0.呪われた力、救いの願い
数ある作品の中から、この物語を見つけてくださり、本当にありがとうございます。
この作品は、触れたもの全てを灰に変えるという呪われた力を持つ少年カースが、
唯一の光となる少女アルカと出会い、その運命が動き出すファンタジーです。
シリアスな展開の中に、思わずクスッと笑えるようなコミカルな日常、そして胸を締め付けるようなロマンスも織り交ぜながら、カースとアルカが世界の謎、そして自身の宿命に立ち向かっていく過程を書いていきます!
どうぞ、最後までお楽しみください!
続きが気になった方はブックマークや評価で応援して頂けると嬉しいです!
これは──俺の“病”が生んだ物語だ。
目の前に立ちはだかるのは、山のような巨影。
岩の塊のような腕、鉱石と魔力が融合した装甲。
そして、地を揺らすような咆哮が地を揺らす。
「アルカ──!」
「カースさん!!」
アルカの叫びも、咆哮にかき消される。
──目の前にいるのは、《九柱の禍ツ神》のひとつ。
この世界に“破滅”をもたらすとされる、九つの超常存在。
その中でも、地を喰らい、大陸を沈めた伝説を持つ“厄災”──
《震撃獣グランドハゼル》。
岩石と魔力の奔流が融合したような巨体が、
唸りを上げてこちらに迫っていた。
「危険です! カースさん、それは──!」
「分かってるよ。だから……俺が行くしかないんだろ」
俺は右手を見た。
包帯は、もう外してある。
全身に包帯を巻いた男が、右手の包帯を外した。
その手は人間とは思えない程黒く爛れ、黒い瘴気のようなものが浮き出ていた。
「止められるのは、たぶん……俺しかいないから」
「でも……!」
アルカがそれ以上の言葉を呑み込む。
彼女の瞳には、戸惑いと、悲しみと、そして──理解があった。
俺は微笑んで、彼女から目をそらす。
「バレてもいいのかとか、もうどうでもいいさ」
俺のこの力は、祝福なんかじゃない。
生まれつきの病であり、呪いだ。
医者も見捨てた、治らない呪い。
触れたものを、灰に変える──ただ、それだけの力。
──だが強い力には相応の代償ってものがある。
俺もその″代償″ってやつを背負っている。
「……俺の力が誰かを救うだなんて、思ったことはない。
……だけど今だけは、そう信じたい」
ほんの少しだけ、声が震えた。
──そうだ。
この力を、ずっと憎んできた。
どれだけ包帯で覆っても、人と触れ合えなかったこの“皮膚”を、 俺自身が一番、拒絶していた。
それでも今、
ここで誰かを救えるのなら。
「──こんな力、欲しいなんて思う奴なんていないだろ」
俺はゆっくりと、目の前の“神災”のもとへ踏み出した。
足元を大地が裂く。
頭上には瓦礫が降る。
肌に触れる空気すら、重く、熱い。
けれど俺は、進む。
この“呪われた力”でしか、止められない存在がいるのなら。
たとえ、それが──“神”だとしても。
──俺の名は、カース。
全身を包帯で覆い、触れた者すべてを灰に変える“病”を抱えて生きてきた。
この力は、決して誇れるものじゃない。
それどころか他人を”不幸”にする。
大切な人に触れる事が出来ないからだ。
それでも、包帯の下のこの手で……誰かに触れてみたいと願ってしまった。
そんな哀れな男だ。
だからこそ決めた。
灰化の正体を暴き出してみせる。
《九柱の禍ツ神》。
俺の体についての何かを知っている存在。
お前たちが俺をどのように見ているかは知らないが──
その目論見ごと、必ず叩き潰してやる。
最後までご覧頂きありがとうございました!
これは所謂物語の始まりにすぎません。
次回が本番です。出会いから成長、葛藤などを書いていくのでもしよければ、
ブックマークや感想、評価などで応援頂けると嬉しいです!
では次回でお会いしましょう!