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遥かなる慧眼  作者: たむーん


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プロローグ ~いつものルーティン~

 人の気配が無い静かな森の中。

鳥たちのさえずりが聞こえる、お昼時の頃、小さな小屋から香ばしい良い匂いが漂ってくる。

小屋の中には大きなローブを羽織った男が一人。

年季の入った、小さな機械でコーヒーを入れていた。


「ん~、良い匂いだ。」


 男は椅子に腰をかけ小さな欠伸をしたのち、コーヒーを一口飲んだ。

急に咳き込み、慌てて立ち上がると、軽く胸を叩いた。


「っあぁ!ごほ!っごほ。あぁ、びっくりしたなぁ。俺としたことがブラックで飲んでしまった。

シロップとミルクを加えていないじゃないか。危ない危ない。」


 小さめの棚にはかわいい入れ物に付箋が入っていた。


「ん~?なになに、”もう使い切っちゃったぜ、買ってこいや!”...。

そういえば、先週使い切ったんだった、忘れてたなぁ...。」


 と、過去の自分に対しムカつきながら、どうやってこの苦いコーヒーを飲もうかと考えていた。


「ここから街は遠いし、帰ってくる頃には日が暮れちゃうしなぁ。どうしたもんか。」


 本棚から本が溢れかえっている汚部屋を横目に、再び椅子に腰かけ、天井のシミの数を数え始めた。


「手間はかかるけど、時間がかかるよりかはマシかぁ。」


 そう言い、再び立ち上がり、ギシギと音を立てる階段を上っていく。

二階には埃を被った、普段使わない書籍や、珍しい機械などが置いてある。(ただの物置)

埃を警戒しつつ、奥の方においてある、黒い本を取ってきた。

数ページめくって、該当する部分を読む。


「えぇ~っと、シロップは樹から、また砂糖から作れます...。」


 手にしたのは年季が入りまくり、色褪せまくった”料理の心得”と書かれた料理本。

埃を払いながら一階に降り、机に広げた。


「昔の人は大変だねぇ、まぁこれもこれで味があって良いと俺は思うんだけどねぇ。

現代人は何でも簡単に手に入っちゃうから、苦労を知らないんだよね。

まぁ、便利だし、しょうがないんだけどね。」


 誰に文句を言っているのか不明だが、外から適当に小枝を拾ってきた。

薄汚れた小枝を水で軽く洗い、布で水分を拭き取る。


「先人の知恵に感謝しつつ、今を生きる俺は楽を追求していく~。」


 乾いた小枝に手をかざすと表面から透明な液体が滲み出てきた。

慌てて、清潔な瓶にその液体を流し込んでいく。

段々と小枝が萎んでいき、最終的に黒い一本の線みたいになった。

それを軽く潰すと、粉々に砕け散っていった。


「いつ見ても魔法は便利だなぁ。詠唱もかっこいいけど、無詠唱も捨てがたいんだよなぁ。」


 ぶつぶつとひとり言を喋り、瓶に溜まった液体をスプーンですくい、コーヒーの中に入れる。

突然玄関のドアにかけておいたベルがちりんと音をたてた。


「あぁ、行商人さんかな。いらっしゃい。」


 ドアを開けると、毎度お世話になっているエルフの美人さんがいた。


「やぁ、フェル、淹れたてのコーヒーに合わせるミルクが欲しいんだ。ミルク売ってなかい?」

「勿論、あるさ。ほれ、今日の朝搾りたての新鮮ミルクさ!」


 エルフにしては落ち着きのない彼女はフェル。

この森の中心部にあるエルフの国で行商人として生活をしている、愉快な美人さんさ。


「いくらかね?」

「このミルクは、過去一番のミルクでねぇ、常温で一か月も長持ちする代物だよ!?」

「はいはい、いつも過去一番だね。」

「過去は更新していくからね!っと、そうだった、値段はいくらがいい?」


 玄関横に置いてある小さな小袋を確認して、それをフェルに渡す。


「じゃあ、これくらいでどうかな?」

「ふむふむ!わぁ!!良いの?こんなに貰って!?」

「ここまで来てくれるのはフェルしかいないからね。ご褒美代も込みでね。」

「ありがとう!!」


 と、こんな感じでいつも通りの生活用品やら日用品やらを買い、フェルに手を振って別れた。

毎週、毎時間に現れる彼女の笑顔と商品を見るのが最近の趣味になってきている。

買ったミルクの蓋を開け、コーヒーに注ぐ。

黒から茶色と、変色していき、程よく時間も経ち、飲みやすい温度になっていた。

コーヒーの香りを十分に楽しみ、小腹もすいてきたのでビスケットを口に入れ、お昼の時間を楽しんだ。

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