ハルシュツァール村
「着きました!!」
茂みで覆われた草地を通り抜けると、ちょっとした村っぽい場所があった。
ぱっと見で、エルフ、人間、家畜、獣人、などと多種族が共存している様に見えた。
「お、フェル~、そこの男は彼氏かい?」
「も~う、レベックおばさんったら~、違うよぉ。」
フェルが獣人のご老人の肩をバシバシと叩きながら、照れていた。
「ちょっとした訳で、住む場所が無くなってしまった。
少しの間だが、こちらに滞在してもいいかな?」
「うむ!フェルが連れてきた、未来の旦那!ここ、ハルシュツァールの長、レベックが許可しよう!!
フェル、どうせあんたの家に連れ込むんだろ~?さっさと、案内しちゃいな!」
「違うよ~。」
今までに見たことが無いぐらいデレデレした様子のフェルを見ることが出来た。
フェルに案内されながら村の中を歩く。
村にしては、資源が豊富に見えるし、行商人や冒険者などが行き来している。
横目に見ていたが、売られている物には希少だと言われている魔石や、珍しい食物など、目を引くような物ばかりあった。
「どう?私が住んでるところは?」
「一言で言うと凄い。
ここら辺は何か良い立地なのか?」
「んーっとね、遥か昔にここら辺にドラゴンの巣があったらしいの。
今はもう、ドラゴンは死んじゃったけど、ドラゴンの骨や血がこの地帯を活性化させてるらしくて、良い資源がいっぱい採れるの。」
「なるほどねぇ。」
ドラゴンか。
生きた年齢によって、後世に影響を及ぼすと言われている生物。
実際に俺は見たことがあるが、あの複雑な生命魔素器官を臓器中に張り巡らせているのは正気の沙汰ではないと思った。
そこら辺の生物があんな真似をしたら、身体が耐えられなくて爆散する。
生まれながらにしての知恵と生命力がドラゴンの誇る強みだと言っても過言ではない。
「山に積もった雪が融けて、立派な川になって、その川の一部をここに引っ張ってきているんだ。」
石で作られた小さな橋を渡るときに、何匹化の魚が泳いでるのを見かけた。
魚が住めるくらい、水が綺麗なのだろう。
「説明してたら、着いちゃった!
ささっ、入って!」
目の前には俺の家よりちょい大きめの建物。
フェルに言われるまま、中に入った。
そこにはいつも見かけていたフェルの荷物や服、年季の入った机や椅子、鼻に抜けるような香草の匂いなどでいっぱいだった。
「ちょっと散らかっちゃってるけど、こっち来て。」
「うん。」
「この部屋使ってね!」
ドアを開けると、簡易的と言ってもしっかりとしたベッドにランプが置かれた机と椅子、まるで宿泊施設のような雰囲気を醸し出す部屋だった。
「まるで、誰かが泊まることを前提にしたような部屋だね。」
「っ!!!」
「?」
なぜか、ポカポカと軽く叩かれ、フェルは顔を赤くしていた。
「これじゃぁ、まるで...ゴニョゴニョ。」
ブツブツと何か呟いていたが、声が小さくて聞こえなかった。
チリンっと、ベルが鳴った。
フェルは、慌てて玄関に走りドアを開ける。
「フェル!仕事は終わった?」
「あぁー!嘘!今日が締切?」
「まさか、あんたまだ終わってないのかい?」
「い、いやいや、まさか!で、でも、ちょっとだけ見直しが終わってないだけで、ちゃ、ちゃんと提出するから!」
「ふん!ちゃんと出さなかったら、お給料出さないからね!?」
バタン!と音を立ててドアが閉じられた。
部屋を出て、玄関の方に行ってみとフェルがうなだれる様にへたり込んでいた。
「あぁ~、仕事忘れてたぁ。今からやんなくちゃ~!!」
「大丈夫かい?」
「ん~、大丈夫では無いけど、これをやらないと生活に関わるから急ぎでやるねぇ~。
完全に悪いけど、私これからこの仕事を終わらせないといけないからちょっと部屋に籠るね。
来て早々で悪いけど、部屋で休むか、適当にくつろぐか、外歩いてくるとか、なんかしてて~。」
「仕事、頑張ってね。」
しょんぼりしたフェルは、吸い込まれるように部屋に入っていった。
時間的にはまだ、お昼。
家の中にいてもやることが無いから、外出してこようかな。
観光と調査も兼ねてね。




