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【三国志異伝】《唯一無二の計》  作者: 賭博士郎C賢厳
第四章:魏.VS.呉蜀同盟.VS.???
22/26

油断と慢心:肆

  西暦222年・10月 (黄初2年)



 (いくさ)…開始から九日目の深夜。


 魏の将兵が、ぐっすり寝静まった頃の各陣にある兵糧貯蔵庫にて。


 勿論、()()にも大量の兵 (700~800) を配して厳重に守っているようだが、()()に敵が大軍率いて攻めてきたら、やっぱり今のままでは(ふせ)ぎきれない。


「んっ、なんだ!?」

「えっ、敵襲っ!?」

「おい、なんだと!?」


「しまった! 敵襲だぁ!」

「おぉっ!?」


 漢中を攻める魏軍本陣の後方にある兵糧貯蔵庫に、蜀の厳顔軍 (7000) が攻める。

 樊城を攻める魏軍本陣の後方にある兵糧貯蔵庫に、呉の朱然軍 (5000) が攻める。

 濡須を攻める魏軍本陣の後方にある兵糧貯蔵庫に、呉の朱桓軍 (6000) が攻める。


 兵糧貯蔵庫に五千以上の軍勢が攻めてきて、大量の武具・兵糧を燃やされたら、もはや長期戦は望めない。






 そこになんと魏軍よりも先駆けて夜襲・火計を仕掛けてきた蜀軍・呉軍。 検討中だった魏軍の兵糧攻めを、もう既に蜀軍・呉軍が先立って仕掛けて来た訳だ。 ()()()に魏の主将たちは、まだ気づいていない。 愚かなる魏軍が、ただ攻めてきただけなのかぁ!?


「火を()せ!」

「早くしろ!」

「おい、何をしている!」


「おい、そんな事より敵襲だぞっ!」

「武器を取れ!」

「ぐあぁっ!?」

「ぎあぁっ!?」


「もうダメだぁぁーーっ!!」


 兵糧や倉庫についた火を()そうとすると、無防備なところを敵兵に襲われ、逆に敵兵の相手をしていると、火の手がどんどん広がっていき、大火事になる。 魏軍の兵糧貯蔵庫は大混乱に(おちい)ってた。


 漢中の兵糧貯蔵庫では、蜀の厳顔軍 (7000) が魏兵 (800) を殺しながらも、兵糧・武具などを燃やして焼き尽くす。

 樊城の兵糧貯蔵庫でも、呉の朱然軍 (5000) が魏兵 (700) を殺しながらも、兵糧・武具などを燃やして焼き尽くす。

 濡須の兵糧貯蔵庫でも、呉の朱桓軍 (6000) が魏兵 (750) を殺しながらも、兵糧・武具などを燃やして焼き尽くす。


「っ!!?」

「ぐえぇっ!?」

「うぐぅっ!?」

「さぁー、どんどん燃やせぇぇーーっ!!」

「何もかも焼き尽くせぇぇーーっ!!」

「はーーーっ、はっはっはっはっはぁぁぁーーーーっ!!」

「……」


 このまま兵糧貯蔵庫はなすすべなく蹂躙されてしまった。 兵糧は焼き尽くされ、守備魏兵も散々たる結果に終わった。 この時点で魏の主将たちは、この事実をまだ知らされていない。 なんともザルな警護だったと言わざるを得ない。 だがしかし、本当の恐怖は()()()()である。


 その後で、それぞれの兵糧貯蔵庫を全滅した蜀の厳顔軍と呉の朱然軍・朱桓軍が、また何処(どこ)かへ姿を()した。






 (いくさ)…開始から十日目の朝。


 今回もまた魏の大軍が、それぞれ漢中・樊城・濡須を攻める。 数で(まさ)る魏の大軍が、また()()()で攻める。 だけど…十日間も攻めているのに、一向に落ちる気配がない。 意外に敵兵がしぶとくて、なかなか士気も下がらないようだ。 それに少しずつだが、味方の被害も増え始めてる。 ここいらで、そろそろ力押しの限界なのかもしれない。 今日も一日頑張って必死に攻めたけど、気がつけば、もう既に夕陽も落ちていた。 ここで魏の全軍が引き揚げの合図を()して、全軍陣へ退却した。


 魏軍が引き揚げるのを見計らって、今回も闇夜に紛れて、漢中からは、黄忠が二万の軍勢を率いて静かに密かに城を出て、また何処(どこ)かへ消えてしまう。 続けて樊城では、凌統が二万の軍勢を率いて静かに密かに城を出て、また何処(どこ)かへ消えてしまう。 さらに濡須からも、周泰が二万の軍勢を率いて静かに密かに防衛線から出て、ここでも何処(どこ)かへ消えてしまう。


 この三軍も、今度は何処(どこ)へ向かって行ったのか? 無論、()()()も魏の将兵は何も知らない。






 (いくさ)…開始から十日目の深夜。


 漢中の魏軍本陣→張郃が諸将を帷幕(いばく)に集めて作戦会議をする。 心なしか、張郃や鄧艾らが得意満面である。


「もはや力押しの限界だ。 明日より兵糧攻めに切り換える。」

「はっ、判りました。」

「これで我が軍の勝利だ」

「はい、我らの勝利です」

「ふむ、ようやく漢中を取り戻せるな。」

「はい、ようやくですな」

「お待ちください。 もうそろそろ夜襲にも警戒した方がよいかと思います。」

「夜襲だと?

 はっはっはっ、城を守るのに精一杯なのに、この上、夜襲などできるものか!」

「その通り、今の蜀軍にそんな余裕などないわ!」

「……」

「明日より城攻めを控える」


 結局、軍師の諸葛誕の進言は採用されなかった。 しかし、仮にこの進言が通ったとしても、もう既に遅い。 手遅れだ! また諸葛誕もこれ以上、何も言わなかった。



 樊城の魏軍本陣→曹仁が諸将を帷幕(いばく)に集めて作戦会議をする。 どういう訳か、曹仁や曹洪らが得意満面だった。


「よし、明日より兵糧攻めに切り換える。」

「おお、これだけ攻めれば、もう十分だろう。」

「その通りだ。 これで呉軍は先程までの籠城で全ての兵糧を使い果たし、飢え苦しむことになる。」

「おう、これで樊城は落ちたも同然だな。」

「でしたら、もうそろそろ夜襲に備える必要がありますけど…?」

「夜襲だと?

 はっはっはっ、今更夜襲など、無意味だ。 来たところで返り討ちにしてやる!」

「左様、もう既に夜襲に対して備えもしておる。 迎え撃つ準備はしっかりしておる。 司馬懿殿よ」

「はっはっはっ、無駄な心配だったな。 司馬懿殿」

「…そうですか…」

「これより明日からは城攻めを控えるぞ!」


 結局は、軍師の司馬懿の意見は採用されなかった。 しかし、仮に本陣が敵襲・夜襲に備え万全だったとしても、はるか後方にある兵糧貯蔵庫が手薄・無防備であれば、ほとんど無意味であることは、たしかである。 それと司馬懿もこれ以上、何も言わなかった。



 濡須の魏軍本陣→張遼が諸将を帷幕(いばく)に集めて作戦会議をする。 なんだか張遼や徐晃らが得意満面なのだ。


「はっはっはっ、よーしよーし、では明日からは兵糧攻めに切り換えるぞ!」

「はっ、奴らは今頃、困り果てておりましょうな。 今までの防衛戦でほとんど兵糧を使い果たしてしまいましたからな。」

「ふむ、その通りだ。 これで敵は我々だけでなく、飢えとも戦わなければならぬ。 敵が増えたことになるな。 はっはっはっ!」

「はっ、これで濡須口も落ちたも同然ですな。 明日からの攻防が楽になります」

「お待ちください! こういう時こそ、夜襲に警戒する必要がありますぞ!」

「夜襲だと?

 はっはっはっ、何を今更…? もう遅いぞ! 今更夜襲を仕掛けたところで、夜襲をするだけの兵糧も残っておらぬわ!」

「はっはっはっ、その通りだ! 徐庶殿、もう今更夜襲など遅いのだよ! 今までやろうと思えばできたはずなのに、防衛に徹底した為に夜襲するだけの力は残っておらぬわ!」

「……」

「よーしよーし、明日からは拠点攻めを控えるのだ!」


 結局は、軍師の徐庶の諌言(かんげん)()()れなかった。 だけど…仮に今から敵襲・夜襲に備えたとしても、確かにもう遅い。 何故なら魏軍の兵糧は焼き払われてしまったからだ。 だから徐庶もこれ以上、何も言わなかった。



 作戦会議が終了すると、諸将がそれぞれの持ち場に戻る。 ちなみに今夜は特に何も起こらなかった。 ()()()嵐の前の静けさであろうか? ただ軍師連中は、この状況に不審感があり、誰も納得していなかった。






 (いくさ)…開始から十一日目の朝。


 この日からは、もう魏軍が漢中・樊城・濡須の三ヶ所を包囲するだけで、総攻撃は(おこな)わないようだ。 本当に兵糧攻めに切り換えたようだ。 全軍陣で待機中。 そのお陰で、蜀の厳顔軍・黄忠軍も呉の朱然軍・凌統軍・朱桓軍・周泰軍も無駄に邪魔なく配置につくことができた。 実は少なくとも樊城と濡須では、主将が不在であり、もし猛攻を仕掛けていたら、落ちていたかもしれないのだ。(実際、軍師しかいない?) だがしかし、()()()()は魏の将兵は知らず、兵糧攻めに戦略を切り換えた為、攻められずに済んだ。 ()()()魏軍の慢心・油断が原因なのか? ()()()()呉蜀の強運が天に味方したからなのか? それに敵襲・夜襲による兵糧貯蔵庫襲撃の報もまだ届いていない。 このまま夜まで誰も動かなかった。






 丁度その頃・同時刻にて。


 漢中の少し離れた某所から、樊城の少し離れた某所から、濡須口の少し離れた某所から、複数の謎の漆黒の人影が、それぞれ同時に戦況(いくさ)を見つめていた。


「ふふふ、もう既に(いくさ)が終わりかけているのか…?」

「ふふふ、今回は呉蜀の勝利なのか…?」

「ふふふ、いずれは魏も呉も蜀も敗北するのだがな…?」


 また出現した()()()()は、一体何者なのかぁ!?


 【注意事項】

※今回は魏軍・魏の将兵の能天気ぶりが堪能できた。

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