日常の崩壊音
「あぁ~、良く寝たぁ。」
昨日はいっぱい歩いたし、今日は鉱石だけ取ったら午後は家でゆっくり過ごそうと思い、フェルから買った野菜を、ビスケットに挟み食べた。
「さて、さっさと採りに行きますか。」
ドアを開けるとそこには、大勢のエルフさんたちが勢ぞろい。
家の周りを囲んでいるではありませんか。
中には昨日検問所付近で見たエルフもいるし、一体全体何用ですかぁ?
俺は、ドアをすぐに閉じた。
「なんだろう、まだ寝ぼけているのかも。こんなところにエルフさん達が来るはずが...。ハハハッ。」
ドアからものすごい殺気を感じた。
まるで”早く出て来い”と言っているかのような気がした。
恐る恐るドアを開けると、笑顔でエルフさんが仁王立ちしていた。
「おはようございます、な、何用ですか?」
「君、令状出てるから。逮捕ね。」
「...え?」
理解する間もなく拘束され、若干筋肉痛になっていた足で、昨日と全く同じ道を歩かされた。
当然訳も分からず、拘束されて歩かされた俺は、イライラしていた。
昨日は通ることが出来なかった検問所を越え、エルフの国の中に入った。
「大罪人だ!道を開けろ!!」
なんて言うもんだから、次々とエルフが集まり俺を見てくる。
老若男女、じろじろと俺を蔑んだ目で見てくる。
いつから、エルフの国はこんな冷たい国になってしまったんだ、と思いながら歩き続けた。
しばらく歩いて、止まった先には、見入るからに劣悪な建物が建っていた。
「ま、まさかこの中に入れ、なんて言わないよねぇ...?」
「何を言っている、ここが家だ。ほら入れ。」
何の匂いかは分からないが悪臭が漂い、すごく居心地が悪い。
見るからに家というよりかは牢獄に近い建物だということが一瞬にして分かった。
「お前は今日から囚人だ。Dとでも名付けるか。」
ということで俺はDになりました。
乱暴に牢屋に入れられ、着ていたローブはボロボロに引き裂かれた。
「あれ、結構お気に入りだったのに...。」
「うるさい。大罪人は、黙ってろ。」
そうして、俺の穏やかな日常は崩壊し、よく分からないまま囚人Dとなった。
まぁ、このままここで過ごすわけにも行かないので、辺りを調べてみることにした。
薄暗い中、壁、床、天井などじっくり調べて行った。
が、どこにんも穴など見当たらず、途方に暮れていると、横の方から声がした。
「お前さん、何したんだい?」
「ん?こんなところに人が?」
「俺はB、死刑囚だ。罪状は不明だ。よろしく。」
「俺はD。大罪人らしいです。どうぞよろしく。」
先輩住民のBさんとお話をしていていくつか分かったことがある。
ここに連れてこられる人は全員罪状不明。あるいは適当に付けられた。
AさんとCさんはどこかに連れていかれてしまったらしい。
Bさんは森の外で暮らしてたのに、急に捕まった。
謎だということがとりあえず判明した。
「もう何日も食事してないんだ。嫁さんと子供がいるのに、俺はどうしたらいいんだ。」
「それは、気の毒に...。」
「あんたは冒険者かなんかか?」
「いえ、俺はただの放浪者ですよ。」
「そうかい。冒険者なら、ここから抜け出せると思ったんだけどなぁ。」
「ここから抜け出したら、エルフの国から指名手配をかけられると思うのですが...。」
「それもそうだな。でもなぁ、ここで一生暮らしていくわけにもいかねえぇんだ。」
「それはそうですね。」
まずい、やることが無くて暇だ。暇すぎて暇だ。(?)
ここには窓が無いから外の時間も分からないし、空気が悪いから気が狂ってしまいそうだ。
俺が狂うとどうなってしまうのだろうか?
「おっと、何を考えているんだ俺は。」
ここに来て、まだ時間もあまり経っていないはずなのにここまで苦しいなんて。
誰かに拘束されるのが大嫌いだから、悠々自適に過ごしていただけなのに。
なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだ?
理由が知りたい。
訳が知りたい。
知りたい。
「駄目だ。気を確かに保たなくては。」
駄目?
何が?
分からない。
朝起きて、いつも通りの毎日を過ごそうとしただけなのに。
そうか、あの死体が悪いんだ。
死体をそこで見つけて、漁ってしまったから。
じゃあ、爺さんが悪いのか?
いや、違う。
この仕事はこの国が依頼しているものだ。
じゃあ、この国が悪い。
「なぁ、おいってば!おい!」
「っ!」
「D?大丈夫か?さっきからぶつぶつひとり言?がすごい聞こえてくるんだが。」
「おぉ、失敬失敬。すみません。こんな場所にいるのが初めてで、ちょっと自分の世界に閉じこもってしまいました。」
「そうか、ここには俺もいるんだ。あまり抱え込むなよ?」
「ありがとうございます。」
何を考えていたのだろう俺は。
俺らしくないな。
Bさんの言う通り、ちょっと落ち着くか。




