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壮大な世界の物語~絶望の果てで、少年は勇者になる~  作者: おう
アアル王国編

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第一章第十四話『捕縛作戦①』



 ユダとフェリスそしてアルスの三馬鹿含めた『第一部隊』の一集団は現在、『アアル王国』王都の郊外の森に来ていた。

 鬱蒼と茂る草木を踏む音すら出さないほどの静けさで、目標である犯罪組織『アアルの目』の本拠地に向かっている訳だが、ユダは大きく思案していた。


 『アアルの目』、ユダの一ヶ月の訓練中にアルスからその名を聞いた。諸悪の根源『大罪教』と結託して今回の大規模テロを起こしただけでなく、その後王都の復興を邪魔をしてきた組織──そう聞いて、ユダは一泡吹かせたいと思った。


 『全員止まれ』


 そんなことをユダが考えていると、一番前で先導していた常世が立ち止まって、ハンドサインを使ってそう合図をかけた。

 足を止めて周りを少し見渡してようやく気づく。もう敵の本拠地の近くにいることに。

 覚悟が決まらないまま目標の地──『アアルの目』拠点に着いたユダをよそに、常世は続けざまにユダたち部隊員にハンドサインを指示を下す。


 『半分は正面から、もう半分は裏手に回れ』


 それを見たユダはコクリと、首を静かに縦に傾けた。そしてユダを含んだ10人の隊員が隊列から離れて、別働隊として移動を始める。

 隠密行動である。

 足音すら立てず静かに移動し、魔力の痕跡を残さないように一切の魔力による身体強化を切っての行動だ。


 (冷静に……)


 自分に言い聞かせながら、ユダは別働隊の一番後ろで前の隊員に横着する。

 心臓がバクバクと、これ以上ない程に脈打っている。


 (罠を避けて移動している。けど……)


 拠点の周囲には簡易的であれど罠が仕掛けられていた。それも第三部隊による調査で事前に把握済みであるが。

 そのかいもあって、別働隊は各地に張り巡らされた罠にかかることなく移動ができている。この上なく順調と言っていいだろう。


 (どうしてもこんなにも全身が警戒を鳴らしているんだ)


 しかし今のユダの体は、痛みという警戒の鐘を鳴らしていた。ユダのこの意味の分からない感じで部隊を止めるわけにはいかない。これがただの杞憂であることを祈りながら行動を続けた。




 ── ── ──



 

 茂みの中にそれぞれ身を隠している第一部隊。

 ユダたち別働隊が目標地点に移動できたことを、茂みの中で視界が遮られている常世は魔力感知によって確認した。


 (こちらも動くか......)


 準備は完了で、常世が指示を下すだけの状況である。

 そんな中常世は、手癖のように腰にかけている魔剣に触れた。

 形状はアアル王国でよく見られるものとは違う、『刀』と呼ばれるものである。常世の生まれ故郷である出雲における、伝統的な武器だ。

 触れた瞬間、常世は精神的なダメージを受けて相貌をほんの少しの間歪めた。迂闊に触れたらこうなることは分かっていた。しかし常世は作戦の直前にはいつもこの行為をしている。

 この行為が魔剣の重みを教えてくれるからだ。


 (どうか、これを抜かせないでくれ)

 

 有事の際、他の隊員たちを守るためにこれを抜くのには躊躇いはない。しかしできることなら抜きたくなどない、これを抜くということは自分の人間性を失うことを意味するのだから。


 「突撃を開始する。準備はいいな?」


 常世がハンドサインをして、身を隠し隊員たちに号令を伝える。

 それに全員が首を縦に振って頷く様子を双眸で捉えると、常世は息を大きく吸いながら立ち上がった。 

 勢いのまま、常世は喉を震わせた。


 「全員! 突撃!!」


 声を張り上げて叫び、正面突破を図る。


 「敵襲!」


 『アアルの目』の見張り番たちも声を張り上げて叫び、盤面は戦闘態勢に一気に移る。

 アアルの目の構成員達は常世たちに対抗せんと武器を取った。

 見張りが声を荒らげて叫び、武器を取って応酬を始める。しかし流石は少数精鋭で形成される『ギルド』というべきか、その応酬は常世たちの一方的な蹂躙となる。


 「おらおら!!」

 「フェリス! 前に出すぎだ!!」


 常世が最前線で戦う中、視界にユダと仲が良いフェリスとアルスの姿が写った。彼らも常世が期待する隊員の一人である。

 フェリスやアルスの実力も確かなもので、構成員たちをなぎ倒していく。フェリスは圧倒的な力で、アルスは丁寧に無力化しながらだ。こんなところにも二人の性格が出ている


 (万が一は起きないな……)


 彼らなら大丈夫だと、常世は確信した。

 

 「隙あり!!」

 

 よそ見をしていた常世の背後。そこを狙って一人の剣士が勢い良く常世に襲いかかる。


 「甘い!」

 

 その姿勢。剣士としての誉を捨てて、油断しているところは評価に値した。しかし如何せん、常世と実力の差があった。

 首筋に迫る剣筋、それをまるで舞踏のかのように軽はずみに受け流し、そのままの動作で剣塚で頭を叩いた。

 

 「……動くか」

 

 「撤退だ!!」

 

 残存勢力は後退を始めた。

 それはあまりにも遅い判断であった。応酬に出ていた構成員たちの半分以上が戦闘不能状態であった。

 

(アアルの目の長、ディアブロはいなかった。恐らく建物内にいる……)

 

 本作戦における懸念点がディアブロのことである。

 情報通りならディアブロは列剣流の上級剣士だ。常世なら遅れを取ることなんてないが、他の隊員は大きな障壁だ。

 

 (奴らは何がしたい? 最善手としては全勢力を持って、裏手から逃亡を図ることだ。なのに奴らはいたづらに犠牲者を出して本拠地内に俺達をおびき出している)


 まるで俺達を誘いこんで閉じ込めようとしているみたいだと、常世がそう思った瞬間、脳裏に電流が迸り全てを理解した。


 (……全く、ギルドマスター殿は悪い御方だ。あなたの思惑には乗らない。有事の際はユダ君、隊員の命を優先しますよ)


 現実世界にして0.1秒の思考を終えた常世は、それを見て深追いせず、声を張り上げて伝令を伝える。

 

 「全員集まれ! 焦る必要はない!」


 常世は焦って個々で追跡するよりも、固まって行動することを優先する旨の伝令。それに呼応してバラバラになっていた隊員達が常世のもとに集まる。

 そのままの要領で常世は全員を見回した。隊員達が大きな負傷がないことに安心し、安堵の息をついた。


 「今より追跡を開始する! 罠が仕掛けられている可能性を考慮し、魔力感知を怠るな!」

 「「了解です!!」」

 「それでは行くぞ!!」 


 拠点へと逃げていくアアルの目の構成員たちを双眸から捉えながら、第一部隊の本体は走り出した。



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