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遥かなる慧眼  作者: たむーん


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18/18

これだけは...!

 微妙な空気が空間を支配する。

じじいは目をぱちくりとさせ、女は白目を向いて気絶していた。


「なにか無いのか?」

「い、いや。

まさか儂らに回答する権利があったことに驚いてのぉ。」

「俺は対等を好む。

俺をよく分からん罪で捕まえたあの要注意人物その1の罰は、あの姉妹で晴らした。

そして、勝手に裏切ったハーレーと死にぞこなったヴァルト。

この分はエールがお前らの仲間?を殺したことでトントンになった。

で、俺がお前に質問をしたので、次はお前の番だ。

無論、質問だけではなく、何をしてもいいぞ。」

「ふ、ふむ?

一応理に適っているのだな...?

ちなみに質問ではないのだが、次の行動次第で儂らは逃げれるのかのぅ?」

「あぁ、可能だ。

ここは海の上なのだろう?

どこへ逃げるのかは分からないがな。」


 じじいは少し考える様に女と周りの様子を交互に見ていた。

対等を好むと言ったが、そんなことは無い。

それっぽいことを適当に言ってみただけなのだが、信じてもらえたようだ。


「で、では、手伝ってくれないかのぅ...?」

「ほう。

何を手伝うのだろうか?」

「実は儂らはつい最近加入した新入りなのじゃよ。

儂は元々は辺鄙な地で薬師として過ごしていたのだが、突然帝国の騎士様達の招集にかけられてしまい、理由もなく帝国に連れていかれたのじゃ。

そこで、同じようにして集められた中にこの娘もおったのじゃが、帝国に着き次第魔法適正がどうとか知識、財力など情報を徹底的に調べられてしまい選別されたのじゃ。

結果的に仕分けられて残った10人ぐらいの中で、この世界魔法協定・最終裁判所に儂とこの娘が配属されたのじゃよ。

残りの者達もそれぞれ知名度の高い場所に配属されたらしいのじゃ。」

「ふむ。

それで?」

「でじゃ。

儂らは帝国領土に住んでいるとは言え、生涯このような場所では暮らしとうない。

配属されて一か月も経たない内に今日、このようなことが起きた。

非常におこがましいとは思っているが儂らをもともと住んでいた土地に帰らせてはくれないかのぅ?」


 まぁ、正直言えばめんどくさそうなので、「嫌だ。めんどい。死ね。」で、やってしまってもいいと思っている。

が、ここを沈めた後、特にやることがないのも事実。

このじじいと女の護衛とやらをしてやってもいい。

結局のところ、暇にならなければいいのだ。


「よし、いいだろう。

俺がお前らを護衛してやろう。

エールはそうだな...。

引き続き()()を進めておいてくれないか?

いずれの時に役立つだろう。」

「=)(&==~=~~&%)%$&%''((%&=~!」


 透過するようにスーッと消えていった。

その場からエールの気配が消えたのを感じ取ってから再びじじいに視線を向ける。


「正直に言うとな、俺は殺戮がしたいんじゃないんだ。」

「???」

「なんだ、その顔は。

喧嘩を売られただけで、俺はそれを手で振り払ってるだけなんだ。

あぁ、そうだ。

こいつはどうしたい?」


 片隅の方で微かに呼吸をしているヴァルトを見る。

見られていることに気付いたのか、こちらを虚ろな目で見返してくる。

助けを求めているのか、仇をとってくれてありがとうなのか、本人に聞いてみることにした。


「お前はどっちだ?」

「.........ぃ。」

「ん?」

「......ろぉ。」


 必死に床を這いずり、おびただしい量の血を出し続けている。

何がヴァルトをそこまで生かしているのか、俺にはよく分からなかったが、殺そうとしたところでじじいがヴァルトに近寄った。


「儂の立場上何とも言えぬが、おぬしの気持ちはよく分かるぞ。

仲間を殺され、信じたやつに裏切られ、生きる気力を無くしてしまったのじゃろう。」

「逃げろ!ごぼぅえぉ!!」


 うんうんと振っていた首を止め、限りなく目を見開いていた。

どうやらヴァルトの言いたいことと違ってたみたいだ。

分かった気でいたのかじじいは驚いた表情をしていた。

無理をして喋ったせいか、ヴァルトの口からは血が大量に飛び散った。


「なぬ!そういうことか!

まずいぞ、崩壊するのか!!」


 どういうことか分からないがここが崩壊するだと?

俺が壊す予定なのだが。


「死に際に、忠告助かるぞぉ。

おぬしの思い、勝手に受けとっておく!

この娘を助けねば。」


 ゴゴゴゴゴゴゴと音をたてながら建物自体が大きく揺れ始めた。

ただ揺れただけではなく、四方八方にヒビが広がっていき土埃が舞い始めてきた。


「ここにいては生き埋めになってしまうぞぃ!」

「俺はちょっとやることをやってから逃げるから、先に逃げていてくれ。

お前の力ならなんとかなるだろ?」

「儂の力はもう無いぞ?」

「じゃぁ、飛ばすな?

転移魔法≪テレポート≫」

「おっ!」


 じじいと女、ついでにヴァルトやその他のものも一緒に近くの平地に転移させておいた。

周りを見て何も残っていないのを確認し、壁を殴る。

ドゴォッ!と音をたてて、壁に穴が開き凄まじい風圧が入り込んでくる。

久しぶりに見た青い空は眩しかったが、そのまま外に向けて足を進める。

俺の身体は自由落下をし始めた。

いる位置がだいぶ高いのか、海面に着くまでには時間がかかりそうなのを把握し、雲まで伸び続ける高い塔に向けて魔法の準備をする。

きっと俺ら以外にも囚人とか人とかたくさんいるとは思うが、俺の魔法発動まで数十秒かかるからその間に危険を察知して逃げるだろう。

多分。


「範囲指定、圧縮、粉砕、地異、大規模魔法、≪ギガ・エンチャンツ≫」


 塔の全範囲に赤い色をした謎の言語が鎖のように囲い始める。

何人かが塔から脱出してるのを見つつ、さら魔法を絞っていく。

下は海なので、軽減魔法やら何かしらの方法を取れば生き残れるだろう。


「反魔法≪モディフィケーション≫

禁忌魔法≪破魔法≫

部分指定魔法、禁忌指定。」


 複雑な魔法構築を経て、魔法式が重なって一つになる。


「3...2...1...、再現魔法≪アポカリプス≫、再現指定。

転移魔法≪テレポート≫」


 魔法発動と共に転移魔法を発動した。

転移魔法をすぐに発動したのに、再現魔法の凄まじい余波を感じた。

じじいらを飛ばした平地に着き、すぐさま後ろを向く。

静かな静寂が広がる海に極太の光線が天へと昇る。

遥か遠くに離れているのに衝撃波と、塔の残骸物と思われる小さな破片が飛んできた。

それと同時に海が引いていき、あたりの海底が地上に現れた。

それも束の間、大量の大波が襲い掛かるように凄まじいスピードで返ってきた。

崖に大量の波が押し寄せ、水しぶきが飛び散る。

海が落ち着くころには天へと昇る光線は消えかかっていた。

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