プチン
というわけで、落ち着いた。
具体的に何をしたかというと、Bさんとお喋りをした。
Bさんの生活、奥さんとの出会い、育児の辛さ、冒険者になりたいという夢。
「俺のことについてはだいぶ話したな。
だがD、おまえさんについては俺はまだ何もわかっちゃいない、教えてくれよ。」
「俺ですか...。俺は、碌な奴じゃないですよ。ただ毎日を平穏にやりたいことをやるだけの夢も希望もない生き物ですよ?」
なんて、他愛もない話をしていると、ギギギギと鈍いドアを開ける音が聞こえてきた。
コツコツと硬い靴で歩く音が反響されて耳に入ってくる。
そして、その音は俺の牢屋の前で止まった。
「囚人D随分と囚人Bと仲良くお喋りをしていたじゃないか?
中は深まったか?」
「まぁまぁだ。」
「そうか。お前に伝えなければならないことがある。」
「...、なんだ?」
「二つある。一つ目はお前の家、森の境界近くにあった小屋のことだが、あそこは森の守りを固めるべく、巨大な魔法具を置くため更地となった。
そして二つ目、お前の家に通っていた?女のエルフもお前と同罪だ。処刑日は今日の夜。」
「は?」
突然すぎて頭がおかしくなってしまった。
なんて言った?
「あぁ、お前が望むなら女と一緒に処刑にしても構わんぞ?
そうするか、そっちの方が手間が省けて楽だ。」
「おいおい、ちょっと待てよ!」
「囚人Bは黙ってろ、これは囚人Dの話だ。」
状況を整理すると、謎の罪を着せられ、なぜか家が潰され、なぜかフェルさんも巻き込まれた。
いや、ちょっと待てよ?家が潰されたってことは、俺の大事なコレクション達はどこ行った?
「ちょっと待ってくれ。家に合った本とか機械はどうした?」
「ん?あぁ、金になりそうなものだけ取って売り払ったぞ。まぁまぁの金額になった。」
「あ”?」
それが引き金になったのか、もっと前からそうなっていたのかは分からないが、制御が利かなくなってきた。
「なんだ?大切な物でもあったか?」
「お前らエルフはなんなんだ?一昔前のエルフはどこ行ったんだ?」
「上の連中は物事の考え方が古い、新世代の未来は若者が作るべきなんだ。
今頃、お前たちと同じように牢獄にでも入ってるんじゃないか?ハハハ!」
「よし、分かった。お前は殺す。何がなんでもだ。全く先々代は何をしているんだ。」
「?、牢に入ってるお前に何ができるんってだぁ?寝言は寝て言えよ。」
クソエルフ1はそのまま去っていった。
残ったのは気まずい空気だけ。
「Bさん。」
「.........、なんだ?」
「俺、この国矯正します。」
そう言って、ちんけな手枷を千切り、錆びついた鉄の棒をねじり曲げる。
その音にBさんは驚いて腰を抜かしていた。
「おまえさん、随分と力強いなぁ...!」
「俺、急用できたんで、ちょっと行ってきます。騒がしくなったら逃げてくださいね。」
「気ぃつけてな。」
だいぶ無茶苦茶なやり方で牢をぶち壊し、久しぶりに”力”を使うことにした。
派手に脱獄したので、警備に見つかり、警報を鳴らされたが構うもんか。
「おい!何をしている!?」
「抵抗するな!戻れ!!」
見たことのない杖?を担いでいるエルフが数名現れた。
「この国は腐っている!無実の者を有罪に仕立て上げ、大虐殺でもしようと言うのか!?」
「お前ら人間がしてきたことを忘れるな!」
「我々の友に何をした!目の前で攫われた、あの絶望と後悔を!!」
「そもそも俺は、ずっと森で暮らしてたいだけなんだ!元はと言えばお前らエルフどもがこの森に入ってきたのが!」
「ここはエルフの土地だ!」
「さっさとくたばれ!ゴミ人間!!」
一言うと百倍になって返ってくるので、口論はやめた。
力技でねじ伏せるのみ。
「こちとら何が何だか分からねんだよ!!!力技だ。」
魔法を行使しようとした瞬間、肩に痛みが走った。
久しぶりに味わう痛覚、そこからこぼれていく無数の素。
目の前を見てみるとエルフが担いでいた杖の先端から煙が出ているのが見えた。
「それは何だ?」
思わず口にしてしまった。
「やれ!」
無数の光、炎、風、水が束になって襲い掛かってくる。
どれも速く、かすっただけで痛い。
俺は知らない。
こんな魔法を。
俺の知らない魔法が創造されたのか?
あらゆる角度から、脳を回転させて考える。
あれに対抗する手段は?
あれの分析を。
あれは一体なんだ?
「っ!」
身体に小さな穴とあちこちから痛みを感じる。
「このまま制圧しろ!」
重い足音が近づいてくる。
痛い。
痛い。
痛い。
エルフが俺に触れようとした。
「痛いなぁ”?」
「ひっ!?」
全身から素が零れ落ちる。
地面に落ちた素は黒く変色し、浸食していった。
「太古の魔法さ。
何も知らない者には”コレ”が一番効くっ!」
恐怖で尻もちを着いたエルフの頭を鷲掴みにする。
ミチミチと音を立てて、骨が歪んでいくのが伝わる。
爪をめり込ませていく度に、エルフから甲高い叫び声が聞こえてくる。
その光景に周りのエルフ達は動揺していた。
「戦いを舐めるなよ?
生きるか死ぬか、だぜ?」
真っ赤な液体が辺りに飛び散る。
俺の手には温かい、液体と骨っぽい何かが残った。
そして、その液体を舐めた。
「あ~、これは弱いな。次だ次。」
そう言って周りを見ると、エルフ達は失神したり、逃げたり、かなり悲惨な状態になっていた。
「逃がさないよ?
魔法の真髄、特とご覧あれ?」
真っ赤に染まった手を合わせ、印を描く。
生贄はエルフだった物。
「召喚魔法、≪バベル≫」
印から羽の生えた気色悪い生き物が出てきた。
裂けそうな口を大きく動かし、涎をまき散らした。
「逃げたエルフと、そこら辺に転がっているエルフ、特徴は杖をもっていることかな?お願いね。」
「承知。」
ここはこの子に任せて城に行こうか。




