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第三話

 星羽と半同棲するようになって早一ヶ月が過ぎた頃の放課後、いつものように先に屋上のドア前で昼食を取ろうと弁当を持って教室を出た直後、日向に声をかけられる。


「黒崎…あんた、最近なんかした? クラスで、黒崎がめぐるを脅して好き勝手してるって言ってるけど、実際どうなん?」


「俺が星羽を脅してる? んなわけねぇだろ。俺がそんなことするタマに見えるか? 長年一緒にいるお前の目は節穴か?」


 日向は俺の返事に少し驚いた表情を見せ、しかしすぐに真剣な顔つきに戻った。


「じゃあ、なんでそんな噂が立ってるの? あんたとめぐるが一緒にいるのを見かけた人たちが、誤解してるみたいなんだけど」


 俺は深くため息をつき、肩をすくめた。


 嫉妬、妬みって怖えって改めて実感したわ。俺の顔か? 雰囲気か? もしくは両方がダメなのか? それを初めに言い出した奴が男か女か知らねぇけど、お前の理想に当てはまる男だったらそんな噂出さねぇのか? 気持ち悪くて反吐が出る。


「ただ一緒にいるだけで脅してるって言われるのか。なんか世の中おかしくなってるな」


 日向は少し考え込みながら言葉を選んでいる様子だった。


「でも、噂をこのまま放っておくと、めぐるに迷惑がかかるんじゃない? あんたはそのまんまでいいの? 私は納得してないよ」


「それはそうだな…分かった。俺もどうにかするよ。ありがとう、日向」


 日向は軽く頷き、その場を去っていった。俺は再び屋上に向かい、星羽が待っている場所へ急いだ。彼女にこのことを早く伝えなければならない。


 屋上のドア前に着くと、星羽はすでに弁当を広げて待っていた。彼女の穏やかな表情に少しだけ救われた気がした。


「星羽、待たせたな」


「……黒崎くん、大丈夫?」


「大丈夫だけど、ちょっと問題があってな」


「……問題? 何かあったの?」


 星羽は心配そうに眉をひそめた。その姿がやけに愛おしく見えて、俺は少し笑みを浮かべながら答えた。


「星羽は知らなくて当然なんだけど、クラスで俺が星羽を脅して好き勝手してるって言われてるらしくて。ま、まあ、これはあくまでさっき小耳に挟んだ話だから、あんまり星羽は気にしないでくれ!」


 星羽は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静な顔に戻った。


「……そんな信憑性のかけらもない噂、信じて流布する人がいるなんて。……教えてくれてありがとう黒崎くん。一人心当たりがあるから問いただしてみるね」


 星羽の瞳には決意の色が宿っていた。彼女がこれほど強い意志を見せるのは初めてかもしれない。


「星羽、本当に気にしなくていいからな。俺がなんとかするから」


「……ダメ。これは私が選んだ選択が招いた結果。私が」


「星羽。お前の決意が固いのはわかる。でも、これは星羽一人で解決できる範疇じゃない。俺のことを信用してくれてるなら頼ってくれ」


 星羽は深くうなずき、


「……頼ってもいいの?」


「当然だ。お前が悩んでる姿を見て放っておけるわけがない」


 星羽は主人公の言葉に少し安心した様子を見せ、静かにうなずく。


「ありがとう、黒崎くん。私、頼らせてもらうね」


 その後、俺たちは一緒に問題の解決策を考えるために屋上で時間を過ごした。星羽の心強い存在が、俺にとってはとても心地よいものだった。


 屋上から降りると、星羽は俺に微笑みかけた。


「黒崎くん、ありがとう。一緒にいてくれて、本当に心強かった」


「いいって。お前が困ってるときは、俺が手を差し伸べるのが当たり前だろ」


 星羽の微笑みに応え、俺も彼女に微笑みかけた。その瞬間、俺たちはお互いの目を見つめ合った。


「そうだな。一緒にいれば、なんとかなるさ」


 その後、俺たちは一緒に問題の解決策を考えるために屋上で時間を過ごした。星羽の心強い存在が、俺にとってはとても心地よいものだった。


 星羽はどこか恍惚とした表情のまま階段を降りて行った後、俺の所ににやけた表情をした日向が現れた。


「めぐるのあんな顔初めて見たよ。あんたって案外、たらしなのかもね」


「そんなことを言いにここまできたわけじゃないだろ?」


「ああ、それか。確か、星羽も一人心当たりがあるって言ってたな。もしかして、この間星羽に告白して玉砕してたあいつのことか?」


 俺と星羽が半同棲状態になる少し前、星羽に告白した男が居るって教室で話題になってたけど、そいつが逆恨みして? 何のために? 俺以外のやつは認めないってか? だから、星羽にフラれるんじゃねぇの?


「そう。そいつが元凶。変な噂を今度こそ流させないために、懲らしめといたから」


 ……南無三。俺は気にしてないから大丈夫だぞ。噂を流したお前。元気で生きるんだぞ……。


「俺ら、さっきそれについて話し合ったのにもう問題解決……」


 ハッと、何かを思い出したかのように顔を上げるとさっきよりもニヤついた表情をしている日向を見てだいぶイラッとしたけど、解決に動いてくれたから何も咎められない。


「日向。お前、どこまで知ってる」


「どこだろうね〜。何かあったら逐一報告してくれる可愛いめぐるはいるけどね〜」


 くそ……。こいつ最初っから俺と星羽の関係を知ってた上で、知らないふりして接してたのか。

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