そうとしているのだろう。

 しかしそれは──


 「……あまり現実的ではないだろう」

 

 一心不乱に剣術で結界を壊そうとしている三人の元に寄ると、静かに常世は呟いた。


 「「えっ!! 常世隊長!?」」


 まるで幽霊を見たと言わんばかりに、三人は驚愕して仰け反った。

 一体俺は何なんだと、三人の反応に不思議さを覚えた常世。そういえばいつもこんな反応をされていることを思い出す。


 (無意識の内に気配を遮断していたか……)

 

 心の中で一つ一つ思い当たる節を羅列すると、一つの可能性を見つけた。気づかない内に気配を遮断していたのなら、幽霊を見たかのように驚くのも無理ないだろう常世は納得した。


 「どうして現実的じゃないんですか……?」

 

 常世が考えに少し耽っていた所、ユダが懐疑的な目を向けてきた。

 常世が答えるのは簡単だが、後進の育成のためにも直接答えることは避けたい。だから双眸を緑髪の少年のアルスに向ける。

 

 「アルス君。君は分かるよな」

 「ええ、勿論。結界魔術は内部に対しての強度は外部よりも高いんですよね?」


 アルス君は優秀だなと、常世は感心した。 

 

 「八方塞がりじゃないか」

 「いや、そんなことない。結界には結界を維持するための媒体がある。だからそれを壊したら結界は維持できなくなり崩壊する」

 「だったら!」

 

 アルスの話を聞いたユダは、焦燥に駆られた顔で結界内にある媒体を探し始めようとしたが、直ぐに気づいた。


 「……既に捜索は始めている。しかしこの人と物が入り乱れた場所では、どんな形をしているかも分からない媒体を探すの可能だが、相当時間がかかるだろう。」


 常世は歯痒い思いを噛み締めながら、今第一部隊達がいる状況を説明した。

 魔力感知で探そうにしても、ここには二十人あまり隊員がいる。魔力感知で媒体を探そうにも、人の方に魔力感知が吸われて探し物はできない。

 かと言って目視で探そうにも、 あまりにも情報は少ない。


 故にこの結界に抜け出すには媒体が結界を維持するための魔力を使い果たすまでの時間を待つか、常世達がいる内部から結界の破壊を目指すかの二通りである。どちらにしろ時間がかかる。


 だからこそ常世は。

 

 「ユダ君、君の能力を使ってここから脱出して構成員たちの足止めを頼む」

 

 ユダへ無茶だと承知しながら頼み事をするのだった。




 ── ── ──




 「……え?」


 (どうして俺が……)

 

 ユダがあっけからん様子にとられる。

 結界に閉じ込められて未動きが取れないユダたち、打開策として常世はユダの能力を提案した。

 

 「ユダ君だけが頼りだ。頼む」

 

 常世が深々と頭を下げた。

 常世が頭を下げた状況にユダはあたふたしてしまう。

 自分はどうすればいいのかと、悩んでいると一つの声が割って入った。


 「待ってください!! そんなの危険です!!」


 アルスがユダ一人では危険だと、常世に苦言を呈した。

 その自分を大切に思ってくれている気持ちは、素直に嬉しかった。しかし他の誰かが代案を出すことができなかった。

 

 (だからこそ俺がするしかない)

 

 「アルスありがとう。けど俺がやるしかないんだ」

 「け、けど!」

 「アルス!!」 


 まだ何か良い方法があると言いたそうな顔をするアルス。そんな彼に沈黙していたフェリスが声をかけた。


 「ユダが決めたことだ。俺達は何もいえねぇよ」

 「心配かけてごめん二人とも」

 「友達のことなんだ。心配になるに決まってんだろ。……けどお前の決意に誰もが口出しできない。だからこそ……!!」


 フェリスは声を張り上げた。

 そして静かに拳をユダの胸にぶつけた。


 「絶対に無事でいろよ! そうしないとこの拳を全力でお前にぶつけるからな!!」

 「あぁ頼むよ。それじゃぁ──」

 

  正直、自信はない。

 しかしユダがここで何とかしなければ、犯罪組織『アアルの目』がこのアアル王国の地を歩くことになる。

 負った罪を償わせるためにも、ユダがここでやらなければならない。そう考えて深呼吸をして一泊置くと、能力を使用するために魔力に集中する。

 体内を絶えず巡回する魔力。それを制御して一点に集中させる。

 

 「『転移』!」


 一点に集中させた魔力を消費させて、『転移』の能力を発動する。

 

 「いけた……?」


 一気に魔力を消費した時に現れる倦怠感が、能力を無事に発動できたことを教えてくれていた。しかし結界外に出ることができたかは分からない、そう思って周りを見渡す。


 「アルスにフェリス。そして常世隊長……」


 後ろを振り返ると結界に覆われた拠点があった。そこに見えるとは友に尊敬する師。

 結界には音を遮断する効果があったのか、二人が何かを叫んでいるが何も聞こえない。


 「頑張るから安心してくれ」


 言葉は届かない。だからこそユダは笑って、友を安心させようとした。


 (行くか)


 余韻に浸ることなくユダは地面を蹴り上げて、森林地帯を走り出した。



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