0.15 アルカの迷子記(アルカ視点)
引き続きご覧頂きありがとうございます!
カースと出会うかもしれない、、、?
そんな少女の話です。
私の朝は早い。
今日は――念願の“魔法の杖”を買う日だから!
「行ってきます!」
「立派な冒険者になるのですよ」
「はいっ、任せてください!」
勢いよく玄関を飛び出し――階段を一段飛ばしで踏み外し、盛大に転んだ。それはもう顔面から。
「……っ!」
「あはは、大丈夫です! これくらい平気です!……『ヒーリング』」
顔に回復魔法を掛け傷を癒す。
私は良く転ぶ。そのおかげか回復魔法に限っては中々に自信がある。
私、アルカ・ルーベスト。自他ともに認めるドジで変人、方向音痴。
それでも夢だけは真っすぐだ。
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空は雲ひとつない快晴。
太陽は真上――北門に向かうなら、影は真後ろ。つまり完璧!
(……のはずだったんだけど)
五分後、影は横を刺していた。
どうして?
首をかしげて歩き直す。
一歩進むごとに石畳が眩しく跳ね返り、グリモア色のローブが翻る。
だが――この街の人間は冷たい。
転んでも、誰も手を差し伸べてくれない。
魔力の光をまとった人々は、私を避けるように足速に通り過ぎるだけ。
それでも私は笑う。慣れているから。
転ぶ、立つ、歩く――冒険者への道も、きっと同じだ。
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路地を抜けると、甘いパンの匂い。
気を取られた瞬間、通学中の少年とぶつかり杖の図鑑が落ちた。
昨夜からどんな杖にしようか迷い、読んでいた大切なもの。
「あ、ごめんなさい……!」
「平気だよ!ほら」
少年は埃を払って本を差し出してくれた。
小さな手の温かさに、胸の奥がじんわりする。
(世の中、悪い人ばかりなんかじゃない!)
再び歩き出す。
目的の尖塔屋根は見えている。あとは曲がらず進むだけ。
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十分後――私は同じ橋を三度目に渡っていた。
薬草露店のお姉さんが笑顔で指を指す。
「お嬢さん、北門はあっちよ」
「えっ……そっち!?」
そう、私は方向音痴。
大事な事だから二回言います。
でも――迷うことは嫌いじゃない。
だって、迷った先で新しい出会いが待っているから。
このお姉さんだってそう。迷わなければ出会えなかった。
全ては出会いだ!
胸を張って深呼吸。
目的地はもうすぐそこにあるはず……多分!
(今日はいい日になる。きっと、運命の出会いが――)
私はスカートを握り、駆け出した。
その十数分後、北門とは真逆の裏通りで――包帯の少年と衝突することになる、とも知らずに。
最後までご覧頂きありがとうございます!
ここで作者から間違い探し?です。
アルカは迷いながらも色んな出会いをしてきました。それは一瞬の出会いであり、本人もポジティブに捉えていますが、実はこの話から、街の異変を感じることが出来ます。
決して遠くない話で明かされますが、読み返して異変に気付いていただければ、嬉しいです!
また、引き続きブクマ、感想、評価で応援のほどよろしくお願いします!
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