お仕事
お腹も程よく満たされ、脳がすっきりとした。
今日の予定は森の清掃活動と鉱石の採集。
まずは、近場の清掃をするべく、外出の用意をする。
「持ち物は、こんなもんかな。」
皮袋に、水筒、小銭、ナイフ、布、縄を入れた。
玄関に鍵をかけて、家を後にした。
家から程よく離れると、段々と整備された道が現れてくる。
その道をしばらく進んでいくと、森の境界部分に小さな小屋が見えてきた。
「おーい。爺さん!生きてるかぁ~い。」
「誰が死にぞこないのボケ老人だって!?」
「言ってないよぉ、仕事に来たよ、俺だよ俺。」
「あぁ、お前さんか、最近ちと耳が遠くなってきてな。」
近くの村に住んでいる警備の爺さん、最近は耳だけじゃなく頭も弱ってきてるらしい。
だって一か月前も同じこと言ってたし。
「入ってきな。」
ドアを開けると、鼻を刺激する不快な臭いが漂ってきた。
「いつも通り、よろしくな。ちょっと散歩行ってくる。」
「報酬は?」
「ほれ、そこら辺においてあるだろ?それ取っていきな。」
指さしした場所には雑に置かれた金貨が3枚あった。
「じゃあな、また今度。」
「散歩行ってらっしゃい。」
ぱたんとドアを閉めて爺さんは行ってしまった。
森の清掃活動とは、森の管理をしている訳ではなく、森に迷い込んでしまった生物の処理をしている。
まぁ、ある意味管理しているとも言えるけど、実際は汚れ仕事な訳だ。
乱雑に積まれた死屍累々を眺める。
近年、エルフの需要が高まり、人攫いが活発になっているのが問題となっている。
エルフは多種族においても寿命が永く一時期、ドラゴンの血とエルフの血はあらゆる病を治すという迷信が生まれたぐらい血の価値が高い状態になっており、違法な者たちがエルフを求めこの森に無断で侵入してくる。
無論、エルフの王はこのことを許さず、森の外周に強力な罠を仕掛けた。王に認められた者だけしか通ることが出来ない優れた罠だ。
そのことも知らずに雇われた者やただ興味本位でエルフに会いに来ただけの者が無残に殺され続けている。
まぁ一言で言ってしまえば、今は時期が悪い。
死体を並べ、品物を漁っていく。
大抵、低ランクの冒険者や貧相な者達が多いが、今回は少し違った。
「ん、これは...。」
手に取ったのは小さな指輪。
綺麗な宝石がはめられている、銀色の指輪だ。
ただの指輪だけだったら、たいしたことないのだが、指輪には”シュヴァード・ヘルバ”と書かれていた。
ヘルバはちょっと離れたとこに位置する王国の王族の名前、この指輪の持ち主をよく観察してみると、持ち物からして戦いに来た感じではなく、恐らく視察か、派遣されてきた者だということが分かる。
「厄介なことになったなぁ。」
思わずそう呟いてしまった。
指輪以外にも文書とかも出てきたし、これはエルフの王様に報告しないといけないなぁ。
とりあえずこの死体は別のとこに置いておいて、残った死体を片付ける。
いつも通り、お金を取って、武器を回収し、魔法具やら貴重品、消耗品などを選別していった。
他の死体は何事もなかったので、焼却炉にいれておいた。
あとはあの爺さんが散歩から帰ってきてら焼却してくれる。
「仕事が増えちゃったなぁ、まぁ久しぶりにエルフの国にでも行きますかな。
ついでに観光もするかぁ。」
置いておいた死体を布で包み、適当に縄で縛っておいた。
それを背負い、そのままの足で、エルフの王国への道を辿っていった。




