理解と崩壊
「お姉ちゃん...?」
静かな空間に震える声が響く。
ロノはノロがどうなったのかを悟ったのか、身体を震わせていた。
「お前のお姉ちゃんは、無くなっちゃった。」
「......ぁ...??」
段々顔が青ざめていき、目の焦点が合わなくなってくる。
絶望の目から悪い方への確信の目に移り変わっていく。
「シ、シンさん。
無事でしたか。」
満身創痍一歩手前の状態と見られるノーミューがこっちへ向かってくる。
その奥にいるヴァルトは出血はしてないものの、口をずっとパクパクさせどこか不安そうな表情をしていた。
「あぁ。
この姉妹の声がした瞬間、どこかに飛ばされたが姉の方を殺ってきた。
こっちはどういう状況なんだ?」
「順を追って説明...します。」
突然、ノーミューが素早く駆け出した。
脳の理解が追いつく前にノーミューは俺の身体に小剣を突き刺す。
この小剣、確かハーレーが持っていた双剣の片割れだった気がする。
「すみませんね!」
身体が異常を検知して、熱くなってくる。
感じたことのない異質な何かが身体中を駆け巡る。
思わず壁に手を付けてしまった。
「ふふふ、ミッションコンプリートですね。
いやはや、まさかノロさんが死んでしまうとは。
何が起こったか分からない、そういった表情をしていますね?シンさん。」
「あぁ。」
「僕の固有魔法≪孤独の腐食≫です。」
「お前もか。」
「初めて見たその瞬間から貴方は別格にやばいと思いまして、緻密な計画の下なんとか魔法を発動することが出来ました。
私たちのミッションはシンさん、貴方を確実に殺すこと。
他の人たちには残念ですが、踏み台になっていただきました、ねぇヴァルトさん?」
首が悲鳴を上げそうな勢いで横に振るヴァルト。
よくよく見ると、ヴァルトの口周辺に魔法がかかっているのが見えた。
恐らく契約か洗脳かなんかの類の魔法だろう。
「はぁ、もっとはましな反応しろよなぁっ!?」
「っ!」
ノーミューの理不尽なビンタによってヴァルトの歯が数本飛んで行った。
「ふぅ。
おっとそうでした。
話を戻すと、フューが貴方をここに連れてきたとき役員はぞっとしました。
一体何を連れてきたのかと。
フューが言うには、危険思想及び不適切な発言による違反の罪で拘束した、と言っていたけどそんな軽い罪で収まるような人ではないと、役員の中で意見が一致した。
久しぶりの大物の登場でみんな血気盛んになっていたけど、じゃんけんで同率で勝った僕とそこの姉妹とで処刑することになったんだ。
まぁざっくりと言えば、貴方の存在はこの世界にとって危険すぎる。
だからここで死んでもらうね。」
意味が分からないな。
人間は分からないことが多すぎる。
めんどくさいのは嫌いだ。
動くか、と思ったその時、
ヴァルトが決死の覚悟でノーミューに体当たりした。
油断していたのかノーミューは大きく吹き飛び、壁に強打した。
「ぐぁっ!?」
「ぁ、ぁい。愛が...。」
「馬鹿な...。
僕の固有魔法を破った...だと...!?」
「...散ってしまった、助けられなかったお二人のためにも魔法の力で供養させて頂きます。」
この展開には俺も正直驚いた。
固有魔法を打ち破るには強い思いと、それ以上の魔法が必要になってくる。
今回はヴァルトの思いがノーミューの魔法に打ち勝ったということか。
非常に珍しい。
「ギールさん、ハーレーさん...。
複合魔法、≪スロウ・クイック≫」
「クソ!間に合わな...うぐぉ!!」
ノーミューの身体に凄まじい重力がかかる。
急に乗っていた重力が消える。
「っはぁ!!......っがぁ!」
消えたのも束の間、再び重力がのしかかる。
複合魔法とは、二つの魔法を合体させて発動する魔法で通常時の魔法より魔素消費量が激しい。
が、その分トリッキーなことが出来、この場合呼吸のリズムをずらしたり瞬時に変わる反動に耐えられなかったりとまぁまぁ拷問向きの魔法に見えた。
「お二人の分、私、シンさんの分まで味わって死んでください。
滅却魔法≪インシニレーション≫」
「うがぁああああ!!!」
ノーミューが凄まじい炎で包み込まれた。
中からはおぞましい悲鳴が聞こえてくる。
「ぁぁぁぁああああ......、なぁーんてね!」
「!?」
炎の中から剣が飛んでヴァルトの片足に突き刺さった。
炎は解除され、ぷすぷすと身体の所々が炭化したノーミューが笑みを浮かべていた。
「熱かったなぁ?
でもそれだけですか。
肩代わりご苦労様でしたロノさん。」
完全に忘れていたロノの方を見ると両足と両手には赤い文字が浮かび上がり、必死に歯を食いしばりながら泣いているロノがいた。
「くっ、外道な...。」
「使える物は使わないと勿体ないじゃないですか。
それと、シンさん。
なぜ死なないのですか?
時間的にもそろそろ魔法が回って死に悶えている頃だと思うのですが...。」
「魔法?
俺には効かないな。」
「効かないわけがないでしょう。
貴方も立派な人間、この魔法は対人間専用の魔法なのですから。」
「...来たか。」
突如凄まじい揺れが起きた。
これに動揺したのはノーミューとヴァルト。
この海域の広い範囲にアレの気配を感じ取った。
「なんなんだ、このおぞましい気配は!!」
「俺からのプレゼントだ。
珍しいものが見れるぞ...?」
「これは...、魔物...?」
一斉に同じ方角を向き、何もない壁に向かって警戒を取り始めた。
そして、床が光り、ローブを深くかぶり、認識阻害魔法を使用している人間が7人現れた。
「おい、ノーミュー。
どういうことだ?」
「っ!先輩。」
「化け物も処理できていないし、なんなんだこの気配は。」
「来るわよ?」
突如壁に巨大な爪がめりこむ。
壁をすり抜けたかのように現れたのはエール・ドムノミュだった。
「#$%&$'=~=('%&'$?」
「よくここが分かったな。」




