第四話 後編
「感謝するなら、めぐるにしときなよ。私とこいつは、めぐるの計画に乗っただけ」
日向がニヤけながら俺と星羽を交互に見ながら答えた。
「……改めて、誕生日おめでとう。黒崎くん」
俺は本当に幸せ者だな。こんなダチがいてくれて、感謝しかない。
「でもさ、日向、星羽って俺の誕生日、元々知らなかったわけだろ? 祥太がお前に俺の誕生日言わなきゃ、お前もわからなかったんだよな?」
日向が笑いながら、
「あー、それはね。実は一昨日の夜、いつものようにあんたの話をめぐるから聞いてたの。そしたら、めぐるが黒崎くんの誕生日っていつかわかる? って、突然聞いてたから、私の性格知ってるでしょ? そりゃあもう綿密に計画を練ったさ」
「ま、詳しく話を聞きたかったら、星羽さんから聞けよ。俺らは、そろそろウチに帰るし」
日向の話を遮るように祥太が間に入り、立てかけてあった時計を見ると二十一時前になっていた。
「渡すもん渡したし、今日はこの辺で俺たちはお暇するよ。星羽さん、あとはよろしく」
祥太が軽く手を振りながら、日向と一緒に部屋を出て行った。
「おい、祥太、日向! 本当に帰るのか?」
「当たり前だろ。お前ら二人の時間を邪魔しちゃ悪いからな。じゃあな!」
日向も祥太も、何かを企んでいるような笑顔を残して部屋を出て行った。
部屋には俺と星羽の二人だけが残された。少し緊張とは違い、鼓動の高鳴りが、俺自身に緊張感を与え、手をブルブル震わす。そんな身勝手な緊張感で心臓が張り裂けそうになっている俺を他所に、星羽は星羽で顔を赤らめ、丸くなっていた。
「……ねぇ、黒崎くん。今日は来てくれてありがと。…‥あと、これさっき渡しそびれたプレゼント」
3人まとめて日向と祥太が帰る時にくれたけど、星羽はこれとはまた別件でプレゼントがあったという認識でいいのだろうか。まあプレゼントというならありがたく受け取っておこう。
「本当はね。黒崎くんが読みたいって言ってた小説を全巻プレゼントした方がよかったんだけど、それだとダメだと思ったから、一冊限定で書いた私お気に入りの一冊……」
星羽は少し照れたように微笑んだ。
「ありがとな星羽。お礼と言っちゃあなんだけど、今度甘いもんを食いに行かないか?」
星羽は少し驚いた顔をした後、嬉しそうに頷いた。
「……うん。私もちょうど、黒崎くんと行きたいとこあったから」
星羽の笑顔が、今日はより一層輝いて見えた。その笑顔を見ながら、俺は今日の夜が一層特別なものに感じられた。
「それじゃあ、今日は本当にありがとう。また明日もよろしくな」
「うん、また明日ね」
俺は部屋を出た。
今日の出来事を思い返しながら、これからももっと星羽のことを知りたいと思った。
これからも、星羽との日々が楽しみで仕方がない。そんな気持ちで、俺はベッドに倒れながらことを考えていた。